知っておきたい電子入札・電子納品ABC
第9回 間もなく本格スタート!「電子入札」の現状と課題
 今年度に入り,東京都江戸川区や北海道岩見沢市などの地方自治体が電子入札の導入に踏み切り,注目を集めている。まだ“暗中模索”の感もある「電子入札」だが,国土交通省の“試験期間”もあと残り3ヶ月を切った。今年4月から「電子入札」という新しいシステムは否応なく本格的にスタートする。後戻りは出来ないシステムなのである。とはいうものの,未だ不安視したり,理解しにくいというユーザー=業者の声を聞く。そこで,これまでの国土交通省の取り組みと,今後の展望を探った。  
国交省の手応えは“良好”

 昨年度,国土交通省は約100件の直轄工事を実施し、今年度は2000件に拡大している。国土交通省大臣官房技術調査課は次のように振り返る。
「昨年度100件のうち,約8割の業者が電子入札に応じました。今年度もご承知の通り,大幅に電子入札の量を増やして実施しています。手応えとしては概ね良好だと感じています」
 とは言うものの,現時点では「電子」と従来の「紙」との併用による入札方式で,かえって発注者側の事務量は膨大になっている。プラス面とマイナス面,不透明な部分もあるであろうが,その点も踏まえ,国土交通省はこう続ける。
「確かに,現在は試行期間,移行期間なので,電子が必ずしも定着しているわけではありません。また,紙が介在しているという点で,発注側としても,かなり手間がかかっていることは事実です。しかし,だからいついつまでに完全電子化というプランは,現時点では言えません。ゆくゆくはみなさんにご協力を願って電子でやっていくということです」
「今はしていないのですが,この電子入札システム自体が他の会計や契約のシステムと連動することによって,二重記入の省略とかの効果が図られてくると思います。そのために今,動いている最中ですので,現時点では必ずしも効率化に繋がっているとは言い切れません。この端境期の中で,改良していかなければならないこともあるでしょう。地方の担当者によると,良くなっているという人もいれば,若干手間がかかると苦汁の表情を浮かべる人もいる。それなので,一概にいいとは,まだ言い切れない」
 と,慎重に言葉を選びながら電子化の道を語る。もう戻る道はないのである。また,電子入札は,電子化の入り口であり,その“ハードル”を越えた先に明るい未来はあることを覗かせる。いわずもがなではあるが,電子入札はインターネットを利用して入札をするシステム。既にこの欄にて機器の説明や細かな流れは説明してきているので,ここでは省く。要は,その電子入札が移動コストの削減や紙資源の無駄を省き,人・時間・金の省力化を進める第一歩なのである。
 さらに,電子入札システムは,来年度から「コアシステム」という新しいスタイルでスタートとなる。これは,各自治体で電子入札が増えればその分,異なるシステムで混乱する恐れが生じることから,核心部分の統一を図るため開発を続けてきたものだ。基本部分の互換性,共通認識を持たせることで,発注者側のシステム導入費用の軽減,業者側の利便性を向上させる狙いがあったわけである。このことで,自治体の独自性が確保できるとしながらも,別地域の業者の参入もやりやすくなる,いわば電子入札の理念が具現化したものとなったわけである。
民間の智恵に期待
 その反面,現在の国土交通省の電子入札は,紙との併用を認めている点も見逃せない。A級クラスの業者でさえ,未だに対応しきれない業者もいるということの証左なのである。ましてや,中小業者はより対応するのに時間がかかると言える。その理由は2つある。
 第一にコスト面の理由が大きい。公共事業が年々縮小傾向の“長期厳冬期”の建設業界にあって,各社ともリストラクチャリングは元より,徹底的な経費の見直し,業務・規模の縮小など,内向き,守りの経営を強いられている。地方のゼネコン,下請け,孫請け業者に至っては廃業を余儀なくされるケースも今や珍しいことではない。そのような中,新たに「電子入札」「電子納品」のために十数万円のハードウェア(パソコン)を購入すること自体,悲鳴をあげたくなるというのも無理からぬことでもある。もっと言えば,パソコンも置いていない事業所には大変な出費になることは間違いない。
 さらにハードウェア環境を整えたものの,ソフトを自由自在に使えるまでにやはり時間は要するものである。暗証番号など,1ヵ所入力違いがあるだけでこの手のシステムは当然ながら稼動しない。セキュリティがしっかりしている分,ユーザーの理解,技術がより必要なのだ。要するに省力化を進めるために,現段階では皮肉にも導入にあたって人と金と時間が必要なのである。
 そうした中小,零細に対して国土交通省は,辛抱強く理解を求めていく方針だ。
「中小・零細の方々で,これ以上余計な投資は不可能だという声があることも理解しています。しかし,電子入札の機種を買ってもらうための特別な対応策は考えていません。ただ,粘り強くインフォメーションしていく中で,私たちは,建設コストの低減,全体のコストは低減するという施策をご理解していただくしかないのです」
「行政の立場として環境は整えていき,後は民間の智恵を借りてやっていくほかありません。来年度から動き出す電子入札システムに関しては,今は1社だけの認証局が複数社に移行します。そのことによって,多様なサービスが生まれ,かかる経費もさまざまになる。そのことで競争されて,導入されやすくなると考えています」
 その認証局は,現在,帝国データバンクのみだが,昨年1月,認証局の公募を行ったところ,8社が申込みを行ってきた。国土交通省によると「来年度の当初に何社がスタートできるのか,はっきりしていない」という。
 そこで,続いては現在の認証局である帝国データバンクと,新年度から参入予定の日本電子認証の現状と今後を探ってみた。
認証局の動き

