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今現在,CADといえば多くのユーザが「JW_CAD」や「AutoCAD」を利用している。しかしながら中小建設業におけるCADの導入・活用はごくわずかといっていい。
CALS/ECの具体的なテーマとなっている「電子納品」等において,CADは導入せざるを得ないのは確かなことである。CALS/ECは電子納品のみではなく,電子データ交換や,将来的にはCADデータから自動数量計算,積算までも行うことを目的としている。
ただ,CADソフト(データ)にはさまざまなものがあり,企業ごとに違うCADデータを交換するには,共通のファイル形式が必要となる。
日本建設情報総合センター(JACIC)は「CADデータ交換標準開発コンソーシアム」を設立,CADデータ交換のための国際規格のうち,2次元CADに対する規格であるSTEP/AP202をベースにSXF形式を開発,それが国土交通省電子納品要領(案)に採用されることになった。
◎国土交通省国土技術政策総合研究所ホームページ
このSXF形式のデータは,いわゆる中間ファイルとして位置づけ,今後の電子データ交換のベースとなっていく。
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◎CAD
Computer Aided Design の略称で,コンピュータを使った設計や製図,またはそのシステムのこと。
◎CADデータ交換標準開発コンソーシアム
Standard for the CAD date Exchange in the Japanese Construction Field(SCADEC)
の略称で,1999年3月〜2000年8月の間,CALS/ECにおけるCADデータ交換のための中間ファイルの標準仕様開発を目的に設立された。現在はCADデータ交換標準小委員会が業務を引き継いでいる。
◎電子納品要領(案)
CALS/ECにおいてどのように最終成果物を納品するのか,細かく定めたもの。電子納品要領(案)・基準(案)には,
・デジタル写真管理情報基準(案)
・営繕工事電子納品要領
・建築設計業務電子納品要領(案)
・土木設計業務等の電子納品要領(案)
・CAD製図基準(案)
・地質調査資料整理要領(案)
がある。
なお,2001年7月に「CAD製図基準(案)」「デジタル写真管理情報基準(案)」「地質調査資料整理基準(案)」が改定となり,「測量成果電子納品要領(案)」が新規策定された。
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市販されているソフトは,JW_CADやAutoCADに一応対応している。だだし,互換性において100%とは言い難く,これらを標準に使用するのは困難である。
本来,SXF形式のデータで発注者から図面を受け取り,設計変更による修正後,SXF形式で納品するのが本来の趣旨であることから,異なるファイル形式を用いれば,そのファイル修正に時間を要することになる。このようなファイルの互換性をクリアするのがSXFである。
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DXFには様々なバージョンが存在する。
・AutoCAD2002 DXF
・AutoCAD2000 DXF
・AutoCAD '98 DXF
・AutoCAD '97 DXF
・AutoCAD '95 DXF
それぞれのバージョンによって登録形式が異なり,このようなケースはAutoCADだけではなく,国産メーカ又はソフトメーカすべてにいえることである。
しかし,それぞれのメーカが同時期に新バージョンをリリース発売することは不可能なことであり,また,DXFのバージョンも複数であり,各CADベンダーは,一応DXFに対応するようにしているが,そのDXFのバージョンがばらばらとなっている。このような不可能がつきまとう環境において,ユーザはメーカに完全対応を要望するが,あくまでデータの互換性の開発は商品価値を高めるには乏しいものである。
また,このような背景の中で手書き図面からCAD化し効率アップ及び分担作業ができるようになったにもかかわらず,データ互換の低さによって変更時間が増えてしまうといった悪循環を生むことが危惧される。そのことから互換性を意識するあまり,コンバート作業に労力をさき,CAD本来の効率アップ・使いやすさとは,かけ離れた結果になり,設計者等の良き道具とならなければならないCADが“お荷物”化してしまっているといった弊害も否定できない。
以上のようなことから,AutoCADの使用について,操作性を含め複雑・困難なこのソフトを使用するについては特に注意が必要である。また,聞くところによると,国産CADは操作性が非常に簡単だが,AutoCADは複雑だからこそ講習会で商売が出来るとの噂もある。
またAutodesk社では,オフィシャルに同社サイト上等において,SXFレベル4はまだ規格が決まってないのにもかかわらず,「建設土木・GIS向けCAD『Autodesk
