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![]() 石堂建設(株)工事部課長 岩崎武氏(右)と,ITコンサルタント 菊地信行氏 |
![]() 宮城県遠田郡にある,明治10年創立の石堂建設(株)。国土交通省や宮城県の直轄工事を数多く手がけ,建築と土木工事で売上を二分する。建設不況に対して,自らの構造改革に取り組んでいる地場に根付いた社員数50名の建設会社。現場への資材在庫情報の提供や,電子認証を組み合わせ,電子メールを活用した現場と社内をつなぐネットワークについて工事部の岩崎課長に伺いました。 ![]() 今から約5年前,石堂建設では,見積積算にパソコンを2台使っている程度で,文書や伝票は手書きか,ワープロで行われていました。 そのころ,「品質の確保」,「コストの縮減」を目的に2004年までに全ての国土交通省直轄事業においてCALS/ECを実現するという,「公共事業支援統合情報システム(建設CALS/EC)アクションプログラム」が発表されました。そこで,社長の石堂氏は建設CALS/ECの流れに沿った,IT化が必要と判断。 タイミングよく,営業に飛び込み「必ず使えるようにします。」と約束したコーセンコーポレーションのITコンサルタント菊地氏は,指導のため1年間に20回近く訪問することになりました。その結果30才代後半から40才代の社員が牽引役となり,パソコンを使い始めました。 JVによる現場での他社からの刺激や,試行錯誤して工夫して使うことが好きということもあり,施工計画書などそれぞれが創意工夫して作るようになり,建設現場でのパソコン活用が進みました。 ![]() 1999年に受注した,「鹿島台浄化センター水処理施設建設工事」が建設CALS/ECのモデル工事に指定されたことで,建設省の電子納品を手がけました。 これをきっかけとして,社内の電子化に向けて業務の見直しを開始。ISO9001認証の取得が,入札に必要になるという流れもあり,ISOに準じて文書の電子化を進めデータサーバを構築しました。 機能を少なく,簡単,容易に改善できるシステムを自社開発で構築。ペーパーレス化のために電子認証の仕組みを組み込み,アクセスを簡単にするためインターネットブラウザで利用できるようにしました。
資材データベースには,資材の名称や,在庫数量,単価,仕様などがデジタル写真画像付きで公開されており,現場からは,このデータベースの情報を元に発注書類の作成を行います。 在庫情報を公開することで,現場からの確認や,本社での対応の手間を省くことになり,また,本社社員の在籍時間とは関係なく,いつでも確認できるという時間的な制約がなくなったことで,効率化が図られました。 発注書類などの,文書フォームは,データサーバよりダウンロードできるようになっており,作成文書には,電子認証により自動的に文書に署名が入力されており,そのまま電子メールに添付して所属長へ送付し,承認を受けるという方式をとっています。 在庫確認と発注イメージ
![]() ![]() 所属長は,現場からの承認文書を電子メールで受け取り,社内からの承認文書は,サーバ上の個人フォルダの「未決済」フォルダに保管されるため,この二つを毎日チェックすることで,書類の山から逃れることとなりました。 WEBで提供するための,データベースの入力に関しては,VBAをベースにした,サーバデータベースへの入力システムを作成しました。ISO9001用の保管文書や,社内フォーマット文書へのアクセスは,WindowsNTサーバのフォルダごとのセキュリティ機能を利用し,文書管理者のみが書き換えできるという運用をしています。 電子認証を組み合わせたペーパーレスでの文書データベースのシステム化により,
現在,社内文書の約8割が電子化されており,残る2割も現在取組中ということです。ただし,契約書などは今後も文書保管になると考えておられました。 現場の管理面についてお伺いしたところ,管理は基本的にはすべて現場代理人へ任せているということで監督者である現場代理人の資質に依存するところが大きいということです。ですが,注意の必要な工事などについては,所属長との細かなメールのやり取りにて調整を行い,また,着工前の実行予算書の提出段階で細かなチェックをし,データとして保管しておき,現場から随時送られてくる発注書や請求書と実行予算書のデータを対比させて各段階でチェックするという方法をとられています。この点に関しても,文書データベースを活用することで,過去にさかのぼっての原因調査や,電子認証により責任の所在が明確化されたことで効果が現れた部分であるということでした。 今後,ISO14000認定取得に向けて,資材データベースの内容も,建設機械の消費燃料や,電気設備,産廃に必要な情報などを追加していく予定です。 ![]() このようなシステムの構築に関して,全体の構想は,社長が考え,プロジェクトリーダーは工事部の部長という体制で進めてこられました。具体的な構築内容については,自分たちの「こうしたい」というアイディアをITコンサルタント(菊地氏)に相談し,ソフトウェアを探してもらったり,作ってもらった,ということです。
それは,「社内全体の伝達システムや運用形態は,その時々で変える必要のあるものであり,決まった形はない。常に改善が必要だ。いつでも形や流れを変えれる必要がある。」という考えからです。 パッケージですでに提供されている業務システムはそのまま上手く使い,自社開発システムを作る場合には機能を限定したシステムを開発することで,システム構築費用を抑えることができたそうです。自分達はあくまでも建設の仕事をするためにパソコンを利用しているだけで,ネットワークの管理や,システムに関する調査や評価は専門家に任せる方針で,今後もアウトソース先と上手く付き合っていくということでした。 ![]() IT化を行い効率化されスリムになった今,公共工事の先細り,宮城県方式で行われる入札金額の低価格化の傾向から,民間建築分野の比重拡大に向けた転換期を迎えている。土木で培った技術を建築分野で生かすということで,RC造の断熱性と遮音性に優れた高気密の規格型共同住宅を低価格で提供する「グランデージ」を企画展開中ということでした。 |
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