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連携体名 長岡市木材チップ製造連携体 事業管理者名 (株)晴耕舎
所在地 新潟県長岡市 構成員 (有)東山観光

■解体工事から発生する産業廃棄物、処理費用縮減が経営上の切実な課題
 建築物の解体工事では、木材、コンクリート、金属類など、様々な廃材が発生する。それらを産業廃棄物(キーワード解説)として処理するために、解体工事業者は相応の費用を負担しなければならない。建築物の解体工事を主力事業とする、新潟県長岡市の(株)晴耕舎では、大規模建築物の解体工事が多いため、産業廃棄物の処理費用も多額で、その縮減が経営上の切実な課題となっていた。
 産業廃棄物を処理するために(株)晴耕舎が1年間に支出する費用のうち、約半分は木材の処理費用が占めていた。そこで同社は、解体木材をできるだけ有効活用することで、産業廃棄物の処理にかかる多額の費用を圧縮し、利益率の向上を図りたいと考えていた。

■解体木材の処理の依頼先でも、新たな処理方法の検討が必要に
 (株)晴耕舎は、解体木材の処理を、自社と同じく長岡市内にあり、木造家屋の解体工事と解体木材の積替え保管を手掛ける、(有)東山観光に依頼している。積替え保管とは、解体工事業者などから処理費用をもらって産業廃棄物を受け入れて、量がまとまると中間処理施設、または最終処分場に搬入する仕事のことをいう。
  (有)東山観光は、受入れた解体廃材を一時保管した後、新潟県上越市の建設企業が所有する中間処理施設に搬入するという形で積替え保管事業を行ってきた。また、自社が手掛ける工事からも解体木材が出るが、それらは自社の焼却炉で燃やすことで処理してきた。
  ところが、同社の積替え保管事業は、運搬費や人件費の高騰により採算が悪化していた。一方、自社発生分の解体木材の処理についても、焼却炉が大規模修繕を必要とする時期になっていることや、風向きによっては焼却炉からの煙に対し、周辺住民から苦情が出ることもあったため、焼却炉の廃止を含め、どう対応すべきかが課題となっており、積替え保管と木造家屋の解体工事、2つの事業を合わせた解体木材の新たな処理方法の検討が必要とされていた。

■共通の問題を抱えた2社の共同による、解体木材をチップ化し販売する事業を着想
 この2社に限らず、産業廃棄物の処理は、多くの産業において深刻な問題の一つとなっている。これ対して、近年では産業廃棄物を再資源化して活用するなど、問題解消に向けた取り組みがされており、その一つとして、間伐材など木質系の産業廃棄物については、チップ化したものを燃料(木質バイオマス(キーワード解説)燃料)として再利用する方法がある。新潟県内では、既にバイオマス発電所の建設計画が複数あることから、今後、このような燃料の需要が高まっていくことが期待できる。
 そこで、いずれも解体木材の処理について問題を抱える(株)晴耕舎と(有)東山観光は、木材破砕機を共同で購入し、解体木材からチップを製造・販売する事業を立ち上げることが、両社ともに産業廃棄物処理費用の削減につながり、有意義な取り組みになるのではないかと着想した。

■バイオマス発電所の動向等を調査し、解体木材燃料の需要は低調と判明
 解体木材のチップ化による発電用燃料製造販売の、事業としての可能性を調べるため、支援チームはバイオマス発電所の建設動向、発電用燃料の供給状況、及び新潟県内のバイオマス発電所建設計画と燃料調達計画について調査を行った。特に県内の発電所計画については公表情報に基づき、各発電所建設計画の内容、規模、燃料の調達計画、稼働時期等について整理した。また、各発電所の運営主体の実情についても登記情報等に基づき調査した。
 その結果、全国的な動向として、バイオマス発電所の燃料として、かつては解体木材を燃料とする計画が多かったが、防腐剤の使用がネックとなって、最近は間伐材など未利用材や、PKS(パーム椰子殻)を利用する計画にシフトしていることが、関係者からのヒアリングにより判明した。県内で計画中のバイオマス発電所についても、いずれも未利用材を燃料とした稼動を計画しており、解体木材の利用については消極的であることが確認された。

■調査とシミュレーションの結果を踏まえ、現時点での新事業開始は時期尚早と判断
 次に、コスト設定条件と県内の取引価格による損益、及び損益分岐点(キーワード解説)の販売価格についてシミュレーションを行った。
 その結果、解体木材をチップ化し発電所等に無料で引き取ってもらう(販売価格0円)場合、数百万円の営業損失が生じることが判明した。また、損益分岐点販売価格は、1トン当たり6,000円台と算出された。今後、バイオマス発電所の稼働が進めば、解体木材への需要が高まってくる可能性もある。だが、調査とシミュレーションの結果を踏まえると、短期的には需要は少なく、市場環境は厳しいと思われた。
 今回の支援では、共同出資で設立する事業組織の形態を検討し株式会社に決定したことをはじめ、木材破砕機の選定、新会社の定款及び登記申請書等の作成、各種助成金等に係る補助事業の調査、事業計画書案の作成など、具体的な準備にも取り組んだ。だが、最終的には、現時点で新会社を設立し木材チップ製造・販売事業を開始するのは時期尚早だと判断し、当面は事業着手を見送ることを決定した。

■現状での事業化は困難なことを理解し、事業投資による損失発生のリスクを回避
 連携体の2社は、当初は「コストをかけて処理している解体木材を販売することができれば、経営上大きなプラスになるはず」という、漠然とした期待を持っていた。だが、今回のコンサルティング支援を通じ、事業の可能性について具体的な検討を行った結果、現状での事業化は困難であることを理解し、事業投資による損失発生のリスクを回避することができた。
 しかし、解体木材の再資源化は(株)晴耕舎と(有)東山観光に共通する課題であることに変わりは無い。そこで、解体木材処理のコストダウン、及び再資源化ついて、引き続き連携して、実現可能な方策を探求していく予定である。

 産業廃棄物
 産業活動に伴って排出される廃棄物。その処理について、義務者や処分の方法などを規定する「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」が 制定されており、産業廃棄物は事業者が自ら処理することが義務づけられている。

 バイオマス
 生物資源で、エネルギーとして利用できるもの。バイオマスのエネルギー利用の主なものとして、廃食用油を加工したバイオディーゼル燃料(BDF)や、間伐材の木質ペレット化のほか、食品廃棄物や家畜排泄物からのメタン精製などがある。

 損益分岐点
 売上高と費用の額がちょうど等しい、利益0 円の場合の売上高、または販売数量のこと。損益分岐点売上高は、固定費÷{1 -(変動費÷売上高)}となる。

●バイオマス発電は、比較的新しい取り組みであるため、最近の動向を慎重に検討した。その結果、新事業の需要先とするにはまだ不安が多いことが判明し、投資による損失リスクを回避できた。
●新事業の可能性について調査とシミュレーションと同時に、新会社立ち上げに必要な準備を進めた。これにより、今後新たな方向性が定まった際の、基盤を作ることができた。