Land Desktop 3』を次期CADデータ交換仕様「SXFレベル4」に対応」と公表しており,ユーザが混乱するのではないかと危惧される。
また,千葉工業大学寺井助教授著により,(財)建設業振興基金が発行した『CALS
/EC等の最新動向と中小建設業における対応』においても,「DXFは特定のメーカの,自社CADシステム間のデータ交換を想定した仕様。標準としての実効性にも問題がある」と述べている。
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◎DXF
Date exchange Formatの略称で,オートデスク社が自社の新旧のCADシステム間でデータを相互に利用できるように開発した,データ互換用のデータ表現形式。
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JACICでは,以下のサイト上でSXF対応のCADの利用に関する見解を公開している(下記参照)。
http://www.cad.jacic.or.jp/user/attention.htm
SXF対応CADの利用に関して
ここでは,CADユーザの皆様に対してSXF対応のCADに求められる機能についてご説明し,CADユーザの皆様がSXF対応CADをご利用になる際の一助といたしたいと思います。
1. |
SXFデータの作成に関して |
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(1) |
『SXFフィーチャ仕様書 V2.0』に規定されている用紙サイズやレイヤ数,線種や色など,図面を作成するために必要な機能がサポートされていること。 |
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(2) |
『SXFフィーチャ仕様書 V2.0』に規定されている幾何要素/表記要素が作図できること。 |
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(3) |
『SXFフィーチャ仕様書 V2.0』に規定されている寸法線やハッチングが作図できること。 |
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(4) |
『SXFフィーチャ仕様書 V2.0』に規定されている部分図,作図部品,作図グループが作成できること。 |
ただし,データの作成については,CADをお使いになる方の業務分野で支障がなければ,必ずしもすべてのフィーチャ要素がサポートされている必要はありません。
2. |
SXFデータの描画に関して |
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(1) |
原則として,『SXFフィーチャ仕様書 V2.0』に規定されている全ての要素を読み込んで,CADの画面上で正しく描画できることが望ましい。
CADの描画が正しいかどうかを判定する方法としては,JACICが提供しているSXFブラウザの描画と比較する方法があります。チェック用のサンプルSXFデータがダウンロードできますので,お試しください。 |
3. |
SXFデータの保持に関して |
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(1) |
原則として,もとのSXFデータの情報を保持することが望ましい。
複数のCAD間でSXFデータをやり取りする場合,受け取った情報を正しく保持して出力できないと,図面データとしての情報や精度が次第に欠落あるいは劣化していくことになるため,できるだけ元の情報を保持することが望まれます。
受け取ったときの情報が保持されているかどうかを判定する方法としては,チェック用サンプルSXFデータを読み込んでから別の名前を付けてSXFデータとして書き出しておいて,2つのSXFデータをそれぞれSXFブラウザで表示させる方法があります。SXFブラウザには図面構造表示やフィーチャ要素確認機能がありますので,それらの機能を使って情報が保持されているかどうかを簡易的にチェックすることができます。 |
(JACICホームページより)
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OCFとは「オープンCADフォーマット評議会」の略称であり,CADのシステムがSXFにどの程度対応できているかどうかを評価している。業界内でDXFによるCADデータ交換には問題点等が多いことから,SXF対応についての評価を公平でかつ適切に行い,一定以上の基準をクリアしたものについて認定を行っている。
検定対象はCADソフトとビューアソフト,自動製図ソフト類であり,ファイルの入出力について検定を行い,現在は,SFC部分について対象としており,次に「p21」を対象として準備中である。
