こんにちは建設マスターさん


建設マスター 第1回受彰者 解体工

安食 成男(54歳)さん (株)高山工業(東京都)

 建設業は、ものづくり産業といわれる。ただし、なにもない場所なら別だが、単につくるだけでは済まない場合も多い。既存の構造物をはじめ、さまざまな障害物があるからで、これらを取除いて工事をしなければならない。

 新しい構造物をつくるために、古い構造物を解体する。つくる仕事と壊す仕事は、まるで正反対のように思えるが、解体の仕事は建設業のなかでも重要な専門職種の一つだ。

 「解体は簡単な仕事に思えるかもしれませんが、壊すというのはたいへん難しいことです。なによりも壊す構造物の構造を知らないとできません」と、解体の仕事を、安食さんはこう表現する。

構造物の熟知が大切と言う  
 構造を理解して弱い部分から壊していくのがノウハウだ。それを知らないで、ただガムシャラに壊していくと、構造物の重心を失い、事故を起こす原因になると言う。

 解体の手順を決めるには図面を読むことが不可欠だ。あるいは機械を使って建物を壊すときには「何トンの重さの機械まで床に載せていいか、構造計算をしなければなりません」と話す。従って建物、とくに構造のことを熟知していないとできない仕事になる。近年、解体業ではゼロエミッションの考え方が浸透してきた。

  安全を最優先にテキパキと指示する
 この仕事を始めたのは、東京オリンピック(1964年)の時で、40年近い経験を持つ。スチールボールやエアブレーカー、油圧ブレーカーなど、いくつもの解体機械を操作してきた。しかし、実際に機械を操作していたのは20年くらい前までで、現在は解体する人たちの安全などを監督する指導者として活躍している。

 若い人達には「自分で危ないと思ったらやめなさい。自信がなければやめて、やり直しなさい」と、指導する。簡単なようで、つい怠ってしまうことのようだ。「危ないと思ったら、ほかの会社の職人さんでも注意します。工事全体を円滑に進めるには、心と心のキャッチボールが必要です」と、安食さんは強調する。


銀座にほど近い大型ビルの現場で 訴えかけるように安全の重要性を説く

  資料提供:EAST TIMES 2001年7月号(発行所 東日本建設業保証株式会社)
 
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