 
帝国データバンク
 帝国データバンクは,当然ながらこれまで電子入札のシステムを唯一経験してきた認証局だ。ICカードは約8000枚を発行,企業数でいうと約5000社が利用してきている。この数は予想を上回る数字で,今後の展開にも自信を深めている。
 ICカードを使う,証明書を使う,パソコンで入札を行う――全てが初めてづくしのことで,サポートも予想がつかない事態も多かったようだ。
「来年度から導入されるコアシステムもそうですが,現在の国交省方式でも,個人認証をあらかじめ行います。その際,法人の登録なのに,代表者個人の住民票なども必要なので,その必要性に疑問を持つ方も多かった」
 暗号化や署名の説明,それにかかる法律,電子署名法,テクニカルな部分の説明など,単なる新製品の説明では済まされない部分が多分にあったという。
 その蓄積こそが,帝国データバンクの強みだ。現時点で約5000社の既存顧客へのさらなるサポート,そして顧客の声,要望に応じた的確なサービスを“売り”にしていく。例えば,月1回だった発行サイクルを2週間に1回へと短縮したり,ICカードのリカバリーについて工夫を凝らしている。入力を何度も間違えるとカード自体が失効となり,使えなくなるのだが,間違いの許容回数を3回から5回に増やしたり,「ロック解除PIN」という独自のサービスで,無効カードの復活システムを作ったりしてきた。さらに,ウェブ申請を可能にすることで,諸手続きのスムーズ化も図れるようになった。
 さらに先月,帝国データバンクは,コンストラクションECドットコムと提携し,電子契約のサービスも利用出来ると発表した。つまり,業態の電子化を一歩進めたサービスの提供を可能にしたのである。このことによって,印紙税の負担が軽減されることになったというのである。今後,このような先を見据えたサービスを続々と企画中だという。
日本電子認証
 4月からのサービス開始を前に,準備に余念がないのが日本電子認証だ。3保証会社をはじめ,大手ゼネコン,NEC,金融機関が出資して設立された同社は,「業界が作った業界のための業界による認証局」を自負している。
「単なる価格競争に走るのではなく,長年業界の中で保証会社として付き合ってきた信頼関係が私たちにはあります。そういった部分をしっかり見てほしい」
 と担当者は語る。さらに,コアシステムへの切り替えで,先行する他社にも動じない。
「新システムの中では,各社スタートラインは同じとの考えから,焦らず,丁寧な活動を通してアピールすることが大事だとの認識を持っている。そしてまた,自社製品の性能の高さを確認してから検討してほしい」
とも語る。
「JACICのHPに掲載されている性能結果の一覧で,当社が1位になっている。製品の確かさでも群を抜いていることが明らかになっているのです」
 日本電子認証はこれまで,普及促進のための説明会など,地道な努力を続けてきて,その成果,手応えもしっかり感じ取っている。また,ヘルプデスクの充実も日本電子認証にとっては武器の一つだという。
「日々,電話で長時間対応していますが,単なる技術サポートではなく,問い合わせの時点で,電子入札のコンセプト,これまでの経緯なども含めご理解いただいています。そういった中で,顧客ニーズを探り出し,発注者側の考えも理解した上で,普及・促進に努めていきたいと考えています」
 昨年発行した『Q&Aわかりやすい電子入札』という本,および『電子入札体験CD−ROM』ももう一つの“武器”に,4月の本格スタートを待ち望んでいる。

コアシステム対応認証局一覧((財)日本建設情報総合センターHPより)
エヌ・ティ・ティ・メディアサプライ株式会社
URL http://www.e-probatio.com/
E-mail ninshou@e-probatio.com
TEL 06-6348-1015
FAX 06-6348-1016
国際認証センター株式会社
URL サービス内容決定後開設の予定
E-mail hiroyuki@cjc.co.jp
TEL 03-3266-8023
FAX 03-3266-8022
株式会社サイバーウェイブジャパン
URL http://www.cwj.jp/
E-mail info@cwj.jp
TEL 0120-20-4789(CALS事業部コールセンタ)(開設準備中)
FAX 059-236-7012
ジャパンネット株式会社
URL http://www.japannet.jp/
E-mail japannet@tyo.mind.co.jp
TEL 03-3265-9256
FAX 03-5276-6426
株式会社帝国データバンク
URL http://www.tdb.co.jp/
E-mail certinfo@mail.tdb.co.jp
TEL 03-5775-3134
FAX 03-5775-3128
東北インフォメーション・システムズ株式会社
URL https://www.toinx.net/ebs/info.html
(ToiNX電子入札対応認証サービス)
http://www.toinx.co.jp/(ToiNX電子認証全般)
E-mail toinx.cert@toinx.co.jp
TEL 022-799-5566
FAX 022-799-5565
日本商工会議所
URL http://www.jcci.or.jp/
(特定認証業務取得にあたり,認証用HP開設予定)
E-mail joho@jcci.or.jp
(特定認証業務取得にあたり,認証用メールアドレス開設予定)
TEL 03-3283-7865
FAX 03-3211-4859
日本電子認証株式会社
URL http://www.ninsho.co.jp/(会社HP)
http://www.ninsho.co.jp/aosign/index.html
(コアシステム対応の電子証明書発行HP)
E-mail toiawase@ninsho.co.jp
TEL 0120-714-240
FAX 03-5148-5695