コラム

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ASPを利用した情報共有のススメ 〜 2つの追い風 〜

情報共有ツール導入の前に


ASPを利用した情報共有のススメ 〜 2つの追い風 〜


情報を「確実に守る」「タイムリーに打つ」「素早く走らせる」


求めるセキュリティ


ありがとうという情報共有


大切な情報を守るために


何でもかんでも情報共有?


ASPサービスの利用


クラウドについて


   情報を「確実に守る」「タイムリーに打つ」「素早く走らせる」

1.はじめに
   情報共有システムのASP(Application Service Provider)サービスとは,インターネットを活用することで独自のサーバーを設置する必要なく,関係会社間や利用者全員がいつでもどこでも情報の閲覧・発信・受信ができるサービスです。また,サーバーを管理する特別な管理者が不要で,利用者がそれぞれ専用ソフトを持たなくても利用できる運用性に優れています。

2.情報共有の必要性
   公共事業で取り扱われる情報は,その種類が多岐にわたり,またそのボリュームも膨大なものになります。付け加えてそれらの情報を必要とする関係者が非常に多いこと,その情報が必要となる期間が長いことなども特徴です。一方,現状の業務においては,取り扱う情報の電子化が進んだとはいえ,一般的には紙を用いた情報の共有ということがまだまだ少なくありません。しかしながら,紙の書類や図面などを用いた情報共有では,仕事が進むごとにより広い保管場所が必要となり,新旧の区別の困難さや劣化,紛失などの問題が生じます。

3.品質の向上とコストの削減のために
   仕事における利益の拡大を図るためには,品質の向上とコストの削減を行う必要があります。そのためには,店社や工場,作業所などにおける関係者間での業務状況の把握が常に必要であるといえます。仕事の状況は常に変化しています。そして情報は,すぐに古くなり使えなくなってしまう傾向にあります。日々の「報告」・「連絡」・「相談」は,とても必要な行為だといえます。工場や作業所,設計などの各グループにおけるプロジェクト単位の「報連相」が必要です。 プロジェクトグループ間での情報が正しく伝わらないと,効率を低下させ,大きな損害を招いてしまうかも知れません。品質の向上,コストの削減を導くためには,より円滑な業務の遂行が必要となります。そのためには,関係者間でやりとりする情報を共有・交換し,多種多様な情報を「確実に守り」,「タイムリーに打ち」,「素早く走らせる」必要があります。

4.情報共有システムとは
   現在,関係者間での日常の情報交換として,電話,FAX,電子メールなどが利用されています。その中で電子メールは,多くの人々がすでに日常の業務で利用しています。電子メールは,様々な仕事においても簡単に利用することができ,新たなシステムを導入する必要がありません。しかしながら「必要な情報を必要な相手のすべてに送る」ということから,関係者が複数になった場合の送付情報の整理や,送る情報の最新版の管理には適していないと思います。一方,情報共有システムは,利用する最初の段階ではシステム操作に慣れる必要がありますが,情報共有システムが情報を一元管理してくれることで,最新情報が常に明確化され,さらに,いつでもどこででも関係者間で情報を共有できることによって,仕事の品質の向上や工期の短縮が期待できます。関係者が多い場合や工期が長い場合は,より多くの効果が得られると考えられます。

5.システムの概要
   インターネット接続環境があればすぐに利用できます。操作は簡単で,ネットワークやシステムに関する専門知識は不要です。インターネットブラウザを使用できる方であれば十分に利用できます。

(1)一目瞭然のスケジュール管理が可能
   システム内の更新情報を一覧できます。使用するユーザーが関係しているプロジェクト毎のスケジュールの通知,連絡事項の通知,決裁が必要な文書の通知,サーバーにファイルがアップロードされた連絡の通知が届き,迅速に状況を把握できます。ログインした場合に連絡通知を把握できる機能と,システムに登録したユーザーの電子メールアドレスにもアップロードされた事を知らせる「通知」機能を搭載しています。また,「スケジュール」機能を使用することにより,仕事や行事の予定をカレンダー上に記入ができ,予約確認やプロジェクトメンバー間の日程調整・確認が素早く手軽に行えます。また,ユーザーが複数のプロジェクトに参加していても,プロジェクトを横断してスケジュール表示ができます。サーバー上に保管されたファイルとカレンダー上の予定をリンクさせることにより,必要なファイルの取得を即座に行えます。

