こんにちは建設マスターさん


 
建設マスター第3回受彰者 とび工

武田 敏昭(53歳)さん 金子架設工業(株)(東京都)

 現場ができると仮囲いをし、工事が始まれば作業足場となる仮設材を組む。さらに工事用エレベーターやタワークレーンを設置したりと縦横に活躍する。とびは、工事を安全で効率よく進めるための先導的な役割を担う仕事で、建設工事の中心となる職種の一つだ。その領域は「山から港まで」と言えよう。山にはトンネルがあり、港には護岸、しかも高い所から低い所までさまざまな活躍の場があるという意味だ。

 この道35年以上の経験をもつ。ただし現在は、実際にとびの仕事をするのではなく、「工事の事前計画を担当し、複数の現場を管理チェックする」立場で管理職長。事前の計画が実際に現場でどのように機能しているか、現場の職長さんらを見守り指揮する。

とび一筋に30年余。子供3人も同じ仕事に  
 「作業足場を例にとると、これをどうやって組み、どんな方法で解体するか計画します」と言う。安全で予算内におさめるには、事前に入念で緻密な計画が要求される。実際の作業の成否は、この計画にあるといっていいほど重要な役割だ。イメージが違ったり、職人さんの作業にもどかしさを感じると自ら作業することもある。「その場合はたいてい自分の計画が悪いから」と笑う。

 四国の宮大工の家系に生まれ、幼いころから現場には慣れ親しんできたが、「祖父の技をみてとても追い抜けない」と、宮大工はあきらめたと言う。そんな時、霞ヶ関ビルの建設計画があって、「それでは、一番高い大きな建物をつくろう」と、この世界に入った。

  職人さんへの指示はテキパキとしている
 若い職人さんの育成には熱心で、武田さんのもとから多くの若者が巣立っていった。そんな職人さんたちが、「『からだは他の現場でも、心は親父の所にある』なんてお世辞でもいってくれるのは嬉しい」と照れながら喜ぶ。

 自らを「鳶らしくない鳶」と言うように、とび以外の仕事も多い。元請の職人さんたちからは、「親父、相談に乗ってよ」と頼りにされ、現場では他の職人さんにもテキパキと声をかける。存在感抜群の職人さんだ。

担当現場の東京・銀座の大型ビル 担当現場ビルの外観

 

資料提供:EAST TIMES 2002年1月号(発行所 東日本建設業保証株式会社)

 
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