こんにちは建設マスターさん


建設マスター 第11回受彰者 重機オペレータ

宮林 義美(59歳)さん 山崎建設(株) (北海道)

 アームがザクッと粘土質の愛鷹(あしたか)ローム層の土を掘り下げると、息もつかずに掬い上げ、旋回してダンプの荷台に落とす。巨大なキャタピラの上にある運転席で、左右の操作レバーを自在に動かすと、バックホー(重量20トン)はまるで意思を持つロボットのように上下左右、回転の動作を続ける??重機オペレータを一筋にやってきた宮林さんの手にかかると生き物のように見えた。ベテランの匠(たくみ)の技なればこそだろう。

 現場は、第2東名高速道路建設のための「富沢改良盛土作業所」。静岡県裾野市にあり、晴れた日は手の届くようなところに富士山が見える。宮林さんが担当する仕事は、バックホーを使う「法(のり)面の整形」作業で、高速道路のトンネル上部の山林を削り、そのあとの斜面をきれいに整地して仕上げる。

  「法面はさまざまな表情の変化があり、まるで生き物みたいだ。入社以来オペレータをやってきて、1日だけで法面の形が決まったのはたったの1度だけ」と宮林さんがしみじみと言った。作業現場は、道路のほかダム建設、宅地造成などだが、たかが土砂や岩盤相手とあなどれない。それぞれ固有の表情を持ち、性格があるという。だからこそ取組みがいがあるという。

  北海道・士別出身の宮林さんは、中学を出ると地元の建設会社で働いたが、重機土木専門の建設会社として知られた山崎建設(本社・東京)が十勝ダム建設の際に札幌で社員を募集していたのを知り応じた。27年前のことだ。それ以来、重機のオペレータとして経験を積み重ねてきた。技能は先輩のやり方を見ながら盗むようにして身につけた。決して手取り足取り教えられるものではなかった。いまは社内で数少ない1級技士だ。もちろん苦い失敗の思い出もある。勾配を間違えてやり直しを命じられたこともしばしばだ。気を抜けない、集中力が欠かせない作業なのだ。今年9月に一応定年だが、円熟の宮林さんを会社は手放しそうにない。

バックホーを自在に操って法面を整備
 
  資料提供:EAST TIMES 2005年3月号(発行所 東日本建設業保証株式会社)
 
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