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連携体名 BIM活用による施工連携手法研究会 事業管理者名 下岸建設(株)
所在地 広島県広島市 構成員 日成プラント(株)

■工程の各段階で情報が分断されると、工事の手戻りが発生しやすく生産性が低下
 建設工事は、元請業者、専門工事業者、協力会社など、多くの事業者が関与することで成り立っている。そのため、企画・設計から竣工に至るまで、一連の工程をスムーズに進行させるためには、事業者間における情報共有と合意形成が、適切になされていることが重要となる。
 ところが、現状では建設工事に係る様々な情報は、工程のそれぞれの段階で、担当する事業者が自社独自の方法で作成し保有するため、分断されがちである。また、情報を他の工事関係者に示す場合も、独自の図面などは内容や状況がうまく伝えられない場合もある。そのため、工事関係者の間で、各工程の相互関係が把握しにくくなっている建設現場が少なくない。
 そうした現場では、工事の手戻りが発生しやすくなる。手戻りの発生が多いと、工事の生産性が大きく低下する上、その対応のため負担が大きくなることで、現場の担い手が定着しなくなり、人材不足の状況にさらに拍車をかける原因ともなりかねない。

■建物に関する様々な情報を、一元的に管理し“見える化”するBIM
 以上のような、建設工事に係る情報の分断と、それに伴う生産性の低下を解決する手段として、近年注目されているのが「BIM」である。
 BIMとは「Building Information Modeling」の略称で、コンピュータ上に3次元の形状情報に加え、使用材料やコスト、仕上げ、管理情報など、建築物の属性情報も併せ持った建物情報モデルを構築することである。従来のCADが、主に3次元の形状情報のみを扱うものであったのに対し、BIMでは建物に関する様々な情報を、すべて一元的に管理して“見える化(キーワード解説)”する。そのため、建設業務全体の効率化や、施主、設計者、施工業者など関係者間における情報・意思の共有が図りやすく、それが大きな特長となっている。
 生産性が大幅に向上することから、近年、建設業界ではBIMの導入が推進されつつある。超大手のゼネコンでは、自社内にBIMのチーム(建築・設計・設備・積算など)を作って、その活用を推進している。だが、地方の中小建設企業においては、それぞれが生産を分業しているため、BIMを活用しようとする場合には、どうしても企業間の連携が必要となる。

■提案やノウハウを盛り込みBIMを活用、手戻りを防止し生産性の向上を図る
 広島市の中堅元請建設業者、下岸建設(株)と、同じく広島市の中堅給排水衛生・管工事の専門工事業者、日成プラント(株)による連携体、「BIM活用による施工連携手法研究会」も、そうした連携の取り組みの一つである。
 当連携体の事業目標は、構成員2社それぞれの専門分野である、建築と設備を統合した合理的な提案や、施工ノウハウをBIMに盛り込むことで、後工程における手戻りを防止し、生産性の向上を図ることである。そのための取り組みとして、平成28年度はBIMの活用方針ついての検討と計画、並びにBIMソフトウェアの導入と、それに伴う教育などを行った。

■可視化した情報に基づく現場打合せで、これまで多かった手戻りの発生を低減
 BIMの活用方針ついては、①合意形成場面での活用、②図面の整合性チェックの時間短縮と誤謬の低減、③施工数量の透明化、④維持管理への適用――の、4点を打ち出した。
 合意形成場面での活用については、BIMで可視化した情報に基づいて現場打合せを行うことにより、これまで躯体・設備間で多かった手戻りの発生を少なくすることとした。また、顧客への営業活動も、合意形成の一場面である。その際のプレゼンテーション力を強化するツールとしても、BIMを活用することとした。
 図面の整合性チェックの時間短縮と誤謬の低減については、現場での施工図作成の負担を軽減し、同時にこれまで担当者や施工図工の技量に左右されてきた、図面間の整合をBIMで検証することで、手戻りの抑制を図ることとした。
 施工数量の透明化については、BIMと積算ソフトの連携により、積算のスピードアップと積算数量の明確化を図ることとした。
 維持管理への適用については、新築あるいは改修物件のBIMデータを、連携体が持つことで維持管理に活用すると同時に、顧客の囲い込みにも役立てることとした。

■BIMオペレーターの育成に取り組み、今後の可能性や問題点なども確認
 BIMソフトウェアの導入と、それに伴う教育については、事業の外部アドバイザーでもある、土木測量系システム開発会社から、BIMソフトウェアをレンタル導入の上、同社の指導のもと、BIMオペレーターの育成に取り組んだ。具体的には、3回実施したBIM講習会における座学で、簡易モデルケースにより建築と設備のBIM水平連携を実体験させるなどして、連携体従業員にBIMについての知識と、ソフトウェアの操作方法を学ばせた。
 業務上の事情から、実際の物件のスケジュールに乗せた、具体的なデータ作成は次年度以降に持ち越しとなった。しかし、BIMについて学んだことで、その導入による今後の可能性や、事業者が協業を行っていく上での問題点を確認することができた。

■実際の物件でのBIM協業を目指し、引き続き問題点の洗い出しを進める
 平成28年度の取り組みでは、BIMの導入・活用における最重要課題を、生産性の向上、並びに施工技術力の向上と考えるのならば、“ BIMソフトウェアの操作”という部分については外注するなどし、連携体内で「モデリングデータ」という成果物を早めに共有するようにしてはどうか、という考え方も浮上した。
 そうした点についての検討も含め、連携体では、平成29年度以降も、引き続き実際の物件でのBIM協業を行うべく、講習会を適時開催しながら、着工から工事完了までの一連の工程の流れを確認し、問題点を洗い出していくこととしている。

 見える化
 製造現場や企業経営における管理方法の一つ。業務の状況を映像・グラフ・図表・数値などによって誰にでも分かるように表すことで、問題が発生しにくい環境、問題が発生してもすぐに解決できる環境を整える取り組みである。

●建設工事の生産性を低下させる、施工の“ 手戻り” に着目。その発生を抑制するため、3 次元データをベースに建物の情報を一元的に管理する技術、「BIM」の導入に取り組んだ。
●BIMの導入に向けた取り組みは、地方の建設企業の協業のあり方について、生産性の向上を軸にあらためて検討する機会にもなった。