知っておきたい電子入札・電子納品ABC
第5回 電子納品に必要なもの
 電子納品制度が導入されて1年が経過した。中小建設業者にとって,いよいよ具体的な対応策をとらねばならないときがきた。パソコン導入はごく普通となっているが,ネットワークを利用した有効な活用はまだまだ不十分で,スタンドアロンのOA化にとどまっているのが実態である。平成13年11月に福島県建設業協会が実施した情報化調査では,340社の調査対象で1社平均15台のパソコンを所有し,ほぼ100%の会社が導入済みである。しかしながら,本社と現場のネットワークは23社(6.8%)に構築されているに過ぎない。イントラネットはもとより,エクストラネットの活用による本社と現場のネットワーク化が重要な課題となっている。  
 電子納品とネットワーク化は,一般的には別次元と思われている。確かにスタンドアロンの環境でも電子納品は可能である。しかしながら,ネットワーク化は,電子文書の書式を定型化し,社内のグループコミュニケーションを確立することで,電子納品の準備を知らず知らずのうちに完了するのである。


電子納品のハードウェア環境




 ハードウェア環境は,一般論として下記の機器が必要だ。
(1)パソコン
(2)インターネット接続環境
(3)CD-Rドライブ
(4)デジタルカメラ
(5)カラープリンタ
(6)スキャナ
 さらに個別の機器について話を進めると,人それぞれに好みが現れる。一概に,これがよいということはない。これから機器を購入する人が参考になればと考えて,筆者の環境をご案内する。
(1)パソコン
ファイルサーバ2台(OS2000server
メインサーバ1台(Pen3/800MHz/128MB/HD100GB/自作/レイド・ミラーリング機能あり)
バックアップサーバ1台(Pen3/800MHz/128MB/HD80GB/自作/12時間ごとに更新データ自動バックアップ)
2年連続使用,問題なし,システム管理者筆者及び学生。

 話は逸れるが,システム管理者の人材がいないという話をよく聞く。かなり高い給与を提示しても募集に応じて頂けないらしい。この点で産学協同はいかがだろうか? 筆者は,大学院の学生にシステム管理を依頼している。コンセプト及び概略設計は筆者が行うが,技術はすべて学生さんにまかせている。学生さんは,一般にかなりの技術力を持っている。活用する場がないだけで,予算を与えると驚くべき力を発揮する。しかしながら,管理ルールは,社内規則としてしっかりと学習させなければならない。この点が重要である。
◎OS2000server
 OSはオペレーションシステムの略。正式にはWindows 2000server。サーバーをコントロールするプログラム。

◎Pen3
 Pentium III プロセッサーの略。中央処理装置で,コンピュータの頭脳にあたる。Pen4はPen3の次世代プロセッサーで,処理能力が向上している。
クライアント10台(標準仕様Cel・500MHz/メモリ192MB/HD8GB/社内LAN/社外にはインターネット接続)
画像処理用デスクトップ(Pen4/1.6GHz/メモリ256MB/HD40・80MB/メモリーカードリーダ/ライタ(6種)内臓/USB2.0接続/自作)

メモリーカードリーダ/ライタの写真 カードリーダ、コンパクトフラッシュ、メモリスティック、スマートメディアの説明

【メモリーカードリーダ/ライタ】

 このメモリーカードリーダ/ライタは,かなり便利なのものである。ぜひ皆様にお勧めしたい。私の利用しているものは台湾製でパーツとして購入し自作機に取り付けたものだが,デジタルカメラ等のメディア6種(メモリースティック・コンパクトフラッシュ・スマートメディア・マイクロドライブ・マルチメディアカード・SDメモリカード)を読み書きできる。東京・秋葉原にて約8000円で手に入れた。今ならもっと安いのではないか。これに類するものでUSB1.1対応の外付けカードリーダ/ライタがある。これも6種類のカードに対応し,読み書きができる。秋葉原にて4000円程度で手に入る。ただし,USB1.1であり,転送速度が遅い。USB2.0対応が望まれる。

外付けメモリーカードリーダの写真。スティックメモリ、コンパクトフラッシュの説明
【外付けメモリーカードリーダ】

〈筆者個人が使用している機種〉

バイオB5ノート(SR9K)(Pen3/600MHz/HDD12GB/FDD・CDなし)
ディスプレイ(17インチCRT4台/15イン チTFT6台)

 特に最近の機器で便利なものは,USB2.0である。これを採用し,外付けHD,CD-Rドライブ,及びカードリーダを効果的に使用している。電子納品関連周辺機器として,ぜひお勧めする。
◎USB2.0
 Universal Serial Busの略。周辺機器とパソコンの間を接続 する規格,インターフェイス。1.1に対し2.0は,40倍の転送速度(最大480Mbps)を持つ。

USB2.0接続外付HDの写真。USB2.0カードバス、外付けHD2.5インチ40GBの説明
【USB2.0接続外付HD】

(2)インターネット接続
 ADSLにて接続。光が低価格で利用できるならこれに勝るものはない。
(3)CD-Rドライブ
 USB2.0接続で外付けを主に使っている。機種はBuffaloCRW-24U2書込み24倍速。
 http://buffalo.melcoinc.co.jp/products/catalog/item/c/crw-24u2/index.html

