事例03

仮想の技能訓練が行える、ICT
建機実習用シミュレータを試作

富士教育訓練センターでICT建機による施工を体験する研修の様子

既存のホログラフィック処理装置を活用したMR技術などの利用を予定している

富士教育訓練センターでは、平成29年11月からICT土工研修がスタート。写真は、3次元施工図の作成研修の様子

連携体の概要

VR技術等と用いた建設リカレント教育を試行する事業連携体
所在地:東京都台東区
事業管理者:(一社)日本機械土工協会
構成員:日本マルチメディア・イクイップメント(株)
HP:http://www.jemca.jp/

VR技術等を用いた建設リカレント教育を試行する事業連携体(東京都)

・ICT土工研修において、運営経費の軽減や実習時間の増加を図るため、実機を使わずICT建機の技能訓練が行える環境を構築。
・VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などの技術を用いて実習シミュレータを開発。質量両面で実習効果の向上が期待される。

訓練用ICT建機の手配費用が研修運営上のネックに

 (一社)日本機械土工協会は、職業能力開発校である富士教育訓練センターを運営する職業訓練法人全国建設産業教育訓練協会との連携により、「i-Construction標準教育のモデルカリキュラム」を構築。これにもとづくICT土工研修を、富士教育訓練センターや関東地方の建設業協会において、平成28年3月の試行を皮切りに順次実施している。受講者は約2年間で延べ80名を超え、実施の成果は確実に広がりつつある。
 研修の成果が出る一方で、ICT建機の操作実習において、使用するICT建機のレンタル料金や研修会場までの回送料金が高額なため、十分な台数の実習用建機を用意することが難しく、研修生が実習を受けるまでの待ち時間が長くなる、十分な実習時間が確保できない、といった運営上の問題が顕在化していた。

VR、AR、MR等の技術を用い実習用コンテンツを試作

 こうした状況を鑑み、 (一社)日本機械土工協会を事業管理者とする連携体は、ICT建機の操作実習においてスケジュール上の制約を少なくし、実習時間の増加を図るため、実機による訓練を補完する操作実習用コンテンツの開発・導入を決め、その試作に取りかかった。
 このコンテンツは、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)等の技術を用いた「現実の代替環境」を、シミュレータ内に様々なパターンで再現するもので、その中に入り込み、あたかも現場にいるかのような仮想の技能訓練を行うことができる。これにより、実習の質的要素である「試行体験」と、量的要素である「体験時間の拡大」の両方を同時に獲得でき、実習の効果がより高まることが期待される。

技術の進化を的確に捉えたバージョンアップが課題

 ICT建機の操作実習用コンテンツの基本設計は、(一社)日本機械土工協会の労働安全委員会の監修のもと、同協会の会員である機械土工の専門工事会社に加え、協会外からもゼネコン、建機メーカー、および建機レンタル会社など数社から技術支援を受けて進めている。また、コンテンツ(3Dモデルデータ)を表示する、「ホログラフィック処理装置」には、既存の製品を使用することとしている。
 VR、AR、MRの各技術は、いずれも日進月歩で進化している。それらの動向を的確に捉え、コンテンツの内容や機能をバージョンアップさせていくことが、今後の取組み課題の中心となりそうである。