こんにちは建設マスターさん


建設マスター 第14回受彰者 建築板金工

  「溶接をする板金屋は少ないが、ウチは
すべてオーダーメイドで作るため溶接も
自分でします」と野溝氏は語る
野溝 年成(44歳)さん (有)野溝金属 (茨城県)

 「ウチに来る仕事は、みんな現場に合わせた1点ものを作るような仕事ばかり。他の板金屋ではやらない仕事ばかりが来るんですよ」

 と語るのは野溝年成氏。すべてのオーダーに応えるため、通常の板金会社にはない厚物を扱う機械を揃え、オーダーメイドできる体制が野溝氏の会社には整っている。

 「手作業が激減している中、お寺の屋根の銅板張りなど貴重な仕事が来るのは、父のおかげです。

 祖父は銀行マンでしたが、父は板金工になり、独立してからもお寺の仕事などを任されたことが今も続いています」。

住宅や工場の屋根などは
この機械を使って曲げる

 父親が修行していた先の親方の息子が金物屋に職種変えしてしまったため、親方の板金の仕事をまわしてもらえたこともラッキーだったと言う。

 「私は子供の頃から自然に手伝わされてきたし、勉強が嫌いだったので板金工になったんですよ」。

 本人はこのように語るものの、独学でCADを勉強し、詳細な施工図を自身で作ってしまう技術は見事なものだ。


 「ISOを取得している大手ゼネコンの仕事だとどうしても必要だし、施工図面に細かい経験則的な指示を出しても手間と時間がかかるので、自分で作ることにしたんです」。

  たとえば真冬に黒い屋根材を施工した場合、真夏になると地域によって最大7cmも伸びるのだそうだ。そういった様々な条件から、職人ならではのカンで詳細な施工図を作る。

  「最近は自分の仕事しか理解していない職人が増えています。けれども、板金工がどんな仕事をすれば左官工がいい仕事をできるか知っていないと、チームワークで作り上げる建築は、いいものができない。人の心配をしている余裕がないという現実もあるのですが、できるだけ本当の職人の在り方を後世に伝えていきたいと思っています」。

板金工修行の第一歩はハサミで板金を
切ることから
  展開図を思い浮かべながら切れるよう
になるまで数年かかる
  板金を折り紙のように水切りを折ってい
く野溝氏。完成した水切りは「微妙な傾
斜がポイント」だと言う。「他の家のパー
ツがたまに目に入っても、きちんと作ら
れているものが少ない」のだそうだ
   
板金バサミの歯はカーブを描いている。
これで直線を切るには1年くらいかかる
と言う
  通常の板金屋にはない厚物の機械。
建築板金業に少ない厚さ1mm以上を
扱う仕事には普通は手を出さないのだ
と言う
  寺の屋根に使う銅板。銅板の端を折り
曲げ馳組(はぜぐみ)でつなぎ合わせ
ていく
 
  資料提供:EAST TIMES 2006年5月号(発行所 東日本建設業保証株式会社)
 
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