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鎮守 幸朗(51歳)さん (株)高山工業(東京都)
浚渫とは、水底の土砂をさらうことで、水深を深くして航路を確保したり、埋立ての際に土砂を採取するために行われる。昭和47年にこの世界に入って以来、30年近く洋上での仕事に携わってきた。
浚渫には土砂をつかみあげたり、吸い上げたりといったいくつかの方法がある。そのための装置(機械)を搭載した浚渫船が開発され、国土づくりに貢献してきた。
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責任者の自覚が大切と話す |
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海上での工事は、陸上とは異なる困難を伴う。なかでも「海象に尽きる」というように、シケか静穏なのか、作業ができるのか否かの見極めが非常に重要な要素になる。
加えて「事前の段取が大切だ」と、鎮守さんは力説する。問題が発生したときに対処するのではなく、あらかじめ考えられる問題を想定し、事前に対策を講じるといった危機管理的な手法が求められる。工事を効率よく進めるだけでなく、預かっている人命を守るためにも、指揮する人に課せられた重大な使命だ。
現在の仕事は、「デコム7号」と呼ばれる地盤改良船による東京湾内での海洋構造物の工事だ。深層混合処理という特殊な工法による施工で、海底に円形の杭を打つようにして地盤を改良していく。水深は約15m。改良したら、少し船の位置をずらしてまた改良するという手順になるが、すべて目に見えない場所での施工だ。
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目には見えなくても海底の様子は頭の中にある |
見えない場所だが、改良する材料を1分間にどれだけ排出したか、処理するスピードはどうかといったデータをしっかりと収集し管理する。こうしたデータの裏付けによって、施工の確かさを発注者にも理解してもらうわけだ。「目には見えなくても、どのようになっているかのイメージはある」そうで、鎮守さんのこれまでの経験の蓄積によるものだろう。
「責任者とは、責めを負わされる人です。誰かにいわれてから対応するのでは取り返しがつかなくなりかねません。自分が責任者という自覚をもって仕事をしていきたいと思います」と、鎮守さんは話を締めた。
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