USB2.0接続CD-Rドライブの写真
USB2.0 PCIカードの写真
【USB2.0接続CD-Rドライブ】 【USB2.0 PCIカード】

(4)デジタルカメラ

 工事現場の環境から機種を選択しなければならない。一般に下記の機種がある。
Fujifilm BIG JOB DS-270HD,DS-260HD
 http://www.finepix.com/ds270hd/
Ricoh RDC-200G
 http://www.ricoh.co.jp./dc/product/
コニカ Digital 現場監督DG-2
 http://www.konica.co.jp/lineup/camera_d/
 最近,一般のデジタルカメラが現場で使われている。フォーカス機能が高く,写りが良い上に価格が安いためであろう。筆者もオリンパスのキャメディアC-300zoomを使っているが,高機能でかなり便利である。防塵・防水機能もプロテクタを使えば実現できる。ただし,使いにくい。

プロテクタの写真
プロテクタを開けたところ
【プロテクタ】
(5)カラープリンタ
 カラーレーザープリンタをお勧めするが,高額であるのが難点。筆者は下記プリンタを使用。
富士ゼロックス DocuColor1250CP DA 2台(うち1台はバックアップ機として使用)IFカード100bas・メモリ192MB・アクセラレータ・CPUアップキット付き
http://www.fujixerox.co.jp/product/dpc1250/
EPSON PM-3300C/PM-900C

 PM-900Cは,インクジェットでCD-Rメディアのレーベル印字にも使用。電子納品用CD-Rメディアのレーベル印字の方法は3種類挙げられるが,現在最良の方法は,インクジェットによるものと思われる。
  http://www.i-love-epson.co.jp/products/index.htm#printer
(6)スキャナ
EPSON GT7600U(透過原稿ユニットGT70FLU付属)
 契約書等の紙文書をPDF化したり,ネガフィルムをデジタル化したりすることに利用している。少量では問題なし。しかし,大量のデータを処理するならば,富士ゼロックスDocuScan Color 1950NMクラスのパフォーマンスがほしい。A3も可能だ。
  http://www.fujixerox.co.jp/product/docuscan_c_1950nw/function_per.html
 また,フィルムスキャンにしてもニコンのCOOLSCAN W EDがほしい。
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/scn_prnt/coolscan_4.htm

◎カードバス
 バスは,乗合バスと同じ意味でデータを運ぶもの。ノートPCのカードスロットに入れて,データのやり取りを行う。
電子納品のソフトウェア環境

 一般論として,下記のソフトが必要となる。
(1)CADソフト
(2)デジタル写真管理ソフト
(3)工事完成図書納品ソフト(XMLソフ ト)
(4)ウィルスチェックソフト
(5)CD-R書き込みソフト
(6)PDF化ソフト
 それぞれの個別ソフトの話となると各企業の各部署の業務内容と導入決定者の個性の話となる。どのソフトがよいと言うことではない。ソフトは利用するもので,重要なことは使いこなすスキルである。何でもよい。かといって,重要な点もある。特にあげるとすると,(1)CADソフトである。  
 平成14年7月のCAD製図基準案の改訂で,以下の2点が追加された。

 1.新規10工種
 2.CADデータ交換フォーマットに関する規定をSXF(P21)と明示
 この第2がCADソフトに対する要求で,納品者はCADデータをSXF(P21)フォーマットで納品しなければならない。つまり,納品者が利用しているCADが,SXFのファイルを出力できないと電子納品ができないこととなる。SXF対応CADについては,「OCF検定の認証を受けたソフトウェア一覧」(http://www.jpsa.or.jp/ocf/ オープンCADフォーマット評議会)をご覧いただき,新規に購入するならこの中から「制限事項」の少ないものを選択することが望ましい。最近,(社)全国建設産業団体連合会で傘下会員向電子納品用CAD “BV CAD/SXF NFCCバージョン”が売り出された。SXF完全対応で販売価格が29800円であるという。通常市価で15万円ぐらいの製品であろう。注目に値するものだ。
 次に誤りやすい点を挙げると,CD-Rの書き込みフォーマットである。CD-Rの書き込みフォーマットはISO9660(レベル1)と定められており,これに対応しなければならない。Windows XPのCD-R書込み機能のフォーマットはJolietであり,これは使用できない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
◎SXF(P21)
 Scadec data eXchange Formatの意味で,CADデータ交換標準プロジェクトの開発成果であるCADデータ交換標準(仕様,ツール等)全体の通称。国際標準であるISO10303 STEP/AP202規約に則った電子納品のためのP21形式,関係者間でのCADデータ交換のための簡易な形式であるsfc形式,双方の物理ファイルをサポートしている。

◎ISO
 International Organization for Standardization=国際標準化機構の略称。世界的な標準化およびその関連活動の発展促進を目的とした各国の代表的標準化機関から成る国際機関で,日本からは通商産業省工業技術院の日本工業標準調査会(JISC)が参加している。
◎ISO9660
 ISOが策定したCD-ROMの標準論理フォーマットのこと。ユニックスを含む全機種(OS)に対応している。

◎Joliet(ジョリエット)
 米国マイクロソフト社によるWindows用CD-ROMで,ロングファイル・ネームを記録するために作られた論理フォーマット。ISO9660との上位互換性を持つ。
電子納品の情報環境

 電子納品に関する情報を取得するための主なサイトを紹介する。以下の(1)〜(3)は,公益を目的とするサイトである。基本サイト情報は(1)と(2)である。
(1) 国土交通省・電子納品関連情報サイト
http://www.nilim.go.jp/japanese/denshi/calsec/tekiyou.htm
(2) JACIC((財)日本建設情報総合センター)
http://www.cals.jacic.or.jp/setumei/setumeino.htm
(3) (社)日本土木工業協会CALS/EC部会
http://cals.dokokyo.com/sec_studywg/denshinouhin/nouhin.html