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事例紹介:行政支援 ~埼玉県県土整備部の取組~実施事業


 埼玉県の地域連携ネットワーク構築においては、埼玉県建設産業団体連合会(以下埼玉建産連)を事業管理者として、多くの建設業団体、教育機関、行政と連携し、人材確保・育成に取り組まれています。連携先の一つである埼玉県(県土整備部)では、地域連携ネットワークに取り組む構成団体を対象に県独自の予算を確保して平成28年度~30年度の間、支援を行う事が決まりました。地域連携ネットワーク構築事業を対象とした県独自の予算による支援は他県に先駆けて初めての事例と思われますので、皆様の参考として支援事業の内容や趣旨等についてお聞きした内容を、以下ご紹介します。

Q1.事業の概要について教えてください

埼玉県:  ネットワーク構成団体が行う研修にかかる経費を補助するもので、補助率は2/3となっています。  対象となる研修の種類は3つあり、1番目が「職場定着支援研修」。これは、新入社員研修あるいは若手社員のフォローアップ研修と呼ばれているものです。2番目が、「資格取得支援研修」で、施工管理技士、技能士などの資格を取得するための研修です。3番目が「シニア指導者育成研修」です。これは、熟練技能は持っているが、必ずしも教えるスキルは持っていない方を対象にした研修です。  この補助事業の期間は3年(平成28年度~平成30年度)ですが、3年後には一定水準のシニア指導者を一定の人数育成し、事業期間終了後に、自前で研修をできるように人材育成体制を整備したいと考えています。  本事業は、埼玉県に人材育成に関する基金があり、その基金を活用して、3年間に限り実施するもの。平成28年度予算総額は63,634千円。

県土づくりの担い手確保・育成への支援

1. 背景・目的:
建設業界では、若年労働者が減少傾向にあるとともに、早期離職率が高くなっている。特に建設躯対工事業(型枠、鉄筋、とび等)については、近年、人手不足が著しく、公共インフラの整備及び維持管理、災害時の応急対応業務などに支障が生じる恐れがある。 このため、地域連携ネットワークを設立し、職場定着や資格取得を支援する。
※地域連携ネットワーク・・・・構成員:建設業団体、教育機関、職業訓練施設、県など
2. 事業の概要:
地域連携ネットワーク構成団体が行う次の研修の経費を補助する(補助率2/3)。 (1) 職場定着支援研修 新入社員や若手職員を対象に、社会人としての基礎スキルを身に付けさせるとともに、建設業の担い手として自身を持たせ、モチベーションを向上させる研修を実施し、職場定着を図る。 (2) 資格取得支援研修 施工管理技士や技能士などの資格を取得するための研修を実施し、技術・技能の向上を図るとともに、賃金アップなどの処遇改善につなげる。 (3) シニア指導者育成研修 熟練技能者であるシニア(ベテラン社員や経営者など)を指導者として育成する研修を実施し、建設業団体による人材育成体制の整備を図る。
3. 予算額 :
63,634千円
建設技術者育成推進費
担当 建設管理課 紛争相談・指導監督担当
【埼玉県県土整備部建設管理課資料】

Q2.予算化に至る背景について教えてください

埼玉県:  埼玉県庁のなかでも特に人手不足が著しい分野として介護の担い手と建設業の担い手が認識されてきていて、一昨年ごろからそういった議論をしています。そういった流れのなかで、平成26、27年度は、国の緊急雇用創出基金を活用した事業(地域人づくり事業)に取り組み、今回の県の単独補助事業につながっていったものです。  従来、人材育成の施策は、産業労働部が行う職業訓練事業というのが基本でしたが、建設業は公共インフラの整備と維持管理、災害時の対応という、そういった分野の担い手として重要なので、産業労働部だけに任せずに、県土整備部としても取り組んでいく必要があると認識し、今回の予算化を行ったものです。

Q3.補助の対象となる団体を地域連携ネットワークの構成団体としている狙いは?

