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連携体名 これからの型枠加工を創る会 事業管理者名 (株)中村建設ナカフサ
所在地 兵庫県豊岡市 構成員 (有)真鍋建設

■非常に深刻な型枠職人の不足、機械による自動化で問題解決に取り組む
 型枠工事は、鉄筋コンクリートの建築物を建てる際に必要不可欠な工事だが、現在、その現場を担う型枠職人が非常に少なくなっており、多くの型枠工事業者が深刻な職人不足に直面している。そのため、事業の維持・継続が危ぶまれる状況に追い込まれている型枠工事業者も少なくない。型枠工事業界と行政機関との連携による、職人養成の取り組みも進められているが、まだ十分な成果は上がっておらず、型枠職人の不足はさらに続いていくことが確実である。
 こうした状況の中、兵庫県豊岡市に所在し、型枠工事を主力事業とする(株)中村建設ナカフサは、型枠工事の「下ごしらえ」工程を機械の導入により自動化することで、職人不足による問題の解決を図る取り組みを進めている。

■型枠工事の「下ごしらえ」工程を、CADと自動加工機の導入で省力化
 型枠工事の「下ごしらえ」とは、型枠の一部で、コンクリートに直接接する板である堰 せきいた板を、半製品として加工する作業である。通常、下ごしらえの作業は、加工帳を熟練工が手書きで作成し、その加工帳をもとに職人が手作業で堰板を加工する、人手のかかる工程である。
 そこで(株)中村建設ナカフサは、この工程にCADと堰板自動加工機を導入し、加工帳作成ソフトで作成したCADデータと加工機とのインターフェイスを構築することで、データをもとに加工機が自動で操業する、堰板自動加工システムの開発に着手した。このシステムが完成すれば、下ごしらえ工程に必要な職長・職人の、大幅な削減が可能となり、作業時間の短縮や、加工品質と生産体制の、さらなる安定も実現する。
 システムの根幹部分である、堰板自動加工機の試作・開発は、「平成27年度地域建設産業活性化事業コンサルティング支援」と「平成26年度補正ものづくり・商業・サービス革新補助金」の、2つの公的支援を受けて行われ、その実用化に概ねめどがついた。このことを受けて、開発の取り組みは次のステップへ進むこととなり、(株)中村建設ナカフサは、同社と同じく型枠工事を手掛ける豊岡市の建設企業、(有)真鍋建設と、「これからの型枠加工を創る会」として連携、必要な取り組みを開始した。

■同業他社向けの半製品受託生産事業で、開発したシステムの利用普及に取り組む
 連携体が行う主な取り組みは、堰板自動加工システムの実用化と、それを稼働させるために必要な、機械操作やCADデータの作成ができる人材の育成、システム導入による生産性・収益性向上の効果を高めるため、下ごしらえの作業工程を改善・再構築することなどである。
 また、型枠工事は危険度が高い工事こともあり、一般に、遠方へ長期出張して行うには向かない工事だとされている。だが、堰板自動開発システムを活用すれば、遠方の同業他社が作成したCADデータの送信を受け、それにより型枠の半製品(堰板)を製造し出荷することが可能となる。そこで、業界内でのシステム利用の普及と、それを足掛かりとした販路拡大の仕組みづくりも、連携体の取り組み課題に据えられた。

■システムの活用と普及促進を担う、若手職人らを専門家・指導者として育成
 人材育成については、今後堰板自動加工システムの活用と、本格的な普及促進を担っていく人材づくりに焦点を定めた。そこで、連携体企業の後継者、及び意欲ある若手職人を専門家・指導者として育成することとし、該当者5名に対し、専門指導者育成プログラムによる教育を開始した。プログラムの作成、並びに実施体制の構築にあたっては、地域建設産業活性化支援事業の活性化支援アドバイザー(中小企業診断士)と、加工帳ソフトインターフェイスの開発で連携しているソフト開発企業の協力を得た。
 システムの実用化については、加工機の動作確認、制御システムやインターフェイスの不具合等の修繕・改修・調整を進め、平成28年12月に完了した。また、下ごしらえの作業工程見直しについては、資材の投入方法や仕分け、機械の操作手順、人員配置、廃材処理方法などについて確立を目指した。具体的な取り組みとして、従来作業員の手作業で行ってきた、使用済み型枠の、ベニヤ(堰板の材料)の分別作業に着目。この作業を機械化して、作業員の危険軽減と作業の効率化、及び使用済みベニヤの利用率向上を図ることとし、「ベニヤ出入収納選別装置」の開発に着手した。
 以上の取り組みにより、連携体では現有の人員が2割増えたのと同等の、生産性向上が実現するものと予測している。

■ニーズに応じて集中的な支援が得られる、「成長期待企業」の認定を受ける
 堰板自動加工システムの利用普及と販路拡大については、広告宣伝用のパンフレットを作成したほか、中堅ゼネコンや、県外の同業者とその協力業者、計6社の担当者を招き、自動加工機の実演と、システムの実演を行った。
 さらに、活性化支援アドバイザーの支援のもと、(株)中村建設ナカフサが、(公財)ひょうご産業活性化センターの「成長期待企業」として推薦され、平成28年10月に認定された。この認定制度は、経営の革新や第二創業にチャレンジする意欲の高い中小企業を、その企業のニーズに応じて集中的に支援する目的で行われている。連携体は、今回の「成長期待企業」認定を、(株)中村建設ナカフサの企業ブランド力向上につなげ、そのことも堰板自動加工システム利用の普及と販路拡大を推進する、原動力の一つとしていきたいと考えている。

■既存のリサイクル事業との相乗効果で、期待される建設廃材再資源化への貢献
 (株)中村建設ナカフサは、コンクリート用木製型枠リサイクル事業の認定業者であり、使わなくなったコンクリート用木製型枠を細かく砕き、セメントの製造燃料・原料(燃料として使用後の焼却灰)にリサイクルする事業も手掛けている。このことから、型枠半製品の受託製造事業では、堰板の加工時に発生するベニヤ廃材は、すべて同社の施設において適切にリサイクルされる。したがって、半製品を発注した企業では、人手不足の問題だけでなく、産廃リサイクルの手間からも解放される。
 このように、堰板自動加工システムを利用した型枠半製品の受託事業は、既存のリサイクル事業との相乗効果で、建設廃材の再資源化にも、大きく貢献するものと期待されている。

●これまで手作業に大きく依存していた工程に機械を導入し、省力化を図った。また、機械の導入によって職人に要求される熟練度が下がり、若手職人の、短期間での戦力化が可能となった。
●開発した生産システムを、連携体企業だけでなく、同業他社が広く利用できる受託生産の事業スキームを考案。業界全体の問題解決を図り活性化に貢献することを目指した。