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連携体名 多能工育成による
作業効率向上を目指す会
事業管理者名 リノ・ハピア(株)
所在地 東京都大田区 構成員 山口化建(有)、北建工業(株)、
(株)ビゼン、椎野塗装工業(株)

■大規模修繕のニーズが高まる反面、その担い手不足と作業効率低下が問題に
 東京都大田区に本社を置くリノ・ハピア(株)は、50年以上にわたり建物の修繕工事を手掛けてきた建設企業である。もともとは建材商社として昭和24年に創業した、70年近い歴史を持つ企業でもある。マンション、アパート、ビルなどの、大規模修繕工事を主力事業としており、施工にあたっては、他企業とも協力・連携して作業工程を分担している。
 近年、老朽化した建物が増加しつつあることから、修繕工事へのニーズは高まりを見せている。ところが、全国の多くの建設企業と同様、リノ・ハピア(株)とその協力企業においても、現場の担い手不足が顕著となっている。そのため、複数の現場で作業が同時に発生するとスケジュール管理に困難が生じ、1日のうち半日しか稼働できない、次の作業までの手待ち時間が長過ぎるなど、作業効率が大幅に落ちる状況がしばしば発生していた。同社の場合、細分化された作業工程を協力企業が分担しているため、そのことも 作業効率の低下にさらに拍車をかけていた。

■技能者の多能工化を図ることで、作業効率向上と今後の対応力強化を目指す
 そうした作業効率低下の問題を解決するため、リノ・ハピア(株)では、技能者の多能工化を考えていた。これまで1つの工程についての技能しか持たなかった人員が、複数の工程に対応できる技能を持つ多能工となれば、作業のスケジュール管理において臨機応変な対応が可能となり、手待ち時間の減少など作業効率の向上が期待できる。また、今後の技術革新、新工法への対応力が備わるという点でも、多能工化に取り組むことは、経営上大きなアドバンテージになると思われる。
 そこで、リノ・ハピア(株)と、同社の協力企業4社は、共に作業効率の向上と、それに伴う成長を実現できるよう、連携体「多能工育成による作業効率向上を目指す会」を結成。即戦力となる多能工を育成する事業に着手した。

■外部から専門家を講師として招聘し、技能士資格取得を目指す研修を実施
 事業は外部から専門家を講師として招聘し、連携体各社の従業員を対象に、座学と実技講習からなる、技能士資格取得のための研修を軸に実施することとした。具体的には、修繕工事と関連の深い樹脂接着剤注入施工技能士(下地補修)、防水施工技能士1級(シーリング防水、ウレタンゴム系塗膜防水、改質アスファルトシートトーチ工法、塩化ビニル系シート防水の4分野)、及び塗装技能士1級(建築塗装)の、6つの分野の技能士資格について、その取得を目指す研修を実施することとした。
 研修の受講者には、全員に6つの分野の技能士資格の、何らかの試験を受験させる。そして、試験結果が合格であれば次回はさらに他の資格の検定試験を受験させ、不合格であれば再度同じ資格の検定試験、または合格可能と思われる別の分野の検定試験を受験させる。そのようにして、段階的に多能工として必要な技能を身に付けさせていくこととした。

■「樹脂接着材注入施工技能士」資格取得を重点目標として事業に取り組む
 事業は、まず6つの分野のうち、①樹脂接着剤注入施工技能士(下地補修)と、防水施工技能士1級のうち②ウレタンゴム系塗膜防水、③改質アスファルトシートトーチ工法、④塩化ビニル系シート防水の、計4分野で技能士資格合格者を輩出することを目標に開始した。だが、②ウレタンゴム系塗膜防水、③改質アスファルトシートトーチ工法の両分野は非常に難易度が高く、ステップアップ支援期間内(平成28年度中)での取り組みが困難であることが判明したため、①樹脂接着剤注入施工技能士(下地補修)の資格取得を重点的な目標と定め、④防水施工技能士1級の塩化ビニル系シート防水についても実施することとした。
 研修は、平成28年10月から平成29年1月にかけて実施した。①樹脂接着剤注入施工技能士(下地補修)資格取得のための研修は3回実施し、12名が受講した。また、④防水施工技能士1級(塩化ビニル系シート防水)資格取得のための研修は、外部の「トライアル技能講習会」に、1名が参加する形で実施した。
 また、平成29年1月から2月にかけて行われた、①樹脂接着剤注入施工技能士(下地補修)の検定試験を12名が、④防水施工技能士1級(塩化ビニル系シート防水)の検定試験を1名が受験した。その結果、前者は4名が、後者は1名が合格した。

■資格取得という目標を設定したことで、従業員の学習意欲も高まる
 業種の違う建設企業同士が連携し、多能工化実現に向け、技能士資格取得のための研修を行ったことで、連携体の各社の従業員たちに、これまで現場で見よう見まねや、伝聞として習得していた技能を、講師による指導で正確な技能として学習し直させることができた。これにより、無駄な手順の減少や、間違いやすい工程をスムーズかつ正確にできるようになってきたなどの効果が現れている。
 また、“資格取得”という目標を設定したことで、従業員の学習意欲が高まり、正確な技能習得を目指す企業風土が各社で醸成されつつある。さらに、従業員が資格を取得することで、多能工化が進み生産性が向上するのみならず、有資格者が存在することによる、会社に対する相対的な評価が向上することも期待される。

■全体的に練習量が不足しがちとなり、その解消が今後の検討課題
 一方、今回の研修日程では、全体的に練習量が不足しがちなことが課題となった。そこで連携体では、今後練習不足の解消のため、研修の開催日数を増やすことや、取引先の材料メーカー等で行っている、「トライアル技能講習会」に参加し練習量を補っていくこと、受講人数を絞り、練習量を確保できるように調整することなどを検討している。また、多能工として取得した資格を、現場でのスキル向上や、営業活動の場において、どのように活用していくかも、重要な検討課題である。
 連携体では、今回実施できなかったウレタンゴム系塗膜防水、改質アスファルトシートトーチ工法の研修も加え、今後も各分野の技術士を輩出していく考えである。具体的には、平成29年度、30年度に、それぞれ延べ10名以上の検定試験合格者を出すことを目標としている。

●マンション等の大規模修繕ニーズは増加しているが人手不足と作業効率低下が問題であり、技能者の多能工化に取り組むことで、それらの問題の解決を図ることとした。
●多能工化の取り組みとして、資格取得を目標とする研修を実施し、このことが従業員のモチベーション向上にもつながった。資格者輩出により、企業に対する評価の向上も期待される。