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連携体名 富士・髙橋共同企業体 事業管理者名 (有)富士建設
所在地 兵庫県美方郡新温泉町 構成員 髙橋瓦店(有)

■地域の過疎化と高齢化が進み、担い手が活躍できる場面の整備が課題に
 兵庫県の北部、日本海に面した美方郡新温泉町は、「過疎地域」に指定されており、平成17年から27年までの10年間で、若年層を中心に人口が15. 2%も減少している。(有)富士建設は、この町で一般土木工事と上下水道工事を手掛けている建設企業であるが、地域の過疎化と高齢化が進み、働き手が減りつつある状況に、不安を感じていた。
 そこで、この状況を打破し、建設事業を維持・継続していくためには、若い労働者が活躍できる環境を整備し、技能や技術を受け継いで貰うことが大切であると考えた。それらを実現するために、同社は土木建設工事以外の新事業の立ち上げを計画し、新規入職者の確保と併せて、新たな収益の確保、従業員数の維持についても検討することとした。

■土木建設工事で培った技能、技術を活かし、社会問題を解決する事業の立ち上げを決意
 土木建設工事以外の新たな事業として、(有)富士建設は、平成23年から介護事業に参入し、新温泉町内にあるグループホームの企画・運営・コンサルティング事業を行っている。そこで、これまでに培ってきた介護事業における顧客との関係性と、土木建設工事の技能・技術を活かして、地域への貢献度が高い事業を立ち上げるための準備にとりかかった。これらの新事業を足掛かりに地域の顧客の信頼を強化することで、本業である土木建設工事業の維持・拡大を図り、新たな担い手の確保・育成につなげたいと、同社は考えていた。
 新事業として計画されたのは、「空き家みまもりサービス」、「耕作放棄地の維持管理サービス」、「お墓みまもりサービス」、「独居高齢者みまもりサービス」の4つである(事業名は全て仮称)。いずれも、土木建設工事で培ってきた技能・技術を活かしながら、空き家(キーワード解説)や耕作放棄地の増加など、過疎化、高齢化の進行により、地方が直面している社会問題の解決を図る事業と言える。そのことから同社は今後のニーズの高まりを確信し、自走式草刈機、ドローン、高所作業車など、新たな事業に必要な設備や資機材の導入を進めていった。

■新たな事業の展開に向けて、ビジネスモデルの具体化などに取り組む
 しかし、4つの事業は、まだ認知度が低く、地域の潜在顧客にアピールし、浸透を図っていく必要があった
 そこで同社は、新たな事業の展開に向けて取り組むべき行動計画を立案・実行し、事業の実現性を高めるため、新温泉町内に所在する協力企業であり、「空き家みまもりサービス」などで、主に施工面を担当する予定の髙橋瓦店(有)とともに、コンサルティング支援を受けることとなった。そして、ビジネスモデルの具体化、事業戦略の策定、及びアクションプランの作成などに取り組んだ。

■モニター企画で計画中の事業を試行実施、その結果などから事業の絞り込みを決定
 新たな事業のビジネスモデルを具体化するため、まず、計画中の4つの事業を、モニターを募集のうえ低価格で試行実施し、利用者の感想を聞いた。その結果、草取りや掃除、補修など、現在他業者も行っているサービスは、既存のものと同じ内容で提供するのでは価格が低くなること、「家管理」や「墓管理」などの新規性の高いサービスと一体的に提案することで付加価値をつけられる、といった傾向が明らかになった。
 これらのモニターの感想、及び市場調査の結果等を踏まえ、支援チームは(有)富士建設の既存の事業(土木建設工事業・介護事業)と、計画中の4つの事業との関連性や、それぞれのポジションを確認するとともに、新たな事業の優先順位について検討した。その結果、比較的取り組みやすいこと、既存の事業との負荷バランスが意識できること、主要顧客へのアプローチに集中できることなどから、当面は4つの事業のうち、農家をターゲットとした農耕地(耕作放棄地)管理サービスと、一般顧客をターゲットにした墓管理(墓掃除の代行)サービスの2つに絞り込み、展開していくことを決めた。

■農耕地管理サービスと墓管理サービス、プロモーションの方法をそれぞれ検討
 次に、絞り込んだ2つの事業について、認知度向上のための戦略と、具体的なプロモーションの方法を検討した。農耕地管理サービスについては、高齢化の進行で、農家における農作業負荷の軽減が社会的な問題となっていることから、その市場を掘り起し、受注に結び付ける戦略をとることとした。そこで、除草サービスなど、農家向けのサービス開始をうたったチラシを作成し、農家ルートに訴求するプランを立て、実行した。農協へのアプローチはもちろんのこと、(有)富士建設の社長が持つ人的ネットワークも活用し、地域的なプロモーションを展開した。
 墓管理サービスについては、新温泉町に墓を持っていて、遠方に居住している人が主な顧客となることから、ターゲットへのアプローチには、インターネットを活用することとした。具体的には、ホームページでの墓管理サービスの内容と問合わせ先の発信、地域的な広告が打てるSNS(Facebook)ページの立ち上げ、ドローンによる空撮動画の動画投稿サイト(YouTube)への掲載、及びSNSと動画投稿サイトの連動により、プロモーションを進めていく戦略を打ち出した。連携体にはWeb活用についての、十分なノウハウがなかったため、地元の商工会のホームページ作成セミナーに参加するなどして、必要な知識の習得に取り組んだ。その結果、簡易なものではあるがひとまずホームページを立ち上げることができ、独自にWebでのプロモーションを展開していくことが可能となった。

■多くの顧客の認知を高めることと、既存事業との相乗効果検討などが今後の課題
 こうして、新事業の展開に向けての環境が整ったが、事業成果の獲得は、連携体の今後の活動にかかっている。今後は、現在実施しているプロモーションの結果を都度確認し、その施策の改善を繰り返しながらより多くの顧客の認知を高めることと、既存の土木建設工事業、及び介護事業との相乗効果等を把握・検討することが、重要な取り組み課題になっていくと思われる。

 空き家
 恒久的、あるいは一時的に誰も住んでいない住宅のことであるが、「空家等対策の推進に関する特別措置法」に関連して国土交通省が示した指針によれば、1年以上誰も住んでいない家が「空き家」とされる。

●過疎化と高齢化が進む地域において、今後若い人材が活躍できる環境を整え、現在の雇用の維持を図るという観点から、新たな事業を立ち上げる準備に取り組んだ。
●モニター企画として計画中の事業を試行実施し、利用者の感想を聞いた。その分析結果を踏まえて計画していた4 つの事業の展開プロセスを整理し、 2 つの事業に絞って展開することを決めた。