「p21」とは,国際規格STEPの正規規約に準拠した交換データファイルであり,「sfc」はこれをより効果的に処理した非常にデータ交換がしやすいものである。
OCF設定CADソフト一覧
会社名 |
ソフト名 |
(株)ビッグバン |
BV FILE |
(株)ビッグバン |
BV CAD |
(株)ビッグバン |
BV CAD/LT |
(株)ビッグバン |
BV CAD/SXF NFCCバージョン |
(株)オーエスケイ |
EXPERT-CAD |
川田テクノシステム(株) |
V-nas |
ダイナウェア(株) |
DynaCAD6土木 |
ダイナウェア(株) |
DynaCAD6 |
(株)フォーラムエイト |
UC-Draw |
(株)建設システム |
DC-CAD2 |
福井コンピュータ(株) |
BLUETREND Win |
福井コンピュータ(株) |
EX-TREND Win |
(株)ダイテック |
CADWe'll 土木2002 |
デザインオートメーション(株) |
CADPAC-FUSION |
デザインオートメーション(株) |
CADCity シリーズ |
(株)フォトロン |
図脳デジタルシート for Civil |
デザインオートメーション(株) |
CADPAC-CIVIL |
(株)シビル・デザイン |
陣 |
(株)シビルソフト開発 |
Civil Rapid |
(株)シビルソフト開発 |
Pipe Rapid+構造図作成システム |
(株)シビルソフト開発 |
Rapid Draw 21 |
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▲OCF検定に合格したアプリケーションには,上のロゴマークが付けられている。 |
去る7月8日,(社)全国建設産業団体連合会では,SXF対応CADである「BV
CAD/SXF NFCCバージョン((株)ビッグバン社製)」を傘下会員団体企業限定に供給することを発表した。CADソフトは非常に高価であることから,スケールメリットを活かし極めて低価格で供給することで,企業の設備投資を軽減し,なおかつ電子納品に完全対応出来るCADを安心して導入してもらうことをねらいとしている。
建産連推奨CAD「BV
CAD/SXF NFCCバージョン」
このCADの特徴として,中小建設業ユーザの使用率が最も高いJW_CADライクになっており,性能はもちろん操作も扱いやすい。
【ソフトの特徴】
●SXFネイティブサポート
CALS/ECで策定されたSXFフォーマットのデータをあたかもネイティブな環境で扱えるのがSXFダイレクトトランスレータ方式である。
ユーザはデータ変換時のストレスを感じることなしに本来の設計業務等に集中することが出来る。
その困難を克服するために開発されたのが,国際規格に準処しつつ,我が国の建設分野でのCADデータ互換に焦点を合わせたデータ形式がSXFである。
●JW_CADライクな操作
マウス右ボタンによる端点交点リード機能,マウス両ボタンによるズーム操作,JW包絡処理,JWK(シンボル図形),線記号変形データ読込などJW_CADライクな操作に対応,またメニュー形式もBV形式とJW形式が選べる。
●SXFダイレクトトランスレータ搭載
CALS/ECで求められるCADデータ交換時の100%近い互換性は困難と考えられてきた。
その困難を克服するために開発されたのが,国際規格に準拠しつつ,我が国建設分野でのCADデータ互換に焦点を合わせたデータ形式SXFである。
このSXFをBVシリーズの基本データ形式として採用し,CALS/EC時代にフル適合させた新バージョンが‘BV CAD/SXF
NFCCバージョン’。
一般にCADソフトは,独自の機能を効率的に実現するために固有のデータ形式を使用する。
NFCCバージョンでは,このアプローチを大きく変更。すなわち,BV CADのネイティブなデータ形式としてSXFを採用したことである(ダイレクトトランスレータ方式)。他社製品のように従来のデータ形式を維持したままSXFを中間ファイル形式として採用することも可能であった(外部トランスレータ方式)。
しかし,中間ファイルの利用は,例えて言えば日本語で考えてから英語に訳す,といったやり方であり,どうしても意味のずれや欠落が発生するが,その点,SXFをネイティブな形式とすれば,電子納品でもデータ変換自体が不要になる。 |
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各種アンケート,WEBサイト等でもみられるとおり,CALS/ECに対応していくため,特に各種ソフトについての性能や操作性等についての情報に対するニーズが極めて高い。
中小建設業のCALS/EC推進は種々の困難を伴うが,その対応が生き残りの必須条件であることから,無駄な投資を避け,少ない経費を有効に活用する必要がある。
したがって,業界団体等あるゆる機会を通じて,それらに関する情報を収集し,提供していくことが期待される。
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