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連携体名 ユウ建築連携体 事業管理者名 (株)ユウ建築事務所
所在地 北海道札幌市 構成員 旭建材(株)、(株)ハルキ

■地震に強い木造住宅づくりで、ビジネスチャンスの拡大を目指す
  (株)ユウ建築事務所(本社:札幌市)は、大工も雇用する建設企業である。耐震性、機能性、デザイン性、安全性にこだわった木造住宅を特徴としている。
 阪神・淡路大震災や東日本大震災などにみられるように、近年大きな地震災害がしばしば発生している。同社の代表者は、かねてより住宅の更なる耐震性強化への要望が高まっている状況を真摯に受け止め、的確に応えていく必要性を日頃から痛感していた。
平成27年の企業再編を契機に、同社は地震に強い木造住宅づくりに取り組み、ビジネスチャンスを広げる方針を固めた。
 社内体制についても、新旧従業員の混成組織となっている現況に対し、職場のニーズ把握や現場人材等の育成・確保が課題となっていた。

■品質や性能、生産性を向上させるため、関連業者を巻き込んで事業体制を整備
  地震に強い木造住宅づくりにあたり、同社はこれまで一級建築士事務所、給排水設備業者、屋根工事業者、建材卸業者、製材業者などの関連業者と協力して、地元のプレカット建材を活用する優れた木造住宅づくりに取り組んできた。
 実際には、関連業者が建築側(同社)の意向をそのまま受け入れて納品・施工しているという状況も多い。従って関連業者の持ち味や意見を取り入れることで、プレカット建材をはじめとする部材の品質・性能や、施工における生産性を高める余地が残されていた。
 今後、同社はこれまでの実績を足掛かりに、地震に強い木造住宅づくりを確実にビジネスチャンスにつながるよう、関連業者を巻き込んだ事業体制の整備に取り組むこととした。
 本コンサルティング支援を機に、同社は旭建材(株)(本社:札幌市~建築資材・家具建具資材・住設機器の卸小売販売)、及び(株)ハルキ(本社及び工場:道南の茅部郡森町~製材とプレカット建材の加工販売)の3社からなる連携体を結成するに至った。

■連携体が一丸となり工程管理の改善と、工期短縮を図る取り組みに着手
 連携体は、木造住宅の安全性を高める視点から、構造計算や構造体のチェック、基礎工事、建て方、工事建材の選定、製材工場におけるプレカット建材製作など、住宅建築の一連の工程について、連携体が“三位一体”となって工程管理の改善と、工期の短縮を図る取り組みに着手した。
 これに対し支援チームは、①工程管理の改善による工期短縮化、現場人材の育成に係る事業計画の策定、②スケルトン(構造体)の施工精度を高めるチェック・マニュアル化、③連携企業間の意見交換・協議の場として「生産性向上を図る戦略会議の定期的開催、④職場のモチベーション向上、組織の見直しを含む職場アンケート調査の実施、⑤建築現場の人材育成に関する専門家による研修会の実施、⑥関連情報の収集・分析とそれに基づくアドバイス――について支援を行った。


■連携体企業間の戦略会議の場で、木造住宅の耐震性や工程管理の改善を検討
 まず、「木造住宅建築の工程管理の改善に係る事業計画」は、戦略編と推進編からなる3か年計画として策定した。
 地震に強い、安全な木造住宅づくりに必要なスケルトン(構造体)の構造計算のマニュアル化並びに人材の育成、とりわけスケルトンの施工精度を高めるチェック・マニュアル化については、建築基準法の「4号建築物」の特例制度(キーワード解説)を使用せず、構造計算を行うことにより、木造住宅の安全性を高める内容を計画に盛り込んだ。
 「工程管理の改善を図る戦略会議」は、平成28年8月から平成29年1月にかけて4回開催した。会議では連携体が抱える課題の抽出や、意見交換などを行った。また、支援チームの地域活性化アドバイザーはこの会議の場を活用し、建築業者((株)ユウ建築事務所)、建材卸業者(旭建材(株))、製材工場((株)ハルキ)が、各々の力を存分に発揮できるように、後述のアンケート調査を実施、分析を通じ、連携体各社の経営者に対しても必要な提言を行った。

■現場人材育成のための研修会で、職場の安全管理や自己啓発を実施
  地域活性化アドバイザーは、上記職場アンケート票を「職場で感じていること」と「業務に関する意見等」の2つに区分し、調査票を作成し、連携体各社の従業員に対して実施した。
 職場のモチベーション、木造住宅建築の工程管理、プレカット建材の製造に関する課題について現況分析するとともに、対応策もアドバイスした。
 建築現場の人材育成のための研修会は、支援チームの労働安全コンサルタントを講師に、連携体各社の従業員を対象に2回実施した。1回目は「安全についての進め方」をテーマに安全の考え方、労働安全衛生法の全般、木造住宅建築工事における労働災害の要因と対策、足場のガイドラインを中心とした。
 2回目は失敗学、安心と安全、工場火災事故等「想定外」の事例、「震度7」の地震について、それぞれ講義を行った。これらの研修によって、各社の従業員に安全な職場を作ることの重要性を啓発し、資質の向上を図った。

■建築業者、建材卸業者、製材工場それぞれの、特長と持ち味を活かした協力体制を確立
 今回の取り組みを通じて、建築業者、建材卸業者、製材工場、それぞれの特長と持ち味を活かした協力体制の構築に努めた。
 連携体各社の経営者が、木造住宅建築の抱える工程管理の改善に努めるとともに、職場アンケートの分析結果を真摯に受け止めることで、職場モチベーションの向上等が期待される。

  「4号建築物」の特例制度
 「4号建築物」は、建築基準法第6 条1 項4 号で規定されている。① 2 階建て以下②延べ面積500m2以下③高さ13m以下④軒の高さ9m以下の木造建物を建築する際、建築士が設計したものであれば、建築確認申請の審査を簡略化できるという特例。これにより、必要な申請書類は少なくなり、また審査期間は短くなる。

●地震に強い木造住宅づくりの事業にあたり、これまでの業者間の協力体制を見直し、相互に持ち味を活かし、意見を出し合える“ 三位一体型” の連携体制を構築した。
●連携体の各従業員に対し、「職場アンケート調査」を実施して、職場モチベーションの向上を図るとともに、経営者への提言などにより、生産性の向上支援を行なった。