こんにちは建設マスターさん


建設マスター 第14回受彰者 塗装工

標 俊也(42歳)さん 吉野工業(株) (東京都)

 今回、取材は標氏が勤める会社・吉野工業で行われることになった。吉野工業のビルは、エレベーターホールは大理石で覆われ、事務室にも高級感溢れる大きな石壁に額などが飾られている。

 「これ、すべて私が描いたんです。」

木目をつけるには、ゴム型を
使い、力の入れ具合でリアル
な木目を仕上げていく。簡単
そうに見えるが、自然素材の
模様を体で理解していないと
作れない。
   
  よく見ると事務室の石壁は石膏ボードで、石ならば額などかけようもないところに止め具が差し込まれている。叩いてみると確かに石膏ボードの軽い音がする。

 しかし、エレベーターホールの大理石の壁は、叩いても顔を近づけてても大理石にしか見えない。

 「これはコンクリートに描いているんですよ。この技術は、1992年に塗装業界がスウェーデンからマーブリングの専門家を招いて行なった講習会で学びました。とはいえ、講習期間は1週間。約50人が講習を受けてましたが、その後どれだけの人が技術をモノにしているか……。」

 現在は、ダミーといえば印刷した壁紙に主流を奪われているが、壁紙よりもリアルな質感があり、当然、本物の石を使うより安価にできる。

 「マーブリングの仕事は年に数本くればいいほうです。依頼に来るお客さんはたいてい自分で石を持ち込まれます。その見本を参考に、全体像をイメージしながら描いていくんです。
 世界的に有名な時計会社から、エントランスの木枠を描いてほしいと依頼が来たこともあります。アンティークな木の質感を再現してほしいと言われ、させていただきました。もうほとんど芸術家の世界ですね。」

 現在標氏は、職業訓練校の指導員もしている。ここでぶつけられる生徒たちの疑問が、会社の後輩指導にも役立っているという。



刷毛が固まらないよう普段はシンナーに浸している。 ローラーで塗る前に、刷毛で縁から塗っていく。 ローラーについた余分な塗料は丁寧に取り除く。
     
石膏ボードに描かれたマーブリング。これを仕上げるのに4〜5日かかるという。ちなみに下の木目も描かれたもの。 この小さなゴム型で多様
な木目を表現できる。
吉野工業では学校や病院建築の仕事が多く、
そういった仕事ではノン・アレルギー塗料で仕上げている。
数種の塗料で作る調色は最も難しい。   道具や塗料は種類別に整理されている。 石や木の質感の表現に必要な15種類の刷毛
 
  資料提供:EAST TIMES 2006年3月号(発行所 東日本建設業保証株式会社)
 
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