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連携体名 ミャンマーにおけるプレキャストコンクリート製造販売の
管理者・技能員育成事業連携体
事業管理者名 (株)カシマ製作所
所在地 福岡県飯塚市 構成員 エヌビーエス(株)

■経済の開放・自由化が進み、建設市場も活況を呈するミャンマー
 ミャンマーは、インドシナ半島の西部に位置し、約68万平方キロメートルの面積(日本の約1.8倍)と、5,141万人(2014年9月現在)の人口を有する国である。国民の約9割を仏教徒が占める“仏教国”として知られ、金色のパゴタ(仏塔)や自然に囲まれた仏教遺跡が、国内のいたるところで見られる。
 2011年の民政移管以降、ミャンマーでは経済の開放・自由化が急速に進み、近年ではアジアトップクラスの高い経済成長率を誇る国となっている。建設市場でも、都市部における新たなオフィスビルやホテルの建設、道路や鉄道をはじめとするインフラの整備などに対し、積極的な投資が行われ、活況を呈している。外国企業から有望な投資先として注目されていることも追い風となって、ミャンマーの建設市場は、今後さらに拡大し続けていくものと見られている。

■十分な需要が見込めると判断、経済貢献の思いも強くミャンマー進出を決意
 一方、我が国の建設市場に目を転ずると、東京オリンピックの開催に向けた施設の建設、再開発事業等もあって、現状では需要が伸びている。だが、今後国内の人口は減少していくことは確実であり、その影響により、長期的に見た場合、建設需要は減少していくことが懸念されている。こうした状況に、福岡市飯塚市に所在し、プレキャストコンクリート(PC)の鋼製型枠の設計・製作、鉄筋工事、建築金物製作を手掛ける(株)カシマ製作所の社長は、これからは国内市場だけに頼るのではなく、海外にも市場を求めていくべきだと考えていた。
 東南アジアを中心に、海外への進出先を検討していた同社社長は、顧客企業がミャンマーへ進出したこともあり、市場の可能性を探るべく、数回にわたり現地視察に赴いた。そこで、プレキャストコンクリート製品の品質をはじめ、建設技術が全般的に未熟であることを痛感。十分な需要が見込めると判断とすると同時に、現地の経済に貢献したいとの思いも強め、ミャンマーへの進出を決意した。

■自社の汎用鋼製型枠で製造するPC製品の、現地での委託製造・販売事業を計画
 ミャンマーでの事業展開について、(株)カシマ製作所は、自社の汎用鋼製型枠で製造したプレキャストコンクリート製品(以下「PC製品」)の製造・販売を計画している。具体的には、同社がPC製品型枠の設計、組立、機器販売、スーパーバイザーの現地派遣を行い、製品の製造・販売は現地のパートナー企業に委託する、という事業スキームを予定している。また、現地にPC製品の製造技術、及びサービスなどの知的財産の管理を目的に、現地法人としてコンサルタント会社を設立し、PC製品の規格や製造における、特許・商標等を、現地の大学と共同登録することも検討している。
 以上の事業構想を実現するため、同社は海外でのプラントの設計・管理に精通している福岡市のエヌビーエス(株)と連携。ミャンマーにおける事業基盤を確立するための、必要な準備に取りかかった。

■ミャンマーでの事業展開について、市場調査と事業・法的可能性調査を実施
 ミャンマーにおけるPC製品の製造・販売事業について、支援チームはまず国内と現地において市場調査、事業可能性及び法的可能性調査を実施した。国内ではパートナーの探索、現地大学との共同研究などに関して、及び外貨規制、現地での法人格、就労ビザなどに関して、それぞれ調査を行い、可能性を確認した。
 現地における調査は、国土交通省主催の、ミャンマーへの進出に関する現地訪問団に参加することにより実施した。現地ではジェトロ(日本貿易振興機構)ヤンゴン事務所、日系ゼネコン・コンサルタントの現地支店、ミャンマーの建設会社、不動産デベロッパー、ティワラ工業団地(ミャンマー初の大規模工業団地で、日本の官民が開発を支援した。)、及び現地で開催された建設資材フェア会場などを訪問した。
 現地調査の結果、ミャンマーでは今後鋼製型枠の需要は大きく見込めること、すでに現地に進出しているタイの鋼製型枠メーカーの製品は品質面で劣っており、コスト面の競争力が備われば勝算があることなどが確認された。また、日系大手ゼネコンから、ミャンマーのプレキャストコンクリートメーカーについての情報提供を受けることができた。現地企業とのビジネスマッチングの席では、プレキャストコンクリートに興味を持つ、複数の現地企業と商談を行うことができ、合弁企業を設立したいとの提案もあった。
 以上、国内と現地での調査結果を踏まえて、「事業検討書」の策定を進めた。

■現地で事業の担い手となる、ミャンマー人、管理者・技能者の人材育成計画を策定
 計画中の事業では、現地でPC製品の製造販売を担う、ミャンマー人の管理者・技能者の確保・育成が不可欠となる。それらの人材育成計画の策定にも取り組んだ。技能員については、「外国人技能実習制度」を利用して、(株)カシマ製作所がミャンマー人を採用し、現地での要員を育成することとした。そこで、情報を収集のうえ同制度について学習し、理解を深めた。あわせて現地大学との人材交流連携の仕組みづくりについても検討し、これらを踏まえて今後のミャンマー人受入れに関する方向性を定めた。
 また、海外事業を進めるための組織の整備についても検討し、その体制について素案をとりまとめた。これをもとに、連携体は今後(株)カシマ製作所、エヌビーエス(株)、及び外部人材の役割分担を明確にし、体制の計画をブラッシュアップしていくこととしている。

■現地企業と連携して治水・水路工事に参入、高品質工事のサプライチェーン構築を目指す
 今回策定した事業検討書、人材育成計画を足掛かりに、(株)カシマ製作所は引き続き日系企業、ミャンマー企業を対象とするマーケティング活動、現地企業での鋼製型枠の委託製造と、それにより製造したPC製品の販売などの取り組みを進めていくこととしている。現地法人の設立は平成30年の予定で、現地企業と連携して治水・水路に関連する公共工事に参入し、高品質な水路工事の、企画から施工までのサプライチェーンを構築することを目指している。また、将来はミャンマーを拠点とした、ASEAN諸国や中国への、鋼製型枠の輸出販売も行う予定である。

●海外へ進出するにあたり、想定する事業モデルについて、市場性、事業可能性、法的可能性、及びリスク管理の各方面から検証し、適正な事業モデルを構築するための「検討書」を策定した。
●現地における事業の第一線を担う、ミャンマー人の管理者・技能者を確保育成するため、「外国人技能実習制度」の利用や、現地大学との人材交流連携について検討した。