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連携体名 空き家対策ネットワーク 事業管理者名 (株)池内工務店
所在地 兵庫県明石市 構成員 神姫警備保障(株)

■深刻化しつつある空き家問題、工務店がその対策を事業化
 近年、少子高齢化や中古住宅への需要の減少などにともない、空き家(キーワード解説)問題が深刻化しつつある。住宅・土地統計調査(総務省統計局)によると、平成25年時点の、全国の住宅総数に空き家が占める割合(空き家率)は13.5%で、平成5年の9.8%と比べ20年間で3.7ポイント増加している。このような空き家の増加は、老朽化による倒壊、景観の悪化、犯罪の誘発など、周囲に悪影響を及ぼす大きな懸念材料として、全国的に憂慮されている。
 (株)池内工務店が営業拠点を置く、兵庫県明石市、神戸市も例外ではなく、最近は老朽化した木造戸建住宅やアパートの空き家が目立つようになっており、住環境の悪化や防犯上の不安が問題となっている。また、両市においては、条例により空き家の適正管理が所有者に義務づけられているため、放置状態の空き家を抱えることが、その所有者にとっても大きなリスクとなっていた。
 こうした背景から、同社は “空き家対策”をテーマに、老朽化した空き家を解体撤去のうえ跡地をコインパーキングとして再利用することや、マンションや戸建ての中古物件をリフォーム・リニューアルして販売・仲介するなどの事業に取り組んでいた。

■担い手の高齢化と不足に直面し、十分整わない空き家対策事業の体制 
 ところが、建設企業は従業員の高齢化や人材不足という課題を抱えており、(株)池内工務店においても、短期間のうちに解体工事やリフォーム・リニューアル工事を実施するなど、空き家対策事業を十分に推進する体制を整備する必要があった。
 しかしながら、空き家対策への積極的な取り組みは、地域の環境保全や活性化に貢献できるとともに、社会的にも有意義な事業であり、さらには建設企業にとっても、潜在的に存在する需要の掘り起こしが期待できる。
 そこで事業の強化・拡充に向けて「空き家巡回見守りサービス」の提供と、コインパーキングの管理を行っている、兵庫県姫路市の神姫警備保障(株)と連携を組み、「空き家対策ネットワーク」として体制の整備をすることとした。

■担い手確保・育成の具体策を、地元教育機関との連携を軸に検討
 前述の通り、空き家対策事業のために十分な体制を整えるには、人材確保が重要な要素となる。したがって、事業体制の整備にあたっては、担い手を安定的に確保・育成できる仕組みを確立し、将来に向けて対応力を高めることが、最も重要な取り組みとなる。
 連携体の事業エリアでは、姫路市の兵庫県立ものづくり大学校(以下、ものづくり大学校)、明石市の明石工業高等専門学校(以下、明石高専)の2校が、建設関連の職業教育・訓練を行っている。このことに着目し、人材確保につなげるべく、インターンシップの受け入れなど、地元の教育機関と連携する機会の活用を軸として、具体策を検討することとした。

■建設への就職について、地元教育機関の一般的な状況とニーズを調査
 まず、前述の2校の就職指導部を訪問し、建設業への就職の現状とニーズについてヒアリングを行った。
 ものづくり大学校では、①地元企業への就職者が多く、就職率は例年ほぼ100%である、②手に職をつけて将来の独立を目指す学生が少なくなった、③コミュニケーション力が評価されることが多い、④企業には長い目で教育を行って欲しいといった意見の聞き取りができた。
  一方、明石高専では、①就職先としては、大手ゼネコン、公務員、都市部の中堅企業が多いこと。また、大学進学者も多く全体の70%にのぼること、②インターンシップと就職企業が一致することは少ない、③インターンシップ先を学校が用意することもあるが、基本的には生徒に自分で見つけてくるように指導しているといった話が聞けた。

■状況・ニーズ調査の結果を参考に、インターンシップの受け入れ
 これらの調査結果を参考に、実際に現場の見学や業務の体験を通じて建設業の魅力をじかに感じてもらいたいとの考えのもと、ものづくり大学校から2名、明石高専から1名の計3名を、(株)池内工務店がインターンシップとして受け入れた。
 インターンシップの学生には、地元中学校のトイレ改修工事の現場における、品質、安全管理、書類作成などに取り組ませた。現場担当者が作業内容を説明の上、安全にも十分配慮しつつ実体験の場も与え、業務についての理解を深めてもらった。その結果、参加した学生のうち、ものづくり大学校の2名が、平成29年4月に(株)池内工務店に入社する運びとなった。

■地元の教育機関との関係が強化され、安定的な担い手確保に向け大きく前進
 インターンシップには従来から取り組んでいたが、今回ヒアリングをきっかけに地元の教育機関の実情や希望を再確認でき、従来にも増して今後の担い手の確保を進めるきっかけとなった。
 今後は、地域における事業の必要性についても再考し、情報の収集・発信に努めて行きたいと考えている。既に、神姫警備保障(株)から(株)池内工務店への空き家についての情報提供を可能とするシステムを構築したことや、顧客へのリフォーム資金等の融資元となる、地域金融機関からこの取り組みについての賛同を得るなど、この事業は着実に進展を見せている。
 連携体は引き続き、空き家の解体撤去からその活用までの一連の事業の強化・拡充を図るとともに、ワンストップで対応できるサービス体制を確立すべく、担い手の確保と需要開拓に注力していく考えである。

 空き家
 恒久的、あるいは一時的に誰も住んでいない住宅のことであるが、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に関連して国土交通省が示した指針によれば、1年以上誰も住んでいない家が「空き家」とされる。

●社会問題化している空き家対策をテーマに新たな需要分野を開拓するため、新たな現場の担い手の確保を中心に、事業体制の整備に取り組んだ。
●新規事業の担い手を確保する手段の一つとして、地元の教育機関の状況・ニーズを調査し、その結果をインターンシップの受け入れや採用実務の参考にするなど、人材確保のため指針として活用した。