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連携体名 北海道土木技術開発連携会 事業管理者名 (株)砂子組
所在地 北海道奈井江町 構成員 (株)北海道アトリウム、北寿産業(株)

■運転に必要な資格が分かれているため、ロスが生じるバックホウでの作業工程
 (株)砂子組、(株)北海道アトリウムは、いずれも北海道空知郡奈井江町に本社を置く建設企業で、前者は土木工事を、後者は造園工事を主力事業としている。また、北寿産業(株)は土木工事や解体工事を手掛ける、夕張市の建設企業である。これら3社は、それぞれ同じタイプのバックホウを所有し、ベースマシンとして現場で使用している。
 バックホウを運転する際は、その重量区分(車両系、小型車両系)や作業の内容によって、異なる運転資格が必要となる。したがって、自分の作業に必要な運転資格しか持たないバックホウのオペレータは、同じタイプのバックホウであっても、それを運転して自分の専門外の作業を行うことはできない。そのため、伐開作業(草木を切り開き、樹木の根株を掘り起こし取り除く作業)の後に土工作業を行う、あるいは解体作業の後に土工作業を行うといった連続する工程において、1人のオペレータが続けてバックホウを運転することができないケースが少なくない。事故防止の観点からも、運転資格が分かれていることは当然であるが、このことによって建設現場の作業工程に少なからぬロスが生じていることは、否めない事実である。

■オペレータの技能の拡大と向上を図り、連続した作業を行える人材とする
3社が手掛ける現場においても、作業内容ごとに専用のバックホウとオペレータを用意しているのが現状である。例えば、建物の解体現場では、コンクリートの取り除き作業と、地盤に空いた穴を埋め戻し転圧する作業の、それぞれについてバックホウとオペレータを用意しなければならない。このような現場では、工程内に人と建機の入れ替えがあることによって、時間のロスはもちろん、オペレータ手配の困難や工事原価の高騰といった状況も発生しており、看過できない問題となっていた。
 こうした問題を解決し、生産性の向上とコストダウンを実現するため、3社は連携体制を組み、バックホウオペレータをはじめとする
各社の従業員について、技能の拡大と向上を図り、連続した作業を行える人材に育てる、多能化の取組みに着手した。

■不慣れであっても安全・確実な作業が行える、「マシンガイダンスシステム」導入を決める
 バックホウ運転資格の新たな取得や、自分が持っている以外の運転資格を取得すること自体は、短期間の講習を受ければ可能である。しかし、単に資格を取得しただけでは、現場の作業をこなすには不十分であり、熟練工レベルのオペレータとなるまでには、さらに数年間の実務経験が必要となる。そのため、新たに資格を取得したオペレータは、OJTで技能の習得に努めることになる。
 そこで連携体は、他の工種に不慣れなオペレータであっても安全、確実な作業を行える技術が比較的短期間で習得できるよう、今回の取組みにICTを活用することを計画。
バックホウの操作をサポートする、「マシンガイダンスシステム」の導入を決めた。

■既に保有するバックホウにも後付け可能な、安価なシステムの独自開発に取り組む
 マシンガイダンスシステムとは、GPS等の計測技術を用いて、建機の位置情報・施工情報、及び現場状況(施工状況)と設計値(三次元設計データ)との差異を、車載モニタを通じてオペレータに提供し、操作をサポートするシステムである(建機の操作はオペレータが行う)。
 しかし、このようなシステムを搭載した最新のICT建機は非常に高価であり、中小建設企業が独自に購入することは困難である。そこで、連携体は、中小建設企業が保有している古いバックホウにも後付けできるシステムが必要と考え、変位計や加速度計などを活用してバックホウの位置や傾斜等を把握し、不慣れな操作をサポートする、安価なマシンガイダンスシステムの独自開発に取り組むことを決めた。
 マシンガイダンスシステムには、バックホウのアームの挙動や車体の位置、車体の傾き、旋回角度を正確に測定する機能が必要である。そこで平成30年度は、これらの機能のベースとなる「変位計とGPSが連動するソフト」の開発や、傾斜計、変位計、加速度計での各種測定試験、測定データの処理ソフトの開発を進めた。

■ガイダンスのサポートにより、専門の作業と不慣れな作業を連続して行うことが可能に
 開発中のソフトによるバックホウのアームの挙動は、最新のICT建機のミリ単位の精度に比べると多少精度は落ちるが、1センチ以内の精度は十分に達成できることが確認された。これを踏まえ、引き続きベテランオペレータの操作をシステムに記憶させ、技能講習の効率化・合理化に役立つようにするなど、さらなる改良が加えられていく予定である。
 このシステムの完成により、例えば、解体工であるバックホウのオペレータが土工作業に必要な資格を取得した上で、マシンガイダンスのサポートを受けて、解体作業と不慣れな土工作業とを、そのまま連続して行えるようになる。このような形で、現場における生産性の向上と、コストの削減が進むことが期待されている。

■オペレータ1名が1台のバックホウで、3つの工種を手掛けられることが理想
  また、従業員のスキルアップを図る取組みとして、バックホウの運転資格を複数取得できるよう、(株)砂子組の1級建設機械施工管理技士を講師に、解体工事における車両系バックホウの運転講習を行った。講習には連携体の従業員5名が参加。技能講習には2名参加し車両系の運転資格を取得することができた。さらに、開発中の「変位計とGPSが連動するソフト」をバックホウに取り込む際に必要な遠隔操作についても、パソコン上の基本モデルの画像を見ながら、技能習得の訓練を繰り返し実施した。
 今回の事業は、3か年計画で進めていくこととなっている。連携体は、オペレータ1名がバックホウ1台で、3つの工種を手掛けられるようになれば理想的だと考えている。また、マシンガイダンスシステムを、ブルドーザなど他の建機に応用できるようにすることを計画している。

 バックホウ
 油圧ショベルと総称される建設機械の一種。アームの先端にショベルやバケット(アタッチメント)を、作用面がオペレータ側になるように取り付けて手前に引き寄せる方向に操作し、掘削等の作業に用いる。

●建設機械(バックホウ)のオペレータについて、新たな運転資格の取得など、それぞれ専門以外の技能の拡大と向上を図り、連続した作業を1人で行える多能工とすることを目指した。
●不慣れな作業でも安心、確実に行えるよう、既に保有するバックホウに後付け可能な、ICTを活用したサポートシステム、「マシンガイダンスシステム」の開発に独自に取り組んだ。