こんにちは建設マスターさん


建設マスター 第12回受彰者 軌道工

吉村 栄治(41歳)さん (株)濃建 (岐阜県)

 東海道新幹線上下線の最終列車が通過した深夜11時半過ぎ、軌道(レール)の保線作業を行う軌道工が一斉に軌道内に入ってくる。現場は、岐阜羽島駅から京都寄りの大垣市内。軌道の両脇に設けられた臨時の灯火の中をレール運搬車がゆっくりと進んできて所定の位置に止まり、やがて逆走しながら運搬車の両脇から長さ200mのレールを、実際の線路の両脇に引き出していく。1m当たり60kgの重い鉄が、地面と運搬車の高低差でしなっている。

楽しく作業する、がモットーだ  
  軌道工は下ろされてくるレールを、さまざまな道具を使いながらレールを置く専用の滑車台の上に安定させていく。この日の作業はレール下ろしのみで、後日、レールの交換は行われる。4月初旬なのに作業中の気温は摂氏2〜3度と寒い。雨の日、雪の日、また酷暑、極寒の日も新幹線の安全運行、乗客の快適さなどを保つための”縁の下の力持ち”役を果たす厳しい作業は続けられる。そんな軌道工のリーダーの一人が吉村さんだ。

  吉村さんは23年前、父親と同じ仕事に就くために同じ会社に入った。以来、懸命に技術を磨いてきた。作業は、現場の状況、天候によってさまざまな方法があり、それぞれの状況に応じた技術を習得しなければならない。「降雪の中での作業が最も難しい」と吉村さんは言う。

 レールを真っ直ぐに歪みなく敷設するためには、やはり経験がモノをいう。レールを敷設した後、曲がりや凹凸を検査するのは「目視や糸を張ったりで、器具は使わない」そうだ。それでも1、2mm以内の誤差に抑えられると言う。その後、JR東海の軌道検測車が検査していく。

  運搬車から引き出されたレールを地面に据えられた滑車台に
安定させる
   
 「夜に出勤して朝帰り」と、昼と夜が反対の生活が続くが、「すっかり慣れてしまって辛いとは思いません」と吉村さん。規制が厳しい仕事だが、気のあった仲間と楽しく作業をするように心掛けていると言う。若い後輩たちに対しては、何しろ興味を持ち続けてもらうことが大切なので、厳しさの中に優しさを出すように指導しているそうだ。



長大なロングレール運搬車 作業の安全に欠かせない点呼
     
  資料提供:EAST TIMES 2004年5月号(発行所 東日本建設業保証株式会社)
 
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