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連携体名 耐震建築用基礎ボルト工事システムの
全国展開事業
事業管理者名 有限責任事業組合Dスルー
所在地 愛知県弥富市 構成員 4社

■柱脚アンカー工事の省力化と、工期短縮を図る「Dスルー工法」
 「Dスルー工法」は、柱脚アンカー工事において、アンカーボルト(キーワード解説)の直下に丸鋼を使用したシンプルな架台を設けることで、鉄筋の干渉を回避し、コンクリート流入性を高めたアンカーボルト据え付けの特許工法である。
 特殊カプラーの使用により上下水平レベルの調整が簡単・効果的に行えること、アンカーボルト直下であれば、どの位置にも脚部の移動が可能であることや、段差のある場所でもフレキシブルに対応できることが、Dスルー工法の主な特徴である。また、新設の鉄骨の耐震工事(キーワード解説)におけるアンカーフレームの設置は、アングル架台を現場で組み立て、施工することが一般的であるが、Dスルー工法では、予め工場で組み立てた直下型丸鋼架台(Dスルー架台)を現場に搬入する。これにより施工の省力化、工期の短縮が図れることも特徴となっている。

■競合する類似技術の開発が進み、差別化のための取り組みが必要と判断
 従来の柱脚アンカー工事は、それぞれの現場で様々な方法で施工が行われており、一部ではその架台と基礎鉄筋との干渉によるトラブルが生じ、上部の鉄骨工事にまで影響を及ぼすこともあった。これに対し、Dスルー工法は、「Dスルー施工連絡会」のメンバー企業が一貫責任施工を行うため、そうしたトラブルが発生する心配はない。
 「Dスルー施工連絡会」は、Dスルー工法の普及と顧客サービスの向上を図るため、その施工を手掛ける全国の鉄骨柱脚基礎施工業者からなる組織である。同連絡会は柱脚取付けの精度を重視し、施工業者に対する品質管理教育を徹底することで、部材供給から設置完了受渡に至るまで、能力の格差なく、全国に均一の施工品質を提供できる努力をしている。
 だが、柱脚アンカー工事においては、Dスルー工法と競合する類似技術の開発も進んでいる。そうした状況を背景に、Dスルー施工連絡会の主要メンバー4社で組織する連携体、「有限責任事業組合Dスルー」は、類似技術との差別化を図るため、さらなる取り組みが必要だと判断し、その実行に取りかかった。

■高度な人材を育成する施工講習会の実施と、製品のモデルチェンジ・コストダウンを計画
 連携体は、顧客からの要望である、コスト削減と施工時間の短縮に取り組むことが、類似工法との差別化を図るカギになると考えた。そして、その考えに基づき、「施工講習会の実施」、「製品のモデルチェンジ及びコストダウンの」、2つの事業を計画した。
 施工講習会は、Dスルー工法を施工する企業が抱える職人を対象に、従前より行ってきた取り組みであるが、今回の事業では、さらに高度な管理・監督が行える人材の育成を目的に実施することとした。また、製品のモデルチェンジ及びコストダウンについては、製造原価の低減や現場での施工性向上、運搬の効率化を図ることなどを目的に、施工に用いる製品の改良に取り組むこととした。

■わかりやすいテキストや実践的な講義など、従来の講習会パッケージを見直し
 今回の事業では、これまで行ってきた施工講習会について、その効果や問題点を検証し、それを踏まえて、講習会パッケージ(座学と、デモ用キットを使用した2人1組での実技講習)内容の見直しと充実を図ることとした。
 まず取り組んだのは、新たな講習用テキストの作成である。今回の事業の目的や、事業に取り組むこととなった経緯から始まり、アンカーボルトやアンカーフレームなどの部材が持つ役割などについて、わかりやすい解説を盛り込んだ内容とした。また、連携体メンバーに所属する人材が講師を務める、講義の進め方についても工夫を加えた。現場で発生が想定される事象とそれへの対処方法や、これまでにDスルー施工連絡会の企業が実際に施工した、大規模な現場や困難な現場におけるエピソードを盛り込むなど、講習を受講する職人に、強い興味と関心をもって聞いてもらえるようにした。
 平成29年2月、大阪府内で開催した施工講習会が、新たなパッケージによる実施の皮切りとなった。連携体では、引き続き年間2~3回程度をめどに、Dスルー施工連絡会メンバー企業の要請や状況に応じ、各地で施工講習会を実施していく予定である。

■コンパクト化・軽量化を軸に製品を改良、施工性向上とコスト削減の実現が間近に
 製品のモデルチェンジ及びコストダウンについては、コンパクト化・軽量化を軸に、アンカーフレームを構成する製品(部材)の改良を行った。連携体メンバーは、3回の会議を行い改良製品の仕様を決定。それに基づいて、連携体内において試作と実験を進めた。
 その結果、アンカーボルト、カプラー、脚部(Dスルー架台)について、それぞれ直径を2割小さくした製品の開発に成功した。この成果をもとに、連携体では引き続き量産体制の確立に向けた準備を進めている。これにより、アンカーフレーム設置工事における施工性の向上や、製造原価及び運搬コストの低減など、事業目標の実現が間近となっている。

■基礎工事業務の範囲を拡大するため、人材の多能工化が今後の課題
 連携体では、今回の事業を足掛かりに、基礎工事業務の、範囲拡大にも取り組んでいきたいと考えている。
 柱脚アンカー工事において、鉄骨柱脚基礎施工業者が担う主な役割は、アンカーフレームの設置とその位置修正であるが、いずれも単発的な作業であり、一つの現場に継続的な関わりを持つことがない。そのため、工事の受注状況によっては、職人が遊休化してしまうこともある。そこで、連携体では施工講習会のパッケージの中に、今後「コンクリート打設・建て方埋戻し」、「仕上げモルタル充填」、「アンカーボルトへの張力導入」など、通常は鉄筋工などが行う、アンカーフレーム設置の前後工程を受注できるよう、それらの作業も行える、多能工の育成プログラムを導入していく予定である。一部については、すでに具体的な取り組みを始めている。

 アンカーボルト
 鉄骨構造の骨組を鉄筋コンクリート造の基礎に定着させるため、基礎の中に、予めそのねじ部以外の部分を埋め込んだボルト。

 耐震工事
 地震で建物が倒壊するのを防ぐための工事のこと。建築物を建てた時点では建築基準法に定められた耐震基準に適合していても、その後の法改正により、建物の耐震性能が法で定められた基準に満たなくなった場合、リフォームなど建築物の増改築を行う際には必ずその時点で適合するようにしなければならない。

●競合する類似技術の開発が進んでいることから、市場における優位性を確保する必要があると感じたことを動機に、より高度な技術を持つ施工人材の育成と、製品の改良に取り組んだ。
●人材育成の取り組みにおいては、これまでの実績を踏まえ、教材や講習内容の見直しを図った。また、業務分野の拡大を見据え、今後は多能工育成の取り組みも進める。