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川口 幸一(53歳)さん 寺崎ガス圧接(株)(埼玉県)
溶接のなかでも、「ガス圧接」と呼ばれる接合法のエキスパート。鉄筋をバーナーで炙りながら、グッと圧力をかけて接合する技術だ。比較的新しい技術で、専門の技能者の数もそれほど多くはない。
ガス圧接の品質・施工管理の生命は、温度と圧力だ。接合する鉄筋の太さなどによって、適正な温度と圧力が要求される。鉄筋の太さによって、使うバーナーも圧力も異なってくる微妙な仕事だ。
温度と圧力の適正な関係は一覧表にしてあり、機械化・自動化も進んできた。しかし限られた時間内に高品質の接合をするには、どうしても経験に裏打ちされた勘が要求される世界でもある。
火の色で温度が分かるようになれば、本物のプロだ。
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40年近い経験でも毎日が勉強 |
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圧接前に鉄筋の接合面にサンダーをかけて磨くこと、鉄筋同士を隙間がないようにくっつけて接合することも重要な作業だ。十分なサンダー作業を怠ると、表面は接合されたように見えても、接合強度が不足し欠陥商品になるし、隙間があいていると、空気が入るので、やはり不良品の要因になるそうだ。
川口さんがこの仕事に入ったのは昭和38年。仕事に自信がついたのは、5、6年経ってからだった。毎日が勉強の場であり、常に向上心を忘れない。かつては、怒られながら仕事を覚えた。でも、今の若い人たちには、きちんと手順に沿った技の伝承を心がける。
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経験に裏打ちされた圧接技術は名人芸だ |
技術や道具がいくら進歩しても、不変なのは、火を扱う仕事という点だ。従って、火元の安全や事故防止には細心の注意を払う。つらい思い出だが、20年ほど前に意識不明になる事故にあった。その教訓から、自分を戒めるだけでなく、後進も厳しく指導する。
圧接の仕事は、「建物が完成すると外からは見えなくなりますが、骨組みを支える大切な仕事だ」と話す。だからこそ、確かな施工が要求される。近年、圧接の仕事のシェアがやや低くなっている状況に不安を覚えるが、言葉少なに「誇りをもって毎日の仕事に全力を尽くします」と誓う。
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サンダーで断面をきれいに磨く |
高品質の圧接には実験も欠かせない |
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