(2)見た,見ていないも防げる文書管理
   アップロードしたファイルの格納庫である「ファイルキャビネット」機能は,格納したファイルのファイル名の他に,タイトル,メモ,コメントを記録できます。使い慣れたエクスプローラ風の表示で自由にフォルダ階層を作成できて,誰がいつファイルを読んだかを自動記録します。決裁されたファイルに関しては,書き換えを不可にするためにファイルをロックできます。また同一のファイル名でも,上書きを禁止する履歴保存機能により,最新版の管理が容易です。ウイルス検査は,サーバー側で自動的に行います。

(3)作業項目ごとに進捗管理が明快
   「タスク管理」機能は,簡単明快な工事管理ツールです。現場の進捗に併せてフェーズを設定し,フェーズ毎にタスク(作業項目)を設定して,進捗管理が簡単に行えます。作成された進捗管理表は,関係者間でいつでも閲覧できます。また,ファイルキャビネット(ファイル格納庫)とのファイルリンク(関連付け)を行い整理することにより,必要な書類をいつでも迅速に検索・閲覧・再利用できます。また,工事施工中における受発注者間で取り交わす書類を電子化し,施工プロセスのチェックリスト管理として本機能を利用することにより,書類を提出するためだけの対面性の必要の無い訪問や,膨大なファイルから必要なファイルを検索・確認したりなどの作業がなくなるため,多くの時間や紙の消費を低減することが期待できます。

(4)掲示版で簡易ミーティング
   「掲示版」機能は,プロジェクトメンバー間で共有すべき連絡事項(行事変更予定,工事に関わる伝達・調整事項など)をコメントツリー型で投稿し,掲示する機能です。投稿された掲示文においては,プロジェクトメンバーの既読・未読の状態が自動的に表示されます。ファイルキャビネット(ファイル格納庫)とファイルリンク(関連付け)することで,掲示内容に関係したファイルをすぐに閲覧できます。

(5)ワンデーレスポンス
   「ワンデーレスポンス」機能では,プロジェクト関係者間での指示・報告・連絡・協議・質疑を効率よく的確に共有・統合管理を行えます。案件毎に,発信に関しては「いつ,誰が,誰に,いつまでに,何を」を,返信に関しては「いつ,誰が,回答した」の項目を作成できます。発信内容は,返信されると自動的にロックされ書き換えできなくなります。発信,返信,承認の3項目に対応しています。複数者が関係した返信,承認行為も行えます。例えば,工場の設計・技術・原寸間において原寸作業を行う場合に質疑・回答・誰が・いつ等の履歴を残せます。

6.万全のセキュリティ対策
   利用者のパソコンとASPサーバーとの通信は自動的に暗号化されます。また,セキュリティ万全の施設でサーバーを運用し,専門の技術者がデータを守ります。万一に備えたバックアップシステムにより,預かったデータを大切に保管します。

7.おわりに
   建設投資の大幅な削減,公共事業における談合問題や耐震偽装事件の発覚など建設業界を取り巻く環境が年々厳しくなる中で,情報共有システムを利用する目的は急激に変化してきました。公共工事の実施に当たっては,適切な技術力を有する受注者による施工が求められるため,発注者は受注者の選定に当たり価格のみならず十分な技術力の審査を行うと同時に,施工過程においては適切な監督,検査等を実施しなければならないといえます。
ASPを利用することにより,"やるべきこと"のリスト化が行われ,関係者間でそれを共有することにより,業務プロセスと作業進捗状況を適時に確認できます。また,業務プロセスを適切に審査・評価することにより,情報を単に蓄積するだけでなく,知識と経験として新たな価値の創造が期待できます。改ざん防止機能や時刻歴ならびに改訂履歴管理機能などにより,不正行為に対して抑止力のある,透明性の保たれたシステム運用が可能となります。