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連携体名 東信建設アカデミー 事業管理者名 (一社)東信建設アカデミー
所在地 長野県立科町 構成員 5社

■専門工事業者5社で社団法人を設立し、地域の建設技能者の資格取得を後押し
 (一社)東信建設アカデミー(以下、「連携体」)は、国土交通省が進めるi-Construction(キーワード解説)による生産性向上、多能工化等を視野に入れながら、地域の建設産業を担う人材を育成することを目的に、長野県東信地方でそれぞれ土木、型枠、鉄筋、左官、とび・土工を手掛ける専門工事業者5社により、平成29年4月に設立された社団法人である。
 東信地方では、地域にある工業高校の「土木科」が「総合学科」に改編されたなど、建設分野について専門的な教育を受けられる機会が以前に比べ少なくなっている。そのため、若手人材が即戦力となりにくく、企業において技能を習得させる必要性が高くなっている。また、中堅・熟練技能者についても、i-Constructionの導入が進む中、ICT(情報通信技術)の活用を軸とした、新たな視点での教育訓練が必要となっている。こうした状況から、連携体では、会員企業5社だけでなく、広く地域の建設企業で働く技能労働者に知識と技能を習得できる場を提供し、資格を取得してもらい、現場の第一線に立ってほしいと考えている。

■地方ゆえの制約やハンディキャップがない、地域ネットワークによる人材育成を目指す
 中小の建設企業が、従業員に必要な知識や技能を習得させるには、既存の専門教育機関を利用するという方法がある。だが、教育機関や資格受験会場の多くは、東京や大阪など所在地が限られている。そのため、東信地方から資格取得のため講習や検定、試験を受けようとすると、遠方への宿泊を伴う出張を余儀なくされ、受講者・受験者を送り出す企業は、現場に数日間欠員が生じる、費用がかかるといった負担を強いられることとなる。また、一定期間教育機関で合宿形式の研修を受けさせようと計画しても、それらの研修は、専門教育機関側で予め年間スケジュールが決められているため、業務の都合によりタイミングが合わず、希望する研修を受講できない場合もある。
 このように、既存の教育機関を利用しての人材育成には、地方に所在する故の不都合や難しさが伴う。そこで、地元での技能労働者の育成に、共同訓練を実施するなど地域のネットワークで取り組み、地理的な事情による時間や費用、スケジュールなどの制約やハンディキャップを克服しようとの発想が生まれ、「東信建設アカデミー」の設立に至ったのである。

■「アカデミー」会員企業の施設を会場に、3種類の技能講習・資格検定を実施
 連携体では、事業領域を土木・建築だけに限定することなく、建設業の各方面に広く対応していく予定だが、優先度が高いものから実施していくこととし、会員企業のニーズを調査した。その結果、事業初年度はまず玉掛け、車両系建設機械、およびドローンについての技能講習、および資格検定の実施に取り組むこととした。そして、これらの講習等は、連携体の会員企業である土木工事業者、(株)小宮山土木(長野県立科町)を会場とし、同社の会議室や設備等を活用して実施された。

■玉掛け、車両系建設機械の講習には、外国人の技能実習生も参加
 玉掛け、車両系建設機械の講習は、(一社)中部労働技能講習センター(長野県飯田市)と提携し、同センターの講師が来て講義を行う、「出張講習」方式により実施した。
 講習には、近年東信地方の建設企業で増加している、ベトナム人技能実習生も多数参加した。玉掛けの講習は、比較的頻繁に行われている講習ではあるが、外国人を対象とした講習となると、通訳の手配や日数の問題で実施は難しい。だが、連携体では、(株)小宮山土木にベトナム人社員が在籍していることから、通訳の手配なしに、ベトナム人技能実習生に対しても講習を実施することができた。
 これらの講習では、いずれも数日間の日程の最後に実技検定を実施。その結果、参加者全員が資格を取得することができた。

■ドローンの技能講習カリキュラムには、高度な活用方法の習得も盛り込む
 ドローンの技能講習については、連携体が(一社)日本UAS産業振興協議会(JUIDA)認定のドローンスクール、「Dアカデミー」の傘下に入り、「Dアカデミー関東長野校」として、同アカデミーから講師の派遣を受け実施することとした。このように、地元で講習と資格認定が受けられる体制を整えた上で、ドローンを安全に飛行させるための知識や法規、および操縦技術を習得させる講習、「ドローンパイロット・安全運航管理者養成コース」を、平成29年7月から翌年3月の間で、計5回実施した。
 各回の講習は座学2日間、実技2日間の、計4日間行われた。ドローンの安全な操縦操作を習得させることを軸にカリキュラムが組まれたが、ドローンの操縦技術の高度な活用方法を習得してもらうため、「実践的にどのように使うのか。」ということも教えた。具体的には、自動航行の設定方法や、ドローンで測量した地形データの3D化、簡単なデータ解析などについての講習を実施した。
 講習には、地域の土木企業、さらに設計コンサルタントからも毎回5名ずつが参加。4日間の講習を修了し、申請手続きをした受講者には、ドローンの飛行許可取得に必要な、JUIDAの「無人航空機操縦技能証明書」が発行された。

■職業能力開発校認定の取得検討や、多能工化の取組み始動などが今後の課題
 各講習を受講し資格を取得した技能者たちは、それぞれの所属企業で有効に活用されはじめている。連携体は、取組みが地域の建設業を支えるマンパワーの底上げに繋がりつつあると、その成果を感じている。
 今後、連携体は事業内容の充実を図るため、地域のニーズに合った講習プログラムの構築や、長野県認定の職業能力開発校となることなど、必要な検討を進めていく予定である。また、会員企業の各社に在籍する職業訓練指導員資格者が相互に技能者を教えることで、多能工化の取組みも本格的に始動させたいと考えている。

  i-Construction
 国土交通省により平成28年度から推進されている、調査・測量から設計・施工・維持管理までの、あらゆるプロセスでICT等を活用して、建設現場の生産性向上を図る取組み。

●各種の技能を身に付け資格が取得できる場を、地域の建設企業のネットワークにより提供。既存の教育機関が利用しにくいという、地方における地理的なハンディキャップの克服に取り組んだ。
●i-Constructionの導入による生産性向上を視野に入れ、ドローンの操縦操作や地形データの3D化、データ解析など、ICTの活用に役立つ講習を実施した。