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連携体名 揖斐郡建設業経営革新チーム 事業管理者名 加藤建設(株)
所在地 岐阜県揖斐郡揖斐町 構成員 (有)KENSHO

■公共土木工事への依存体質から脱却し、事業拡大による組織改編を実施していく
 岐阜県揖(いびがわ)斐川町に本社を置く加藤建設(株)は、将来のビジョン、方向性を踏まえた長期経営計画を作成し、経営基盤をより強固にすることで、事業のさらなる発展を目指そうとしていた。
 同社は林業で創業し、その後、建設業に発展した企業である。林業で培った技術・ノウハウを除草・伐採工事、公共土木工事にも活用し、右肩上がりで事業を拡大させてきた。しかし、公共土木工事の受注が拡大し、主力業務となったことは、会社の成長に寄与した反面、業務量のはん閑の差を大きくし、安定的な経営を難しくする要因ともなっていた。そこで、同社は事業のさらなる発展を目指すにあたり、新事業を展開することで公共土木工事への依存体質から脱却し、事業拡大に伴う組織改編を実施していく必要があると考えていた。

■住宅リフォーム・エクステリア事業に進出、B to C市場への参入を目指す
 加藤建設(株)が構想していた新事業は、具体的には、これまで培ってきた技術・ノウハウを活用し、地元産木材を使った住宅リフォーム、及びエクステリア事業に進出。B to C(キーワード解説)市場への参入を目指すというものである。この構想に向けて、1級建築士2名、建設施工管理技士2名を中途採用するなどの準備を進めており、地元の協力会社である、(有)KENSHOとの連携についても検討していた。
 事務所や工場等の建築工事を中心に事業を行っている(有)KENSHOは、民間工事に関する知識が豊富であり、人材や、現場管理のノウハウも有している。そこで、2社それぞれの強みを活かすために連携を組むことが、新事業を順調に軌道に乗せ、事業のさらなる発展が確実になるものと、加藤建設(株)は期待し、「揖斐郡建設業経営革新チーム」を結成。新事業立ち上げの準備に着手した。加藤建設(株)は長期計画の策定、及びリフォーム、エクステリア事業への取り組みやスケジュールの立案を担当し、(有)KENSHOは接客サービスに関する従業員教育計画の作成、リフォーム、エクステリア事業の社内体制の整備についてのアドバイス、及び施工・監理を担当することとなった。

■一般顧客向けの接客・営業方法や、サービス提供体制の整備が課題
 連携体の新事業は、両社の売上高増加、経営基盤の充実、生産性の向上に寄与することに加え、人員増加に伴う雇用増、投資活動により、地域活性化の一助にもなると思われる。
 ところが、新事業を連携して実施していくにあたり、地元木材産の加工・施工コストが高いことや、両社の事業規模や企業文化が異なること、特に加藤建設(株)においては一般顧客への接客・営業方法、及びサービス提供に関する従業員教育、社内体制が未整備であることなどの課題が浮かび上がってきた。そこで、連携体はこれらの問題を踏まえながら、事業計画の作成、組織及び社内体制の整備をはじめとする、新事業立ち上げのための準備を進めた。

■組織・人事面の強みと弱みを整理、今後10年間の中長期経営計画を立案
 支援チームは、まず加藤建設(株)の副社長(事業承継予定者)、及び各事業部長とのグループディスカッションを行った。その中でSWOT分析を実施し、同社が持つ問題点と課題を抽出し、今後の事業戦略の方向性を確認した。具体的には、同社の河川工事の除草技術を強みとして、岐阜県外への営業店開設などを検討し、営業地域を拡大させていくこととした。
 また、事業計画を達成するための組織体制、及び人事戦略を立案することを提案した。まずは人材の確保・育成に課題があることを明確化し、採用及び教育訓練等の重要性をアドバイスした。つぎに、M&Aにより自社に不足している経営資源を補うことで早期の事業拡大、及び人材確保を目指すことについても提案した。このように、組織・人事面における強みと弱みを整理し、加藤建設(株)の、今後10年間の中長期経営計画を立案した。

■営業スキルを身に付けさせるため、「アフターメンテナンス勉強会」を開催
 支援チームは社内体制の整備について、事業戦略に則った組織・人事体制を構築するため、加藤建設(株)の副社長がリーダーシップを発揮し、会社を率先してけん引していく必要があることを提言した。
 接客サービスに関する従業員教育計画の作成については、施工管理マニュアルの見本を提示し、それをブラッシュアップしてマニュアルを作成するよう提案した。また、連携体の従業員に最低限の営業スキルを身に付けてもらうため、「アフターメンテナンス勉強会」を開催した。加えて足下リフォームや除雪作業、草刈り作業等の現場でOJT形式での研修も行い、営業力の強化を図った。
 なお、連携体両社の事業規模や企業文化が異なることに関連して、受発注業務の情報共有化を図ることとした。支援チームは加藤建設(株)と(有)KENSHOを交えた会議を実施し、受発注業務の情報システム化整備について、意見交換を行った。だが、情報システムに関する考え方の隔たりが大きく、費用負担などを明確化することができなかったため、今回は成案を得ることができなかった。

■人材の確保を中心に、早期に受注増加に対応できる体制の整備が今後の課題
 以上の取り組みを足掛かりとして、連携体は新事業実施体制の構築に取り組み始めている。その中で、(有)KENSHOが民間住宅・リフォーム工事の受注も得意としていることから、そのノウハウを共有することで、営業を展開していく計画を立案中である。これにより、民間工事の受注拡大の可能性をより高めようとしている。
 今後は、人材の確保を中心に、早期に受注増加に対応できる体制を整備することが課題である。また、受注した物件を確実にこなしていくことが必要で、これは、特に民間受注の実績が少ない加藤建設(株)に求められる課題である。

 B to C
 Business to Customer の略で、企業が一般消費者を対象に商取引を行うビジネス形態のこと。かつてはIT 用語として、電子商取引のことだけを指すことが多かったが、現在では電子商取引を全く行っていない会社であっても、B to C という用語が使用されるようになってきている。

●公共土木工事依存の経営体質からの脱却を目指し、民間分野の新業務を展開するため、一般民間顧客を対象とした営業、サービス、接客の各体制について整備を進めた。
●事業拡大の実現に向け、公共土木工事を主力とする建設企業と、民間工事の経験・ノウハウが豊富な建設企業が、互いの強みを共有できる体制づくりに取り組んだ。