知っておきたい電子入札・電子納品ABC
第8回 電子納品におけるCADの取扱いについて−CAD製図基準(案)編−
 これまでのCADとはパソコンで図面作成を行い,プリントアウトをした紙図面を利用してきた。
 しかし,電子納品が義務づけられ,電子データとして納品することから,各社がバラバラのCADソフトで図面の様式・図形の表現・レイヤ名等の独自ルールで作成した情報を提出すると,データの再利用として問題が発生する。このようなことから,ある一定の基準で作成したものを納めなくてはならない。その基準が,国土交通省策定の「CAD製図基準(案)」である。
 中小建設業で,主として利用されているのは,JW_CADとAutoCADであるが,DXF形式ではデータ交換で様々な問題があり,「寸法線の形式が変化」「文字の位置のズレ」「フォントの変化」「ハッチングが消える」ことなど様々な点があげられる。また,仮にDXFを採用しようとしても,公共工事において,特定メーカーの利用を優先するようなことはできないことが最大の理由である。
 そこで,CADの中間ファイルとしてSXFが開発され,様々なCADソフトを用いても標準利用できるようになった。そして,様々なソフトベンダーがCADソフトを発売しているが,このSXFについてOCF(オープンCADフォーマット評議会)は円滑なCADデータ交換が可能かどうか独自の検定を行っている。この検定に合格したCADソフトは,OCFのサイト上で公開されているので,購入するユーザは「制限事項」があるかどうか調べる必要がある。逆にいえば,このOCFの検定を受けない,または合格していないCADソフトは,完全に対応しているのか,または問題点はどこか,情報をオープンにしていないため,電子納品に必要な「SXF(p21)」及び「CAD製図基準(案)」を満たしているか疑問点が多い。
 OCFサイト上の「認証ソフトウェア一覧」を確認し,「対応表(制限等)」をよくチェックし,導入する企業の業種等によって選別しなくてはならない。しかし,「制限事項なし」というCADソフトも複数あることから,価格を踏まえ検討しなければならない。
 OCFではSXFという規格の最低限の基準を検定しており,検定に合格していることが必須事項だと思われる。最近では,検定に合格してもいないCADソフト(ベンダー)がユーザに対し「SXFに対応している」という売り込みを行った結果,購入している企業もあり最も危惧している。
◎CAD
 Computer Aided Designの略。コンピュータを使った設計,製図,またはそのシステム。

◎CAD製図基準(案)

 図面様式,図形の表現,データの格納方式,レイヤ名が定められている。

◎DXF
 Data eXchange Formatの略。データ交換用のデータ表現システム。



◎SXF

 Scadec data eXchange Formatの略。CADデータ交換標準。現在は2次元CADシステムを対象としたレベル1と2に対する仕様として規定されている。
 OCFの問題点をここにあげる。1つは,あまりにも「制限事項」だらけのCADに対し,合格を与える点である。サイト上で公表しているとはいえ,高価なソフトの割にはあまりにも不親切ではないか。2つめは,なぜ「sfc」と「p21」の検定をセットで行うことをしないのか? sfcからp21に変換した際に何か問題があるのではないか。 ◎sfc
 国際規格STEPの規約を準用して,より効果的に処理できるように表現を工夫した交換データのファイル。

◎p21
 Part21。国際規格STEPの正規規約に準拠して表現された交換データのファイル。
 
CAD製図基準(案)について

 SXFフォーマットには2つの種類があり,p21とsfcの2つの拡張子が存在する。(図表1
図表1
(財)日本建設情報総合センターが事務局として実施している建設情報標準化委員会(CADデータ交換標準小委員会)では,国際標準(STEP/AP202:ISO10303)に準拠した,CADデータ交換フォーマットを開発した。(現在も継続して開発中)
拡張子  主な特徴
p21 国際基準に対応した正式な電子納品用フォーマット。2002年9月26日よりOCFでは検定作業が開始され,近々サイト上で公開されると思われる。しかし,完全対応しているCADはまだ少数である。
sfc p21の簡易形式として開発され,ファイルサイズも小さいことから,国内CADデータ用として使用できる。しかし,データ交換上において問題もないわけでない。

 電子納品における図面の作成方法は,先にも述べたとおり「図面の描き方」は「CAD製図基準(案)」にのっとって作成。図面のファイルフォーマットはSXF(p21)形式である。
 現状では,設計業務・土木工事において適用されており,規定工種は図表2のとおり。
図表2
道路 1.道路
2.平面交差点
3.立体交差点
4.共同溝
5.電線共同溝
河川 6.樋門・樋管
7.築堤・護岸
橋梁 8.橋梁
トンネル 9.山岳トンネル
10.シールドトンネル
海岸 11.離岸堤,人工リーフ等
砂防構造物 12.砂防ダムおよび床固工
ダム 13.重力式コンクリートダム
下水道 14.管路

