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連携体名 鉄筋製造・施工・メンテナンス連携事業 事業管理者名 吹上鋼材(有)
所在地 三重県伊勢市 構成員 上滝鉄筋(株)

■バブル崩壊以降売上低迷の鉄筋工事業者、状況打開に向けメンテナンス分野へ参入
 三重県伊勢市の吹上鋼材(有)は、昭和44年の設立以来、鉄筋の自社製造・施工を実施してきた。設立当初は建築材料が木材から鉄筋へと転換していく時代であり、公共事業によるインフラの整備も盛んであった。そうした背景から、市場における鉄筋のニーズは非常に高く、平成元年には年商約5億円、従業員数35名の規模まで成長し、最盛期を迎えた。ところが、それから間もなくバブル経済が崩壊。受注量が急速に減少し、以後売上低迷を余儀なくされることとなってしまった。
 そこで、本業の周辺分野への事業領域拡大を図り、それを受注機会の増加につなげようと、建築物の耐震性が社会問題となっていることに着目。耐震工事(キーワード解説)等のメンテナンス分野へ参入した。

■検査、メンテナンスも含めた一貫受注・施工体制の確立を目指し、環境整備に取り組む
 売上低迷打開のためにメンテナンス分野へ参入したことで一定の成果が上がり、吹上鋼材(有)の決算内容も回復傾向に転じていた。そこで、業績回復をより確かなものとするため、同社はさらに鉄筋の製造・施工だけでなく、検査、メンテナンスも含めた、一貫受注ができる体制の確立を目指すこととした。これは、近年インフラ老朽化の進行に伴い、建築物の補修ニーズが高まっていることに着目した構想である。
 構想の実現には、他社から施工の協力を得る必要があり、伊勢市の隣、志摩市に所在する上滝鉄筋(株)がその連携先として選ばれた。上滝鉄筋(株)は、吹上鋼材(有)と同じく鉄筋工事を主力事業としている建設企業であり、吹上鋼材(有)とは、現場施工において互いに協力し合う関係にある。
 吹上鋼材(有)は、鉄筋の製造・施工設備だけでなく検査・メンテナンスに必要な設備と人員もすでに保有しており、長年の実績によるノウハウの蓄積も十分である。しかし、受注から検査、製造、施工、メンテナンスまでの一貫体制を確立するにあたっては、すでにある経営資源やノウハウ、体制の中に非効率化な無駄やロスが潜在している可能性が高く、同業の2社とはいえ、協同で事業に取り組むには、さらなる生産性の向上が求められた。そこで、今回一貫受注ができる体制を確立するため、生産体制の構築や従業員教育、コスト管理等の事業計画を策定し、事業を円滑に進めることができる環境を整備することとなった。

■非効率工程の改善を図ることを主眼とした事業計画の策定が取り組み目標に
 事業の計画性や目指すべき方向性は明確となっており、環境整備の取り組みでは、いかに効率的に運用していくかが重要な課題であった。そこで、事業計画の策定に向けた取り組みを進めていくにあたり、検査、製造、施工、メンテナンスの各工程、及び連携体の2社協同体制における非効率工程の抽出と分析を行い、それらの改善を図ることを主眼とした事業計画を策定することが、目標として据えられた。

■生産工程の課題・問題点と強みを抽出し、それらを踏まえて事業計画を策定
 事業計画策定の準備として、支援チームは、まず連携する両者の経営内容、事業内容、今後の連携の方向性についてのヒアリングを実施した。具体的には、ヒアリングを通じて現状の受注状況、公共事業比率、利益率等を把握。これにより、連携体が一貫受注体制により事業を進めていくうえでの、余力や目標とする売上高、利益率等の設定を行った。
 次に、SWOT分析等により連携体両社の現状を的確に把握、生産工程の課題・問題点と、強みを抽出した。そして、それらを踏まえて、コスト意識の徹底やコスト管理体制の再構築など、非効率な状況を改善するための指針を盛り込んだうえで、鉄筋の製造、検査、施工、メンテナンスまでの対応が可能な、数少ない事業体であることを最大の強みとした、事業計画の策定を実施する方針を決定した。

■社内体制の維持・発展のため、継続的な人員確保対策についても検討
 中長期的な視点では、事業に取り組む連携体両社の、社内体制を維持・発展させるために、人材の安定的確保、及び技術承継が不可欠である。現状、両社では社会保険の整備、個人の資格取得への支援、目標の可視化などの対策を実施している。ただし、これらは体系的ではなく、社外に対してPRする手段もないため、新規人材の確保には繋がっていない。そこで連携体は、事業計画に則した社内の実施体制の整備を進めるとともに、支援チームのアドバイスのもと、継続的な人員確保の対策についても検討を進めた。しかし、現実的には人材を確保することが難しい環境にあるため、有効な人員確保対策の検討については、支援期間内に具体策を得るまでに至らず、引き続いての検討課題となった。今後は、ホームページや動画サイトを有効活用し、自社や仕事内容の魅力を伝え、適切な人員を確保するべく対外的なPR活動を検討していきたいと考えている。

■生産性の向上が図られた一貫体制により、営業数値目標の達成を目指す
 以前は鉄筋の製造、施工、検査、メンテナンスの、それぞれの業務のつながりが薄く、相乗効果が具体的ではなかった。だが、今回綿密な現状把握、課題抽出、SWOT分析などを行い、一貫受注・施工体制の課題及び対策を明確にしたことで、現実に即した事業計画を策定することができた。また、2社の連携体制が強化されたことにより、突発的な受注が発生しても、両社の協力・調整により、臨機応変に対応できるようになったという効果も上がっている。
 検査やメンテナンス業務からの一貫受注・施工体制により生産性が向上され、吹上鋼材(有)は営業利益率20%の安定的な確保など、平成29年度の営業数値目標の達成に向けて、事業計画の実行に取りかかっている。

 耐震工事
 地震で建物が倒壊するのを防ぐための工事のこと。建築物を建てた時点では建築基準法に定められた耐震基準に適合していても、その後の法改正により、建物の耐震性能が法で定められた基準に満たなくなった場合、リフォームなど建築物の増改築を行う際には必ずその時点で適合するようにしなければならない。

●鉄筋の製造、施工だけでなく、検査、メンテナンスといった鉄筋に係る事業の一貫体制を確立し、効率化を図ることで、生産性向上を実現する事業計画の策定に取り組んだ。
●一貫受注ができる体制を維持・発展させるため、人材の安定的確保と、技術承継を図るための対策についても検討した。