こんにちは建設マスターさん


建設マスター 第15回受彰者 電気工

親が経師屋(きょうじや)だったので、
自分も手に職をつけたくて電気工に。
現在は技能五輪の講師として訓練指導も
している
長谷川 則人(54歳)さん 東光電気工事(株)(東京都)

 「電気工とは、建物を建設する際、一番最初に現場に入って、一番最後までいる仕事なんです。まず電気を通さなければ現場で工具も使えませんから。最初はアース板を埋設することから始めて、器具を取り付けた後、すべての電気点検をして完了します。」

 この道36年のベテラン電気工の長谷川氏は、現場では一日中ビルの中を巡回し、作業が滞っていないか、危険な作業をしていないか、作業員一人ひとりの仕事を細かくチェックする。電気技術監督者が作る机上の直線的な図面を、ビルの実情に合わせて立体的に作業員に指導したり、直接施工できる、数少ない技術者でもある。

絶縁抵抗測定をしているところ
  「最初はエレベーターもないので、20階くらいまで歩いて昇り降りしています。夏はクーラーもないし、大変ですよ。私たちが電気を送って初めて使えるようになるんですから(笑)。」

 昔は3.66mもある電線管を、一度に10本(約20kg)持って階段を昇り運んでいたという。重さもさることながら長尺があるため、材料をスムーズに運ぶ技術の習得も電気工には不可欠だった。今は材料も省力化が進み、軽量なプラスチック製の可とう管で一度に50m分を運ぶことが可能になったが、階段で材料を運ぶ実情は変わらない。

 「電気工は、配管や器具取り付けのために壁に穴を開けたり埋めたりするので、コンクリートの仕上げや塗装、左官、大工の仕事もできなければならない多能工です。ですから、修業中は他の職種の技術も身につけていきます。」

 長谷川氏は、これらの作業を36年間も続けてきたのだ。

 「私たちの仕事は、ただ『電気がつけばいい』というものではありません。一生安全に使えるものを作る。そのための大変な作業を完成させた時の快感、それがこの仕事の醍醐味なんですね。」

 そう語る長谷川氏は、アスリートのような持久力と多能な技術力、そして実践的な職人センスを持つ、今では残り少ない熟練工の一人だ。


「私たちがいち早く電気設備を取り付けない限り、現場では作業が進みません。
建物を建てる時は、最初に入って最後までいる。それが電気工の役目なんです」
   
電気の流通路以外への漏電
を防止するため、基準の絶縁
抵抗値を満たしていないとこ
ろでは電気を通してはいけな
い。一つひとつ点検し、安全
確認を徹底させる
   
リニューアル工事では、建物執務者が居ながらにして工事を行うため、 失敗は許されない。熟練工の技が不可欠な仕事が、年々増えている

 
  資料提供:EAST TIMES 2006年9月号(発行所 東日本建設業保証株式会社)
 
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