こんにちは建設マスターさん


建設マスター 第1回受彰者 板金工

森山 勝郎(64歳)さん (資)章栄板金工業所(愛知県)

 板金の仕事は、大きく建築板金とダクト板金に分かれる。森山さんの仕事は、建物の空調設備などに使うダクトの板金が多い。

 板金というと、加工作業が思い浮かぶが、森山さんは「もちろん加工は大切ですが、むしろその前の段階が重要です」と強調する。設備会社から渡される施工図をみて、どんなダクトが計画されているかを読み込み、加工のための図面を描く工程だ。これが正確でないと、工事段階になって寸法が合わず、やり直しという悲劇が待っている。

 図面を読み込む秘訣は「立体的に把握すること」だ。平面的に見ていてはとてもつとまらない。
 「かつては墨で展開図を描いて人が鋏で切断していた」板金の仕事は今、機械化、ロボット化の時代へと大きく進歩した。データを入力すれば、あとは機械が切断してくれる。切断の様子をみていると職人さんというよりオペレーターという印象さえあるほどだ。

訓練校での指導もあって多忙な毎日だ  
 だが、どんなに機械化、ロボット化が進んでも、立体的な形にするのは、今でも職人の技がものをいう世界だ。板材を曲げたり貼ったり組み立てたりという作業には高度な技能が求められ、腕の見せ所だ。「現場責任者クラスになるには10年はかかる」と言う。

 森山さんがこの仕事を始めて50年近い。現在は訓練校で教えたり、技能検定の試験委員を務めるなど指導的役割が多い。それでも「複雑な形状のものに出会うと燃えます」と職人さんの本能がうずく。高度な技は、技能競技大会に出展・展示されたことでも実証済みだ。

 
競技会で展示された
芸術的なダクトの作品
 「これまでの経験と技を伝えられれば」と後進の指導にも力を入れる。森山さんの指導の基本は、自分で線を引いて切ること。機械化、ロボット化が進んだとはいっても、「実際に線を引いて自分で切断してみないことには分からない。機械で加工しても技術・技能は身につかない」という信念からだ。

 「幸いにダクト板金は建築板金ほど後継者難ではありません」と、環境にも恵まれ、教え甲斐もあると言う。


 
  機械化は進んでも最後は
人の技が命
  加工の前に重要な図面作成と
チェックをする
       

 

資料提供:EAST TIMES 2002年7月号(発行所 東日本建設業保証株式会社)

 
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