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連携体名 RISプロジェクト 事業管理者名 (株)煌石
所在地 兵庫県朝来市 構成員 (株)ワールドコンストラクション、(株)尾崎建設

■砕石製造時に発生する汚泥をリサイクル、産廃を有効活用し処分費用の問題も解決
 (株)煌石(こうせき)は、兵庫県朝来(あさご)市の建設企業、(株)ワールドコンストラクションの資材供給部門として、平成25年3月に発足した企業であり、砕石の製造・販売を主力事業としている。
 同社の砕石プラントでは、製造工程で水を用いることから、その副産物として、砕石の微粉末と水が混ざった大量の汚泥が発生する。この汚泥は産業廃棄物(キーワード解説)であり、廃棄物処理法に定められた基準を遵守して処分しなければならず、そのための費用もかかる。
 汚泥処分のための費用負担は、それを排出する企業にとって社会的責務とは言え、収益性の向上を目指す上で、大きなネックとなることも事実である。そのため(株)煌石は、砕石の製造に伴い発生する汚泥を産業廃棄物とせず、有効利用できる資源としてリサイクルする方法を、会社発足直後から模索していた。そして、親会社である(株)ワールドコンストラクションとの共同で、汚泥を処理、加工した改良土、「RIS(Recycle Improved Soil)」を開発した。

■汚泥をリサイクルした改良土「RIS」その普及に向け需要創出の取り組みが課題に
 RISは、造成工事や基礎地盤工事において、盛土材や埋め戻し材として利用される。このことは、産業廃棄物の有効活用と同時に、施工コストの削減にも貢献するものとして期待される。既にRISを用いた工事は、平成26年12月から自社の実験施工も含め、兵庫県内各地の公共工事、民間工事において、徐々に施工実積が重ねられつつある。
 だが、RISはもともと産業廃棄物であるため、そのイメージのみが強調されて、発注者によっては工事への使用が敬遠される可能性もある。また、(株)煌石は後発の建設企業であることから、市場での競争において劣勢に立たされている。そうした背景もあって、今後RISを普及させていくために、その品質の安定化・向上・コストダウンの実現と、RISを用いた工事の生産性向上、施工体制確立などに取り組み、需要を創出していくことが必要となっていた。

■建設業の地産地消とゼロエミッション、2つの大きな時代背景に挑戦
 そこで(株)煌石は、同社と親会社である(株)ワールドコンストラクション、及び土木工事のほか地質調査業も手掛ける朝来市の建設企業、(株)尾崎建設の3社からなる連携体、「RISプロジェクト」を結成。建設資材供給業、建設業、地質調査業と、3社それぞれの得意分野を活かし、RISの普及と需要創出を図る事業を進めていくこととした。
 本事業は、建設業の「地産、地消(自社製造、自社施工)」と「ゼロエミッション」という大きな時代背景に挑戦し、内部的には産廃処分費の抑制による経済効果を狙った事業である。その具体的な取り組みとして、連携体が行うのは、量産体制の確立と機械設備の充実、人材の確保及び育成、施工実績の累加、各種試験及び検査による信頼性強化などである。また、信頼性が担保され、公的な事業への参入に一定の効果が期待できることから、NETIS登録も目標に据えた。

■技術研修を兼ねた人事交流も図る形で、量産体制の確立や人材育成に取り組む
 事業は、連携企業間の、技術研修を兼ねた人事交流も図る形で進められた。(株)煌石は、主としてRISの製造を担当したが、自らも地盤改良分野で建設業に本格参入することを目指し、(株)ワールドコンストラクションとの技術提携を通じて施工技術を習得した。施工内容の充実を図るため、(株)尾崎建設からも、品質管理のノウハウを習得している。
 (株)ワールドコンストラクションは、主として試行的造成工事等の現場施工を担当し、施工実績を重ねながら、管理事業者(株)煌石の社員に技術、及び機械操作等のノウハウを教授し、新技術の継承と人材育成に貢献した。
 (株)尾崎建設は、社内に2名の技術士(建設部門)を擁することから、主としてRISを用いた造成現場において各種の試験、計量を行い、「土質性状の安定、強度、施工性等」のチェックなどの品質管理を担当して、新技術の信頼性を補完した。同時に(株)煌石の社員に品質管理等のノウハウを教授し、人材育成に貢献した。
 また、技術士事務所、生コンプラント、水質検査機関など、外部機関5社とも連携し、人材育成と信頼性の担保を図った。

■技術士招請による学習会や現場研修を実施、施工管理者・品質管理者・設計担当者を育成
 量産体制の確立と機械設備の充実については、RIS製造ラインの見直し、プラント内環境の整備や、改良機械の修繕などを行った。
 人材の確保及び育成については、(株)煌石の社員を対象に、RISの製造とそれを用いた造成工事を行う施工管理者、地質調査等を行う品質管理者、RIS製造時において成分の配合設計を行う、設計担当者の育成に取り組んだ。施工管理者の育成においては、技術士を招請しての学習会を3回実施し、また、設計担当者の育成においては、2名を生コンプラントに派遣して、コンクリート主任技師による現場研修を3回実施した。

■各種試験・検査により安全性を確認、農地整備事業など適用範囲の拡大に期待
 各種試験及び検査による信頼性強化については、遮水性を検証する実験、地耐力を検証する圧縮試験、浸透水の安全性を検証する水質検査などを行った。その結果、水田基盤整備における漏水防止材としての効果があることや、埋立て後の浸透水が農業用水として安全であることなどが、あらためて確認された。これによって、農地整備事業など、RISの適用範囲の、さらなる拡大が期待される。なお、NETIS登録については、技術の新規性が認められず、平成28年度中の登録はできなかったが、あらためて汚泥の有効利用による経済効果と遮水性等の特質等を押し出して、再度申請を行っている。
 今後、連携体は(株)煌石の、地盤改良の専門業者としての地位を確立し、RISによる地盤改良が設計段階で採用されることを目標に掲げ、そのための取り組みを強化していく予定である。

 産業廃棄物
 産業活動に伴って排出される廃棄物。その処理について、義務者や処分の方法などを規定する「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」が 制定されており、産業廃棄物は事業者が自ら処理することが義務づけられている。

●建設コストの低減、生産性の向上に貢献する産廃リサイクル資材の普及を目指すにあたり、その新規性に鑑み、各種試験及び検査による安全性の確認など、信頼性の確保・証明を重視した。
●連携体内で、技術研修を兼ねた人事交流も図る形で事業に取り組んだ。このことは、深刻な人材不足にとって、問題解決のヒントになる取り組みとして注目される。