こんにちは建設マスターさん


建設マスター 第7回受彰者 鋼構造物工

沼田 信朗(55歳)さん NKK津製作所(三重県)

 橋梁をはじめ大型の構造物は鉄製が多い。橋梁トラスや港湾構造物のケーソンなど、鋼による構造物を製作するのが沼田さんの仕事だ。

 鉄の板を曲げたり溶接したり、さらには孔をあけるなど加工し、構造体として組み立てていく。機械化・ロボット化が進んいるが、人の技に頼る部分はまだまだ多い仕事だ。

 特に、「鉄は生き物」といわれるように、極めて慎重な扱いが要求される。「例えば、鉄は熱を加えると変形する性質がありますから、溶接するとどうしても歪みがでてきます。ある方向から熱が加わって変形したとすると、その反対方向から熱を加えて元に戻す。そんな微妙な調整が必要です」と、沼田さんは話す。


仕事は楽しんで喜びを  
 橋梁の部材をはじめ扱うものは大きいが、仕事の内容はコンマ何ミリの精度を競うほど緻密で繊細な世界だ。機械には真似のできない、人間ならではの技がある。

 この世界に入って30年余。本州四国架橋など巨大構造物の製作を手がけてきた。かつてはほとんどが手作業だったが、ロボットをはじめ技術や設備はどんどん進歩し、今日では大きな構造物の製作も少人数でできるようになった。現場環境の変化は著しい。

 しかし、「どんなに機械技術が進んでも、人の技に頼る部分は残ります。それほど人間の力は大きいし、無限の力があります」と、沼田さんは強調する。

 
製品は手で触って入念にチェック
  人材育成の大切さを痛感している。技を、いかに後進に伝えていくか試行錯誤しながら、若い人たちの成長を見守っている。

  ものづくりの仕事は「楽しい」より「喜びを」が持論だ。
 「その喜びを見い出せば、満足感や充足感を得ることができます。そして、仕事を成し遂げた時の喜びを味わってほしい」と、そう若者たちに訴える。

 現在は現場作業よりコストダウンの企画といった仕事も多くなったが、常に現場を考え、技能の継承に努力する職人さんだ。


 
  サイズは大きくても精度は
コンマ何ミリの世界
  機械化が進んでも肝心の作業は
職人さんの技が頼り
       

 

資料提供:EAST TIMES 2002年9月号(発行所 東日本建設業保証株式会社)

 
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