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連携体名 須坂市2社連携体 事業管理者名 (株)青木ハウジング
所在地 長野県須坂市 構成員 (株)青葉組

■雪が多く寒さも厳しい長野県北部地域の冬、仕事量が少なく営業力の強化が課題
 長野県北部地域では、冬場は雪が多く、寒さが厳しいことから、建築着工件数が少ない。そのため、仕事量の繁閑(はんかん)差が大きいことに悩んでいる建設企業が少なくない。注文住宅建築およびリフォーム工事を手掛ける(株)青木ハウジングと、住宅その他一般建築の基礎工事を手掛ける(株)青葉組、いずれも長野県北部の都市、須坂市に立地していることから、そうした悩みを抱えて続けてきた。
 両社とも、閑散期である冬場の営業強化策については検討しており、具体的には(株)青木ハウジングでは既存顧客へのリフォーム営業の強化を、(株)青葉組では山間部などの災害復旧工事や新分野への進出を検討していた。また、冬場の営業強化に加え、繁忙期である夏場については効率的に現場をこなすこと、仕事の付加価値を高めることが課題であ るという認識も、両社に共通していた。

■全国的な問題である人材不足にも直面し、経営改善が必要とされる
 仕事量の繁閑差が大きいという、地域特有の問題のほかに、両社の営業エリアでは全国の建設企業の多くが直面している人材不足問題についても顕在化している。(株)青木ハウジング、(株)青葉組では、ともに40歳代の経営者が積極的に人材育成に携わっており、20歳代の若手社員が2~3名在籍している。だが、建設業界内で人材獲得競争が過熱する中、両社ともに従業員が仕事を覚えたら退職してしまうのではないかと、常に不安を感じていた。
 従業員に長く定着してもらえるようにするためには、従業員が長期的に目標をもって働くことのできる、魅力ある会社を目指す必要がある。そこで、待遇や福利厚生の改善、教育体制の充実など、就業環境の整備に取り組んでいくために、経営基盤が安定していることが必要となる。そのため両社では、繁閑差対策とあわせて、経営基盤の強化のための取り組みが必要とされていた。

■共通する事業課題の解決に向け、取引関係のなかった2社が連携
  (株)青木ハウジングと(株)青葉組は、地理的には近距離に立地しているものの、事業分野が異なることから、これまで取引等の関わりはなかった。しかし、これまで述べてきた通り、共通する事業課題が多いことから、今回、地域活性化支援事業の活性化支援アドバイザー、及び両社のメインバンクである長野県信用組合の仲介により両社が連携し、 コンサルティング支援のもと、課題の解決に取り組んでいくこととなった。
 連携体の2社は、意見交換、及びアドバイザーの助言・指導により、冬場の閑散期の受注対策と、繁忙期の生産性向上施策の検討に、同時並行的に取り組んだ。さらに、2社で優先課題や取り組みの方向性を共有化しつつ、それを足掛かりに、各社で現状把握と分析を行い、経営改善の方策や、今後の課題への対応策を検討した。

■SWOT分析による会社の現状把握や、必要売上高の算出などを行う
  アドバイザーによる連携体支援としては、2社が共有すべき課題を確認したうえで、経営者・後継者に対する研修やアドバイスを行った。具体的には、SWOT分析や工事別付加価値一覧表、稼働状況分析表など、現状把握・分析のためのツール・帳票類の活用についての研修や、各社向けカスタマイズについてのアドバイスなどを行った。また、2社間での取り組み内容の共有化・意見交換や、今後の方向性を定めるために必要となる、行動計画一覧表および進捗管理帳票についての検討も行った。
 一方、各社の取り組みとしては、SWOT分析を実施し、自社の「強み・弱み・機会・脅威」が何であるか、現状を把握した。また、定量分析として、工事別付加価値一覧表を作成し、過年度の実績ベースの付加価値(率)の水準で見た場合の、現状の固定費を吸収するための必要売上高を算出した。それにより、必要売上高を達成するためには、繁忙期の稼働率(実作業時間)を上げることと、新たな売上を作っていくことが必要であることを再認識した。なお、両社とも工事別付加価値一覧表を引き続き更新していくこととした。

■各社が課題への対応策を検討し、営業戦略と行動施策をとりまとめる
 次に、把握・分析した自社の現状と、今後、必要な売上高を踏まえたうえで、各社が課題への対応策を検討し、営業戦略と、それに基づく行動施策をとりまとめた。
 繁忙期の稼働率向上については、経営者・後継者がアドバイザー支援を通じて学んだ稼働分析表を作成し、それに基づき検討を行った。その結果、特に(株)青木ハウジングでは、従業員の習熟度により稼働が制限されている状況が浮き彫りとなり、その問題への対応策として、若手人材の早期育成や資格取得について議論した。
 閑散期対策を念頭においた、売上確保のための新たな営業戦略・行動施策については、(株)青木ハウジングでは、既存顧客のリフォーム需要の取り込みに加え、家づくりの特徴を打ち出し、競争の少ない受注を確保していくこととした。そこで、「快適性指標」など、同社の家づくりの特徴を打ち出したPR手法を検討した。また、既存客への継続的なアプローチや、(株)青葉組との連携も視野に入れた、ハウスメーカーからの下請受注の獲得強化についても検討した。
 一方、(株)青葉組では、新規事業としてコンクリート圧送工事業に参入し、安定した収益の確保を目指すこととした。

■営業戦略を軌道に乗せ人材定着も図るため、今後従業員の育成計画も検討
 新たな営業戦略をもとにした行動施策が定まったことを受けて、両社はそれぞれ具体的な行動をスタートさせた。(株)青木ハウジングでは、既存顧客のリフォーム需要の取り込みに対する営業活動において、ターゲットを絞ったうえで社長が具体的に動き出しており、すでに目に見える成果が確認できている。
 今回は、受注量の確保・平準化に向けた取り組みを重点的に進めたため、両社とも従業員の育成計画の作成には至らなかった。そこで、両社は今後新たな営業戦略を軌道に乗せ、あわせて人材の定着も図るため、それぞれ従業員の育成計画を検討していく考えである。

●事業分野が違い取引関係のなかった2 社が、受注量の繁閑較差など、共通の事業課題が多いことから、アドバイザーや金融機関の仲介により連携体を結成し、その解決に取り組んだ。
●自社の現状を把握・分析し、必要売上高を算出するなど、経営改善を十分に意識しつつ、事業課題を解決するための取り組みを進めた。