 以下順次CAD製図基準(案)(国土交通省より)の概要を掲載する。
 また,主な規定内容は次のとおりとなっている。
1.図面のサイズについて図表3
 図面の大きさについては,A列サイズ(第1類)A1を標準としており,これによりがたい場合はA0またはA2〜A4となっている。
図表3
A列サイズ(第1類) 特別延長サイズ(第2類) 特別延長サイズ(第3類)
呼び方 寸法a×b 呼び方 寸法a×b 呼び方 寸法a×b
        A0×2
A0×3※
1189×1682
1189×2523
A0 841×1189     A1×3
A1×4※
841×1783
841×2378
A1 594×841     A2×3
A2×4
A2×5
594×1261
594×1682
594×2102
A2 420×594 A3×3
A3×4
420×891
420×1189
A3×5
A3×6
A3×7
420×1486
420×1783
420×2080
A3 297×420 A4×3
A4×4
297×630
297×841
A4×5
A4×6
A4×7
A4×8
A4×9
297×1051
297×1261
297×1471
297×1682
297×1892
A4 210×297        
注)※…この大きさは,取り扱い上の不都合があるので,なるべく使用しない。

2.図面の正位図表4
 図面はその長辺を横方向においた位置を正位とする。
 ただし,高さの大きい構造物等を示す場合は正位を変えることができる。
図表4
長辺を横方向にした配置
長辺を横方向にした配置
長辺を縦方向にした配置
長辺を縦方向にした配置

3.輪郭と余白図表5
 図面には輪郭を設ける。輪郭線は実線とし,線の太さはA0,A1では1.4mm,その他は10mm以上とする。
 図面を綴る場合は,綴る側に20mm以上のとじ代を設ける。
図表5
図表5 A0・A1
a=20mm以上 (綴じない場合)
  a=40mm以上 (綴じる場合)
  b=20mm以上  

その他
a=10mm以上 (綴じない場合)
  a=30mm以上 (綴じる場合)
  b=10mm以上  

4.表題欄について
 表題欄は,輪郭線の図面の右下隅輪郭線に接して記載。ただし,平面図・縦断面図などで図形と重なる場合は,右上隅に記載してもよい。表題欄の寸法及び様式は図表6を標準とする。
 1枚の図面に尺度の異なる構造物が複数存在する場合は,代表的な尺度を表題欄に記入する。
図表6
図表6
(単位:mm)

5.尺度について
 土木製図基準では,1:Aにおいて,Aは1×10n,2×10n,5×10nをなるべく優先し,1.5×10n,2.5×10n,3×10n,4×10n,6×10nを次善としている。
6.線の種類について
 線の種類は原則として実線,破線,一点鎖線,二点鎖線の4種類であり,線種が不足する場合は,点線を使用するなど弾力的に運用する。
7.線の太さについて
 線は太さの比率によって細線,太線,極太線の3種類とし,紙に出力する場合の太さの比率は細線:太線:極太線=1:2:4とする。
 線の太さは次の中から選ぶ。0.13,0.18,0.25,0.35,0.5,0.7,1,1.4,2mm。
8.文字について
 文字大きさの呼びは,2.5,3.5,5,7,10,14,20mmを標準とする。機種特有の文字は使用しないものとする。
 縦書きをする場合は文字列として入力する。縦書きの場合,縦書きの True Type Font を使用すべき。
 ただし,文字フォントには注意が必要であり,プロポーショナルフォントでは文字単位で文字幅が異なるので,SXFで保存した場合,期待どおりの文字位置にならない可能性が高い。
 [例]
 MS Pゴシック…… 「CALS
  (プロポーショナルフォント)
 MSゴシック………「CALS
9.レイヤ管理(図表7)
レイヤ名称は「 □□□ □□□□
(1) (2) (3)
(1) ライフサイクル(半角英1文字)
測量(S),設計(D),施工(C),維持管理(M)
(2) 項目名(半角英4文字以下)
図枠(TTL),背景(BDG),主構造物(STR)など
(3) 作図要素(半角英4文字以下)
寸法線(DIM),文字列(TXT)など
図表7
図表7

 主な説明は以上であるが,詳細については278ページに及ぶCAD製図基準(案)をご覧頂きたい(14年7月現在)。
 国土交通省国土技術政策総合研究所のWEBサイトよりダウンロードが可能である。
●国土交通省国土技術政策総合研究所
 http://www.nilim.go.jp/
最後に
 電子納品に必要なソフトは,CAD・写真管理ソフト・工事完成図書(XML)ソフトの3つがあげられる。上記のCAD製図基準(案)においても,簡易的に作成できるソフトも存在している。しかし,ソフトを購入し,電子納品を作成することがCALSに対応することではない。ただし,発注者はデータの再利用等様々な価値がうまれる。
 建設業における問題点とは,物をあまり読まない傾向がある。ネット社会にも関わらず,国土交通省から発表された様々な電子納品要領(案)など,WEBサイト上で掲載されている電子納品要領等の存在すら知らない企業も多数存在していることもその1つである。
 電子納品に対応するということは,社内のペーパーレス化を行うことが必要であり,そのインフラの整備を行わなければ,電子納品に対応するだけの作業・費用負担をするだけで何の恩恵もない。ある一方では,経費をかけ電子納品をアウトソーシングすれば良い,という本末転倒なケースもある。
 以上のようなことから,昨今のトレンドであるISOを取得している企業は,ISOの本来のねらいであるISOマネジメントシステムを十分に活用し,IT化とISO両方の構築を目指し,社内の業務マネジメントシステムを構築することが「電子納品」の恩恵を授かる企業となる。

◎XML
 eXtensible Markup Languageの略。拡張マーク付け言語。インターネット上で,表示のみでなく,データが利用者定義の意味を持って交換できるよう考案された言語。


◎ISO
 International Organization for Standardizationの略。
 国際標準化機構。電気・電子以外の分野の国際規格を策定する国際組織。国際規格のことをいう場合もある。