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連携体名 ホワイトファイル事業体 事業管理者名 (有)ビームスコンストラクション
所在地 兵庫県神戸市 構成員 (一社)日本リノベーション・マネジメント協会

■建設業界に深く根差した慣習が、下請業者を苦しめ発注者利益も毀損
 現在の建設業界では、元請業者が建築主に提示する見積書は、多くの場合、工種ごとに専門工事業者(下請業者)の見積金額に各社各様の利益(回復利益)を加えてまとめたものに、実際よりもかなり少なめの「見せかけの諸経費」が上乗せされている。また、各専門工事業者から提示された実際の見積金額は、発注者に明示しないのが慣例となっている。
 そのため、発注者との請負契約が成立した後に「回復利益」を増やす目的で下請業者への値引きを強要したり、発注者に仕様変更を求めたりする元請業者が後を絶たない。また、発注者から見れば、総価請負契約となっているため、その工事で誰がどのように施工するのか、したのか、その内容が発注額に照らして妥当か否かを具体的に把握できない状況もある。
 このように、業界内に深く根を下ろした、ブラックボックスとも言える仕組みにより、建築生産をめぐって、下請業者が経営上のしわ寄せを受けたり、建築主が発注者利益を毀損されたりする状況が、少なからず発生している。

■建築主に対する透明性が確保され、多重下請構造も回避できる「CM/RM方式」
 そうした中、兵庫県神戸市の、主として木造 戸建て住宅の建築を手掛ける(有)ビームスコ ンストラクションは、10年前より「アットリスクCM方式」を実践している。CMとは、コンストラクション・マネジメントの略称で、コンストラクション・マネジャー(CMr)が、技術的な中立性を保ちつつ発注者の側に立って各種のマネジメント行うものである。
 アットリスクCM方式は、CM方式におけるリスクをCM会社が担保する方式である。オープンブック方式(下請業者、コスト、工法、工期などを明示)とコストプラスフィー契約(元請けの本当の原価と利益)で構成され、建築主に対する透明性が確保でき、作業員の社会保険未加入問題など、様々な弊害が生じやすい多重下請構造も回避できるという長所を備えている。
 欧米ではすでに一般的な建築生産システムとして認知されているアットリスクCM方式は、日本でも国土交通省が多様な契約方式の一つとして活用を提唱している。マンション大規模修繕における「価格開示方式」と、東北の震災復興事業で採用された「復興CM方式」が良く知られており、今後の普及が期待されている。

■中小の建設関連事業者を対象とした、CM/RM方式を理解し実践する場の提供を事業化
 現状、日本の建設業界でアットリスクCM方式を実践している事業体は、圧倒的に少ないが、修繕・改修に特化したCM方式である、リノベーション・マネジメント(RM)方式の普及に取り組む(一社)日本リノベーション・マネジメント協会(以下「RM協会」という)が、アットリスクCM方式の改修版である「価格開示方式」の普及を進めている。そこで、(有)ビームスコンストラクションは、RM協会と連携体を結成。中小建設業者・専門工事業者、小規模設計事務所を対象に、①CM/RM方式の理解を図るセミナーの実施、②セミナーの修了考査に合格した事業者の、優良事業者リスト「ホワイトファイル」への登録、③ホワイトファイルにリストアップされた事業者を建築主、並びに事業者同士が選択し、業務を依頼できるスキームの構築を行い、CM/RM方式を理解し実践する場を提供する事業を開始した。

■セミナーを順次開講し、優良事業者のリストアップを進める
 連携体は、神戸、大阪両地区において「ホワイトファイルセミナー」を順次開講し、平成28年度から30年度まで、各年度それぞれ35名ずつ受講者を迎え、ホワイトファイルに登録された事業者数を、平成29年度に50社、平成30年度に100社とすることを目標に掲げた。また、セミナー受講後の終了考査に合格できず、ホワイトファイルに登録できなかった受講者については、登録が可能となるよう個別にフォローアップ支援を行い、優良事業者の拡充を図ることとした。
 セミナーの開講に先立って、連携体は神戸商工会議所会報への広告掲載、専用ホームページとフェイスブックページの立ち上げ、建築・不動産系資格学校へのパンフレット設置とポスター掲示、神戸、大阪におけるセミナーガイダンスの実施など、多くの手段により事業の周知・広報活動を行った。

■なじみが薄く膨大な知識体系、習得しやすさを念頭にセミナー内容を工夫
 CM/RM方式の知識体系は、日本ではまだなじみが薄く、しかも非常に膨大なものであるため、初心者にとってその習得は容易ではない。そこで連携体ではセミナーを専門工事業者向け、工務店向けに分けた上で、RM協会が行っている、協会認定資格である「認定マンション・リノベーション・マネジャー資格受講コース」が、基礎編として比較的理解しやすいことから、そのカリキュラムの内容をセミナーに取り入れた。また、受講者が自社のコスト構成を明確にでき、そこに企業価値を見出せるよう、大阪府内の大学の協力のもと経営学コースのカリキュラムも作成し、セミナーにおいてそのコースを受講することを、ホワイトファイル登録の最低基準として設定した。なお、大学やCM協会((一社)日本コンストラクション・マネジメント協会)、RM協会に在籍する多くの有識者が、講師やテキストの作成などで、セミナーの実施を支えた。
 平成28年度は、全55講習からなる30日間(週2日)のセミナーを、神戸と大阪でそれぞれ1期、2期と分け、計4回のセミナーを開講し、4回合わせて25名が受講した。大阪の第2期セミナー(平成29年3月~6月)終了後、終了考査に合格した受講者が、ホワイトファイルに登録される予定である。

■初年度に明らかになった問題等を踏まえ、次年度以降についての改善・充実策を検討
 こうしてスタートした「ホワイトファイル事業」だが、初年度の時点で、セミナーの内容が専門工事業者にとっては相対的に高度である、「週2回夕方から開講」というスケジュールへの見直し要望が多い、事業の広報・募集活動を通じ、やはり「回復利益」にこだわる事業者が多いことが感じられるなどの問題が浮上した。
 そこで、連携体ではセミナーの内容を細分化・簡易化し、専門工事業者が理解しやすい内容にする、受講者の負担軽減のため週1回の開講とする、回復利益の根絶こそが、顧客の信頼を高めることへの理解を啓蒙していくなど、問題への対応策を講じることとした。加えて、継続的な学習を支援するスカイプ、e-ラーニング、建築CPDなどの導入も順次行い、内容の改善・充実を図った上で、平成29年度以降の事業を進めていく予定である。

●建築生産システムの透明性確保を軸に、建築主の信頼と発注者利益を高めると同時に、弊害の多い多重下請構造の回避と、中小の建設関連事業者の「優良事業者化(施工力向上)」を目指した。
●セミナーの内容は、初心者の習得しやすさを最優先に検討した。また、初年度に明らかになったセミナー実施上の問題については、直ちに改善策を検討し、次年度以降に実行することとした。