こんにちは建設マスターさん


建設マスター 第13回受彰者 造園工

江上 信一(49歳)さん (有)江上造園 (神奈川県)

 造園とはおよそ縁遠い感じのする居酒屋の新装店内で、灯篭や水鉢、置石の据付けが流れるように進んでいく。

  一方で、若い社員が廊下と客室の仕切壁に黒竹の細枝をはめ込む作業をしており、江上さんは行ったり来たりしながら指導している。この他に、入口付近にワラぶき屋根も造る。

 今回の仕事は内装のような感じだが、「飾り屋さんなんていわれたりしますが、造園のしっかりした技術がなければ出来ない仕事なんです。いわば伝統技術の応用です」と、江上さんは言う。

 最近は、本来の青空の下での造園と、こうした店内装飾の仕事が半々なのだそうだ。

 江上さんは大学の農学部林業科を卒業した。大学時代にアルバイトをしていた造園の仕事に興味を持ち、会社員の父親に「腕に技術を付けるた方がいい」と言われたこともあり、知合いの造園師に弟子入りした。

 林業を学んだだけあって、植生調査まで手掛ける。31歳で独立。昨年、会社組織にし、6人の社員を抱えている。
狭い空間にセンス良く水鉢などを配置する
 

  造園の仕事は、技術に優れているだけではダメで、“センス”が必要だという。

 例えば、山に自然に生育している樹木の姿をそのまま庭園に移すのではなく、その庭園の形にマッチし、そのうえに山の自然を思わせる姿に樹木を作りかえることが必要で、これがセンスだという。



手慣れた動作で仕切壁に黒竹をはめる
 “自然が手本”で、一生、勉強しなければならないわけで、技術とセンスが一体化してはじめて一人前だそうだ。

 最近の若い人は、「このあたりで良いだろう」と、仕事の妥協点が低い傾向があるという。

 しかし、技術講習会などがあると積極的に出席し、まだ知らない技術の吸収に極めて熱心で、伝統技術に飢えていると江上さんは見ている。
 
  資料提供:EAST TIMES 2005年7月号(発行所 東日本建設業保証株式会社)
 
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