過疎化、高齢化する地域の中で、土木以外の業務についても丹念にニーズの掘り起こしを行っている一方、リアルタイムで損益が把握できる原価管理ソフトを導入し、日々の損益を現場ごとにしっかりと把握することで、収益改善を実現した岡山県の地域建設業。

1.経営改善の契機:
2008年に9期連続の赤字となり、資金繰りの悪化で2009年1月に国土交通省のアドバイザリー事業に参加したことで、債務超過が発覚。「倒産して自己破産」することも考えたが、地域や社員の生活、そして自分たちの生活を考え、経営に参画し、再建への取り組みを開始した。

2.具体的な取組:

・社員と共にSWOT分析に取り組んだ結果、創業55年の歴史、公共工事を通じて地域に密着していることが自社の強みであると認識。町外にエリアを広げるのではなく、地元に目を向け、町内全域をエリアに仕事をすることにした。
・リアルタイムで日々の損益が把握できる原価管理ソフトを導入。毎日現場ごとの収益を算出し、原価管理を徹底的に行った。
・社員にも経営数値を公表し、権限委譲を進め、社員がやりがいを持てる環境づくりも取り組む。
・過疎化、高齢化が進む地域でのニーズの見直しを行った結果、月1回、2600戸にチラシを新聞折り込みで配布。チラシにはその時々の話題や自社の仕事に関すること、お客様から寄せられた困り事、社員の似顔絵を掲載して親しみやすさをアピール。
・年に一度、自社の敷地で地域の住人の方々に向けたイベントも開催。

3.今後の展望:
・「田を耕してほしい」といったニーズに応えるため、農業生産法人を設立し、耕作放棄地を少なくし、社員の定年後の働く場を確保したいと考えている。
・家回り、墓石の清掃などの事業では、地域の元気な高齢者が手伝ってくれている。今後、地域の方々の働く場を確保することで、コミュニケーションの場にもなる企業づくりを目指す。 

■専門家のアドバイスで経営再建に着手
・土木専門工事会社でエンジニアとして働いていたが、家業を継ぐため、2001年に後継者として帰郷。2008年当時は、日々の資金繰り表もなく、決算書の説明ができない、現場ごとの損益は工事が終わってから、会社の経営数値の把握は決算が終わってからという全く財務管理ができていない状況で、倒産危機に直面していた。外部の専門家のアドバイスを受けながら経営再建に取り組む。

■原価管理で日次損益の把握、生産性向上に取り組む
・原価管理システムを導入。経営再建の過程で社員一人ひとりのコスト意識を高めるため、社員に原価管理とは何かを伝えた。原価管理システムへ日々の出来高と原価を入力して、一日の作業内容と数値を網羅して「工事日報」を作成。また、日々の工事現場ごとの損益管理の徹底と、その結果を受けて月次試算表作成などの日数短縮の実現をはじめ、生産性向上に努めた。

■過疎化地域で新規市場の開拓
・建設業としてのベースが固まりつつある中で、売上高向上を図り、新規の市場を開拓、商圏を拡大。過疎化の進行する地域にあって、社員の顔が見えるようオリコミチラシなどの広報活動を実施し、地域に密着した多様なニーズに対応。過疎化地域における建設業の役割を、土木工事のみと限定的に捉えず、建設サービス業として建設業の持つ技術、機動力を活かして、高齢化による家回りの作業代行など細かなニーズを捉え、価格設定を行った。地元の様々な業種と連携してワンストップで代行。



事業者プロフィール
事業者名 株式会社小坂田建設 ― 地域づくり ―
住所 〒709-3112 岡山県岡山市北区建部町川口1417
TEL 086-722-0257
代表取締役 小坂田 英明
資本金 25,000千円
URL http://www.osakada.co.jp/
業種 土木一式・とび土木
世代交代時社長の年齢 40歳
売上高 182,224千円
公共・民間の比率(完工高ベース) 公共 60%、民間 40%
社員数

13名(技術者 5名、技能者 6名、事務職 2名)
男性11名、女性2名

常用外社員数 -
平均年齢 46.7歳
平均勤続年数 17年
定年退職年齢 65歳