こんにちは建設マスターさん


 
建設マスター 第1回受彰者 建設機械運転工

新妻 力(60歳)さん 東邦重機開発(株) (東京都)

 建設現場では、さまざまな機械が稼動する。建設資材などを揚重運搬する重機の運転が新妻さんの仕事だ。この仕事に入ったのは昭和43年。26歳のときである。

  「それまでタイル屋にいたので、現場のことはある程度知っていました。いつしか重機に興味をもち、やってみたいと思っていました」。転身のきっかけだった。 現在、主に運転しているのは、ラフタークレーンという移動式の重機だ。無限軌道がついたクローラークレーンと違って、機動力に富むのが特徴。しかも公道を走れるので、クレーンだけでなく大型特殊免許も必要になる。

 自在に操れるようになり、「やっていける自信がついたのは、10年くらい経ってからでした」。その自信を「肩が凝らなくなったのは」という表現で、にこやかに話すところに人柄が覗く。それまではかなり「肩が凝った」らしい。

穏やかな表情の中に自信がのぞく  
 自信がつくにつれて「回りの人たちの安全に気配りする」心のゆとりが生まれてきた。これまで30数年、無事故・無災害を続けている。その秘訣は「玉掛けをはじめ相手の職人さんたちのペースに合わせて、正確・安全を最優先すること、そして時には自分を抑えること」にあるようだ。

 この信念は、後進の指導・育成でも貫いてきた。「今の若い世代は、機械のことは結構知っていますから、技術面以上に『回りをよく注意するように』」と徹底する。

 この30数年、ものすごい進歩を遂げた建設機械を見てきた証人の 一人。それは「昔はカン(勘)ピューターでしたが、今はコンピューターの時代ですから」というほど高度なものになってきた。それでも、強風下で資材を動揺させずに、ピンポイントで所定の場所に置くテクニックなど、高度な技能の裏打ちがあって初めて成り立つ世界だ。

  東京・汐留の現場。数年後には超高層ビル街に
  建設マスターの称号を機に、「やってはいけないことは、絶対にやるな」と初心に帰って忙しい日々を送る。

つねに回りへの気配りを忘れないことが無事故・無災害を支えてきた コンピューター化が進んでも高度な運転技術は要求される
     
  資料提供:EAST TIMES 2001年1月号(発行所 東日本建設業保証株式会社)
 
<< 目次へ