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山村 純裕(56歳)さん 菱電エレベータ施設(株) (東京都)
山村さんは、機械器具設置工として、40年近くの経験をもつベテランだ。
エレベーターは、かごが上下する昇降路と、かごをロープで吊るし昇降させるための機械室からなる。建物躯体ができあがると山村さんたちの出番で、かごが昇降する道案内となるガイドレール、かごのバランスを取る釣合い重りのためのレールをかごの裏側に取り付ける作業などが始まる。
最も神経を使うのが、最初に行うピアノ線の作業だ。下に重りを付けたピアノ線を最上階から下まで降ろす。取付け作業の基準線で、建物が各階で左右、奥行きで傾いていないか確かめる。“墨出し”と呼ばれるたいへん重要な作業だ。
これがきっちりしていないと、いくら性能がよくても、静かで安全なエレベーターは実現しない。ビルの超高層化でますますスピードアップするエレベーターにとって、「精度が命」というほど、墨出しとその後のレールの取付け精度は性能や安全性に直結する重要な仕事になる。ピアノ線を基準に、目視やゲージで長さ5mのレールの曲がりを修正しながら、本設用のかごを利用し下から上に取り付けていく。
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超高層ビルにこの人あり! |
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「ミリ単位の微妙な仕事です」と、山村さんは話す。繊細で緻密な技の冴えをもつ山村さんは、これまで数多くのエレベーター設置を手がけてきた。
強く印象に残っている仕事は、横浜市にあるランドマークタワーの工事。分速750mと世界最速を誇るエレベーターを設置した。周囲から、超高層ビルにこの人あり、と評価される山村さんにとっても会心の仕事だった。
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ガイドレールの精度はミリ単位だ |
山村さん達の仕事は、エレベーターが持つ性能を最大限に発揮させる「影のプロフェッショナル」であり山村さんは、関連する仕事もこなす多能工でもある。
「父親の仕事を見てこの仕事に入る若者が多いのもこの世界の特徴です」と、山村さんは言う。そして、「人によって教え方はいろいろだが、ポイントを抑えろ」が指導の仕方だ。
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普段は見られない裏側の世界 |
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本設用のかごを使うので安全性は高い |
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