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連携体名 クリーンエネルギー促進連携体 事業管理者名 (有)中津化学興業
所在地 栃木県市鹿沼市 構成員 (株)オーアンドエー、(株)中津工業

■転機を迎えた太陽光発電の市場、今後の先行きも不透明に
 (有)中津化学興業は、太陽光発電工事の企画、開発、施工を主力事業とする、栃木県鹿沼市の建設企業である。
 これまで、我が国の太陽光発電への需要は堅調に推移してきた。平成28年度における太陽光発電の市場規模は2兆2,733億円と、再生可能エネルギー市場の約7割を占めている。これだけの規模の太陽光発電の市場が形成されることとなったのは、再生可能エネルギーへの関心が高まったことに加え、平成24年7月にスタートした、再生可能エネルギーで発電された電力の固定価格買取制度(FIT)(キーワード解説)によるところが大きい。
 しかし、買取価格の決定方法や、発電システムの認定制度などに様々な問題が生じたことから、平成29年4月から、固定価格買取制度が見直されることとなった。具体的には電力の買取りにあたっての価格引き下げや入札制度の導入、従来の「設備認定」に代わる「事業計画認定」制度の導入などの変更が行われる。このように、太陽光発電の市場は転機を迎えており、今後の先行きが不透明となっている。数年先には、低迷基調に転ずる可能性も懸念されている。

■未活用の住宅地などを斡旋し、住宅と太陽光発電を併設する事業を着想
  太陽光発電市場の、今後の先行きが見通せない理由としては、固定価格買取制度の見直しにより、太陽光発電装置の設置について、これまでのような土地の取得や賃借による方法での投資では、採算ベースに乗りにくいことが挙げられる。
 そこで、(有)中津化学興業が着想したのが、比較的安価な「住宅分譲地の売れ残り地」や「住宅地での空き地」、あるいは「連続する空き家」などの活用である。具体的には、これら未活用の住宅地などを、住宅を取得しようとする顧客に対して斡旋し、その敷地内に太陽光発電装置の設置、及び住宅の建設を行い、売電利益で土地の購入代金等、住宅取得に要した費用の一部を賄ってもらう、という事業モデルである。地方においては、バブル期や、リーマンショック前の好景気時に宅地の開発・造成が活発に行われたため、宅地分譲地の売れ残りや住宅地での空き地、あるいは過疎化による空き家(キーワード解説)などが目立っている。これらを有効に活用することで、これまで手掛けてきた太陽光発電の事業が、より生産性の高いものになると、同社は考えた。

■事業モデルの構築に向け、未活用住宅地の現状把握、事業の可能性・内容を検討
  こうして、(有)中津化学興業は、新たな事業モデルの構築に取り組むこととなった。その取り組みを進めていくにあたっては、栃木県内における未活用住宅地の現状把握、及びそれらに基づいた事業の可能性や具体的な内容の検討などが必要となる。
 これらの作業は分野が広範囲にわたり、専門性も必要とされる。そこで同社は、関連会社で太陽光発電の設置に関わる工事を手掛ける(株)中津工業、及び太陽光発電のメンテナンスを手掛ける(株)オーアンドエーとともに、コンサルティング支援を受けることとなった。

■支援チームが未活用住宅地の調査・分析や、事業可能性の検討などを実施
  今回、コンサルティング支援チームは、①業界及び連携体の現状(3社の業務内容、財務状況、特徴など)把握、②未活用住宅地の調査・分析、③事業可能性の検討、利用者からみた採算性の検討、④事業モデルの作成、⑤今後の事業可能性の方向の、5つの項目について、それぞれ専任の担当者を決めて連携体の支援にあたった。
 このうち、未活用住宅地の調査・分析については、①住宅地であり、かつ住宅建築可能な状態に整備されている、②一区画の土地の敷地面積が250坪(825m2)以上ある、③1坪(3.3m2)あたり単価5.5万円以下、という、3つの条件を満たした物件を、インターネットで検索した。ちなみに、②の条件は、太陽光発電装置設置面積200坪と宅地面積50坪が必要であるとの判断によるものであり、③の条件は、投資採算性の観点から、1坪あたり5.5万円以下の土地でなければ割に合わないとの検討結果によるものである。
 それらをもとに調べたところ、条件に合致する土地は栃木県内全域に分布するが、特に県北の那須地区エリアと県南の足利地区エリアに集中していること、インフラ未整備の場所が多いが、それらの場所も別荘やセカンドハウス、あるいは定年後の居住には問題がないことなどが判明した。また、実際に該当物件の中から、比較的交通アクセスに恵まれた土地を現地視察し、状況を確認した。

■顧客が住宅を取得する際の、売電収入による負担軽減について検討
  事業可能性、利用者からみた採算性については、顧客が住宅を取得する際の、売電収入による負担軽減について検討した。具体的には、①未活用住宅地への住宅建築費を、隣接する太陽光発電装置から得られた売電収入で賄う一般住宅のパターンと、②農家の子女が自らの住宅を確保する際、分与された農地を宅地として住宅を建築し、太陽光発電装置を設置するパターンの2つに分けて、それぞれシミュレーションを行った。
 これにより、住宅建築にかかる総支出のうち、前者については約半分を、後者については約6割を、売電収入で賄えることが判明した。これによって、実際に住宅の建築を検討している顧客が、どのくらいのリスク(負担)であれば、住宅が取得できるかの判断が可能となった。

■連携体と不動産業者とが一体となって、事業を推進できる体制の構築が課題
  今回の取り組みを通じ、太陽光発電事業を、未活用住宅地への住宅建築と結びつけるという、新たな事業モデルの、実現可能性について確認することができた。
 この事業モデルを推進していくための大きなポイントは、不動産業者の理解と連携だと考えられる。そこで、販売促進のアピール先を不動産業者に絞り込み、連携体と一体となって事業の推進に協力してもらえる体制を構築することが、今後の事業展開において、特に重要な課題になるものと思われる。

 固定価格買取制度(FIT)
 太陽光等の再生可能エネルギー普及のため、電力会社が電気を一定期間、固定価格で買取ることを義務づけた制度。平成29年4月に改正され、買取り価格決定方法の見直しや、設備計画や事業計画提出を含む、新しい事業認定基準が設定されることになった。

 空き家
 恒久的、あるいは一時的に誰も住んでいない住宅のことであるが、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に関連して国土交通省が示した指針によれば、1年以上誰も住んでいない家が「空き家」とされる。

●固定価格買取制度の見直しなどにより、先行きが不透明となった太陽光発電事業の継続・発展のために、未活用の住宅地を利用し、住宅と太陽光発電装置を併設する新たな事業モデルを検討した。
●住宅を取得する際の負担軽減について、2つのパターンに分けてシミュレーションを行い、顧客に対してより具体的な判断・対応ができるようにした。