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連携体名 大牟田建設発生土リサイクル事業連携体 事業管理者名 (株)文田建設
所在地 福岡県大牟田市 構成員 三協建設(株)

■リサイクル事業進出の契機となった建設発生土に関するルール変更
  福岡県の最南端にある大牟田市の(株)文田建設は、昭和30年の創業以来、得意とする下水道土木事業で業績を伸ばしてきた。
 それまで土木事業を専門としてきた同社が事業領域を拡大させる転機となったのは、地元の大牟田市が建設発生土の再生利用を促進するリサイクル原則化ルールを導入したことである。これにより、平成21年度から同市発注の公共工事は、指定の施設で改良された改良土を活用することになった。同社はこのルール変更をチャンスと捉え、建設発生土のリサイクル事業への進出を決意。自前で改良土製造施設を設置して建設発生土を受け入れ、改良して現場で活用する事業を構想した。こうして、平成23年には建設発生土のリサイクル事業を確立し、外部からの受入も徐々に拡大していった。
 しかし、規格に定められた粒径40mm以下の改良土を製造する過程からは40mm以上の岩塊が大量に排出され、山積みとなる事態が発生。建設発生土を受け入れる側が費用を負担して処分しなければならない現状に疑問を感じた同社は、その対策を模索することとした。

■発想を転換し、大量に発生する岩塊を資源化する事業を構想
 従来、建設発生土に含まれる粒径40mm以上の岩塊はリサイクル利用ができず、中間処分場に持ち込み処分する以外に方法はなかった。しかも岩塊に付着する土を除去し、人頭大に小割りにして持ち込む必要があった。そのため同社には、建設発生土と岩塊を分けずにそのまま処分させてほしいとの依頼のほか、公共工事から排出される塊石混合土の処分依頼も増え、岩塊の貯留量は増すばかりであった。しかし、ここで同社は「相当量の岩塊が集まる」のであれば、工夫次第で問題を解決できると発想を転換、建設発生土のリサイクルの副産物である岩塊を有効活用する、自然の石のみを使った岩塊リサイクルを確立したいと考えた。
 そこで、事業を本格化させるために平成27年度に「地域建設産業活性化支援事業」のコンサルティング支援を受け、専門家の指導の下、事業のコンセプトや製造手順、製品基準等をまとめた「製造管理標準書」を作成。さらに、安価で高い品質の再生品を製造するため、連携体のパートナーであり、舗装工事を専門とする三協建設(株)が請負う民間工事において何度も現場試験を行い、その結果をフィードバックして品質向上を図った。

■リサイクル事業では、受入と受け皿のバランスを確保することが必要
  三協建設(株)との二人三脚の試行錯誤によって、既存の再生砕石(建設廃材を破砕して作るRC40等)とは全くコンセプトが異なるリサイクルの製品化に一定の目途を付けることができた。
 しかし、一般にリサイクルにおいては、原材料の受入(入口)と再生品の受け皿(出口)を確保することが重要である。従来にはない岩塊リサイクルでは、なおさら入口と出口をしっかり確保し、それに対応した生産体制を整える必要があった。

■公共工事に利用してもらうため、積み重ねた実績を携えて市役所と交渉
 岩塊リサイクルの出口を優先的に確保することを目標とした連携体は、公共工事に利用されることが事業推進の鍵を握ると考え、発注者である大牟田市役所の承認を得ようと画策した。
 市役所との交渉では、これまで1年かけて自主的に取り組んだ各種試験から公共工事の適用基準を超える結果が得られたことを大量のデータを用いて説明。特に水質への影響が問われる護岸工事では、自然石を原料としているので安全性に問題はなく、建設廃棄物に由来する既存の再生品に対してある不安等は全く生じないことをアピールした。こうした具体的な提案営業が奏功した結果、平成29年1月に承認され、設計にも採用されることが決定。早速、市内の3工事現場で利用されるという実績を上げることができた。

■再生資源の土・石と建設廃材を総合的にリサイクルする体制を確立
 これまで土と石の2つのリサイクルを推進する事業体制の構築に専念してきた連携体は、さらに、廃棄物ではないこれらの建設副産物の需給バランスが万一崩れたとしても柔軟に対応できる体制が望ましいと考え、強化を図った。そこで、土、石に次ぐ第3の柱として、コンクリートやアスファルト等の建設廃棄物のリサイクルに注目した。産業廃棄物(キーワード解説)中間処分業の許可を取得して廃棄物の受入が可能になると、「土」、「石」、「建設廃材」の相互補完的で総合的なリサイクル体制を実現できると確信。これにより、どれか一つの受入が不足してもその他の受入を強化すれば事業全体としては原材料不足にならないという事業モデルを構想した。
 連携体は、これを「大牟田建設廃棄物総合リサイクル事業」と名付け、平成29年8月の中間処分場開所後からの本格的稼働を予定した。現在その準備として、「製造管理標準書」を新たな事業体制に対応するものに改訂し、一層の業務効率化を進めている。また社員の能力向上を図るために社員教育を徹底して行うとともに、個々の能力を公正に評価し処遇に反映する仕組みを整備しながら、最終的には確実に利益を生み出せる事業運営を目指している。。

■岩塊の処理に困窮する全国の関係者に対して、有効な解決法を提案
 建設発生土に含まれる大量の岩塊の処理に困窮している関係者は全国にまたがるものと思われる。また大牟田市のように、解体工事の大幅な減少の影響により建設廃材に由来する再生品の安定供給が危ぶまれ、利用したくても利用できない状況も生じている。本事業は、このような全国共通の課題の解決に有効で汎用性の高い方法として注目されるものである。
 同連携体が「再生ズリ」と名付ける岩塊リサイクルの再生品が、多くの自治体で承認されて公共工事に利用されることになれば、建設発生土とその副産物である岩塊のリサイクルは大きく促進されることになる。
 同連携体は、本事業をモデル事業として完成させることによって、「建設発生土のリサイクルには捨てるものがない」という事業理念を全国に浸透させたいと考えている。

 産業廃棄物
 産業活動に伴って排出される廃棄物。その処理について、義務者や処分の方法などを規定する「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」が 制定されており、産業廃棄物は事業者が自ら処理することが義務づけられている。

●建設発生土に含まれる大量の岩塊の処理に困窮している関係者が多い現状を踏まえ、その課題を解決する工法の実用化と事業化構築を図った。
●様々な条件下で独自に現場試験を行って実績を積み重ね、適用基準を超える高い品質を得られたことが評価され、公共工事での利用が実現した。