埼玉県:  地域連携ネットワークというものを作って連携して事業を行っていくこと自体で、業界全体が変わっていくという期待をしており、そういった諸々の取組を前提としての補助金という組立てで考えています。 基金:  各団体がばらばらに事業に取り組むのではなく、各団体が一つの場で話し合うという過程も含めて、対象を地域連携ネットワークの構成員としたということでしょうか? 埼玉県:  その通りです。週休二日制の導入や賃金のアップなど労働者の就業環境の改善という話になると、こういった研修事業だけでは実現できないと考えています。元請と下請が対等な立場で意見交換をしていくなかで、解決策が見いだされていくことを期待しています。今後ネットワークに入りたいという団体があればウエルカムなので、そういう意味では補助対象団体を限定していない、ということになります。

Q4.業界団体の反響は?

建産連:  各団体を集めて事前説明会を行った際、例えば、宿泊研修をする場合、県の予算がつけば参加費がほぼ無料で行えるようになる、といった話をさせていただきました。そういう意味で、県の補助は非常にありがたい。地域連携ネットワーク構築支援の業務委託費(年間300万円)だけでは、とても足りません。今年度行ったアンケートでも、各団体には資金的、人的な余力はないという結果が出ており、各団体に負担を求めることはなかなか難しいです。できるだけ人材育成の機会を無償で与える、今まで全く研修を受ける機会がなかった方々に研修や資格取得の機会を与えることは、少しでも明るい展望をもってもらうという意味でありがたいです。

※説明会が開催された時点は、予算を要求している段階での説明。

Q5.指導者の育成について今回焦点を当てたのは?

振興基金:  シニア指導者育成研修についてお聞きしたい。研修をやるにも講師がいないという話をよく聞いており、課題と感じています。現役の職人さんが1週間にわたり講師を務めることは現実的ではないと思われますので、OBの方で、知識を持っているが教え方がわからないというような方を再教育して講師になってもらうというのが、シニア指導者育成研修の取組みだと思いますが、県においてもこういった部分を課題として認識していたのでしょうか? 埼玉県:  県内の業界団体に研修会の実施状況等についてヒアリングした際、研修会の講師を80歳代のOBに依頼するケースもあると聞き、指導者の世代交代も重要な課題と認識しました。 振興基金:  埼玉県の事業では、具体的にはどのようなやり方を考えていますか? 埼玉県:  従来から、職業訓練指導員という厚労省の職業訓練を教えるための資格があり、そういった資格を持つ人を育成するための研修を職業能力開発協会で各県が行っています。ただし、その講習は、かなり高度な内容であり、費用の自己負担もあるので、受講することそのもののハードルが高い。そこで、今回、我々が考えたのは、民間教育機関のインストラクター養成講座という、教えるスキルに特化した講習の利用でした。研修講師としてのテクニック的な部分を身に着けてもらおうとするもので、受講して楽しい研修になるはずだと考えています。 振興基金:  講師育成について、何人ぐらいの育成を計画していますか? 埼玉県:  県としては、年間で60人の指導者を育成したいと考えています。1団体で3人を目途に20団体程度が取組むことで年間60人、3年間で180人を育成したいと考えています。 建産連:  研修会等を実施する際に最も多額となる経費は講師に対する費用であり、当事業で養成する講師を活用することで、今後実施する研修会の費用を低く抑えられるのではないかと考えています。 振興基金:  本日は長時間にわたりご説明いただき、有り難うございました。

埼玉建産連の地域連携ネットワークの取組内容

①入職促進事業
・ホームページへの特設サイトの設置、当連合会季刊誌を活用した広報、その他広報事業 等
・インターンシップ、現場見学会、合同説明会 建設業経理事務士特別研修 等
②職場定着事業
・地域連携ネットワーク加盟団体による合同新入社員研修
・若手職員を対象としたフォローアップ研修
・シニア指導者育成研修
・若手職員を中心とした資格取得支援
③女性活躍推進事業
・女性向けフォローアップ研修、座談会、現場見学会 等
④その他   
・実施事業先進地域の視察、協議会の検討結果にて展開すべきとされた事業 等
取材日:平成28年2月25日
参加者:○埼玉県県土整備部建設管理課 副課長 北川 秀樹氏、同主幹 佐野 正明氏
    ○(一社)埼玉県建設産業団体連合会 常務理事 新井 康夫氏
    ○(一財)建設業振興基金 地域連携ネットワーク支援担当部長 中緒 陽一
    ○(株)建設経営サービス コンサル・調査事業部 係長 中村 智也

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