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連携体名 知多新事業創出チーム 事業管理者名 (株)ブランディング
所在地 愛知県半田市 構成員 (有)木原建築

■モデルルーム機能を備えた店舗を拠点に、商圏の拡大・顧客の増加を目指す
 (株)ブランディングは、愛知県の半田市を拠点に、ブランドデザイン開発事業を展開する企業で、店舗デザインとそれに伴う内装工事などを手掛けている。それらの事業に加え、平成24年からは、自社で店舗デザイン及び内装工事をしたカフェバー(本社に併設)を営業しており、一般消費者への飲食サービスを行うと同時に、店舗デザイン、及び内装工事のモデルルームとしても活用し成功を収めている。さらに、平成28年12月には半田市内の再開発ビル内にも、2号店として居酒屋をオープンさせている。
 同社は今後、空間デザイン、内装工事、店舗改装に伴う家具・調度品などのリサイクル、不動産取引を一括受注できる体制を構築し、カフェやレストランなどのリノベーション(キーワード解説)事業を拡大することを目指していた。具体的には経済規模の大きい名古屋圏に、現在営業しているカフェバーのようなモデルルーム機能を備えた店舗を増設し、そこを拠点に商圏の拡大や顧客の増加を図りたいと考えていた。

■空間デザインを得意とする会社と工務店が、それぞれの強みを活かして連携
 そうした構想の実現に向け、コンサルティング支援のもと必要な準備を進めていくために、(株)ブランディングと愛知県美浜町に所在する工務店、(有)木原建築による連携体、「知多新事業創出チーム」が結成された。(有)木原建築は、(株)ブランディングと建築デザイン・設計を通じた取引があり、旧知の仲である。そこで、空間デザイン及び内装工事を得意とする(株)ブランディングと、施工実績が多く、技術の高いベテラン大工を多数擁する(有)木原建築が、それぞれ得意分野を活かし、リノベーション事業の拡大に共同で取り組むこととなった。
 事業スキームについては、(株)ブランディングが、モデルルーム機能を備えた自社運営のカフェ兼営業店をPR・商談の場として活用した営業、及び受注を担当し、(有)木原建築が、(株)ブランディングが受注した案件の施工・管理を担当することとした。このように、両社の強みを活かした連携による取り組みは、事業領域を広げ他社との差別化を可能にし、さらに生産性の向上にもつながるものとして期待された。

■経営方針の明確化と事業計画、及び社内体制の確立に取り組む
 連携体の2社がリノベーション案件を獲得していくうえで重要なポイントとなるのは社内体制の整備、及び事業計画の立案である。また、(株)ブランディングについては、建設業許可を取得しておらず、企画やデザイン設計を手掛け施工は外注していたことから、今後の生産性向上のために一般建設業許可、及び宅地建物取引業免許などの取得も必要とされた。
 これらのポイントを踏まえて、コンサルティング支援チームは、主に経営方針の明確化と事業計画、及びリノベーション事業の社内体制の確立について連携体を支援した。許可や免許取得の手続きについては、煩雑かつ専門的であることから、司法書士に支援を依頼することとなった。

■財務分析やSWOT分析などをもとに、他社との差別化戦略を立案
 リノベーション事業の拡大戦略を検討していくにあたり、現在の課題を把握するため、まず(株)ブランディングが現在営業しているカフェバー、「B」の状況を分析した。
 まず、財務分析を行ったところ、Bの売上高に占める人件費の割合が、非常に高いことが判明した。一般に健全な経営を行っている飲食店では、売上高に占める人件費の割合は30~40%の間にあるのに対し、Bではこれを大きく上回り、新店舗開設にあたって、人件費の抑制が特に重要となることが確認された。
 次に、財務分析の結果も踏まえつつ、BのSWOT(強み、弱み、機会、脅威)分析を行った。その結果、強みとしては店舗のデザインが良いことや自社デザイン部門を活用できること、弱みとしては魅力的なメニューがないことが分かり、機会については貸切パーティの引き合いがあること、脅威としては市内に競合店があることが明らかになった。
 これらBの現況についての財務分析とSWOT分析、さらに両社の、直近3期分の決算内容の分析をもとに、新店舗の、他社との差別化戦略を立案することとした。具体的には、管理会計の導入、コンセプトの訴求とファン作り、魅力的なメニュー作り、及び木材を使ったレトロ調な室内空間の設計などを、戦略における主要な取り組みと位置づけた。また、売上・経営計画の策定にあたっては、金融機関等へ提出する計画を基礎に、地に足がついた実現可能性の高い、抜本的な計画(実抜計画)を作成した。

■従業員マネジメントの強化を念頭に、店舗運営マニュアルの作成などに取り組む
 新店舗の従業員マネジメントを強化し、サービスレベルの底上げ・安定化を進めることも、リノベーション事業の拡大に不可欠な取り組みである。支援チームは、現在Bの店舗責任者を、(株)ブランディングのスタッフが本業の片手間で行っている状況に着目。新店舗の開設にあたっては、店舗管理を専属で行う店長を選定・育成することを提案した。さらに、現在の店舗運営マニュアルを改良し、従業員教育体制を加えた、新店舗に適合したマニュアルの作成支援も行った。
 また、支援を進めていく過程で、(株)ブランディングと(有)木原建築との間で、十分な情報共有ができていないことが判明したため、今後事業が円滑に進むよう、2社が定期的に会議を実施することを提案した。

■財務、店舗、販売促進の視点から、実現性の高い事業計画が完成
 以上の取り組みによって、連携体はリノベーション事業の拡大に向け、カフェ兼営業店の設置・運営を軸に経営戦略を立案し、財務、店舗、販売促進の視点から、実現性の高い事業計画を作成することができた。
 今後、独自性のある店舗デザインの営業から受注、施工までの一貫体制を確立していくにあたり、連携体は経営者・従業員が、いかにして実行力を高めるかが重要になると考えている。

 リノベーション
 既存の建物を大規模に改装して、性能の向上や新しい価値の付加を行うこと。用途変更や時代の変化に合わせた機能向上を伴う点で、リフォームと区別されることが多い。

●店舗のデザイン設計を得意とする企業と、施工実績が豊富な工務店との連携により、リノベーションの営業から受注、施工までを一貫で行なえる事業スキームの構築に取り組んだ。
●店舗管理を専属で行う店長の選定・育成など、従業員マネジメントを強化し、サービスレベルの底上げ・安定化を進めることを提案した。