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金澤 久雄(55歳)さん (有)金澤タイル工業所(東京都)
タイルの歴史は古く、いまから約4,650年前、エジプトのピラミッドに使われたのが世界最古といわれる。
タイルを貼るのがタイル工の仕事だが、そう単純ではない。「ビルなどを手がける野丁場は貼るだけですが、われわれ町場は、さまざまな専門技能を要求されます」と金澤さんは話す。
例えば、タイルを貼る前には、モルタルなどを塗る下地処理が必要だ。「一般的に貼る時間の3倍くらいの手間」がかかり、タイル貼りの精度を左右する重要な仕事である。この下地処理は、左官の仕事だが、これもこなす。また、石を貼る、ブロックを積む、コーキング処理をするなど多彩な技が要求される。
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仕事は厳しく、やさしさも |
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タイル工は、いわば万能な職人さんである。左官などいくつもの専門職種が交錯する仕事だ。
下地処理が終わったら接着剤を塗り、いよいよメーンのタイル貼りである。タイルの目地を縦横ともピシっと等間隔で一直線にする作業は、まさに職人芸だ。特に、重力が影響する横目地を一定の間隔にするのは高度な技で、並大抵ではない。ここで登場するのが、たたき板と呼ばれる道具。これでタイルをたたいて微調整する。
金澤さんがこの仕事を始めたのは37年前。修行した親方はこの世界では有名人で「本当に厳しく指導されました」と話す。
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たたき板でのタイル微調整は職人芸だ
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印象深かった仕事は「清澄庭園(東京都江東区)のトイレと俳優の津川雅彦邸の浴室ですね。ちょっとやっかいでした」。やっかいというのは、難しい仕事であると同時にやりがいがあっておもしろい仕事、そしてできばえに自信がある仕事という意味だ。
かつて親方に学んだ指導法はいま、跡を継ぐ息子さんら若い職人さん達へと継承されつつある。さらに、都立足立技術専門校では、若者を指導する立場となった。息子さんの親方(父親)評は「仕事は厳しいが、その中に優しさがある人」。
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タイルの仕事は下地処理が命 |
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貼り終えたタイルは見事に縦横一直線 |
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