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親族内承継の事例

松浦建設株式会社

会社の大きな転換期に事業を承継し、社員の意識改革からスタート

事業承継期間 事業承継を考えはじめてから社長交代までの期間・・・1年
事業承継を考え始めてから株式の承継完了までの期間・・・1年
キーワード 関係者への説明・理解 / 組織の再編・経営体制の立て直し

事業承継に取り組んだきっかけ

~先代(創業者)の年齢と体調不良を機とした息子への事業承継~
先代社長の息子である現社長は、大手建設会社に勤務後20代後半から社内に在籍。当時、取締役であった現社長が後を継ぐのは既定路線となっており、個人保証を含め、会社を背負っていく覚悟もできていた。しかし、公共工事の縮小や一般競争入札の拡大などが広がっていた急激な社会情勢変化のもと、会社として大きな転換期を迎え、収益構造の変革が求められる中、事業承継は決して平坦なものではなかった。



取り組み内容

急激な社会情勢変化の中で、現状のままでは事業が立ちいかなくなる危機感を抱いていた現社長は、社長就任以降、公共工事から民間工事へのシフトへ舵を切った。しかし、新しい方針は、会社の組織のあり方や業務フローを根本から変えていくことを意味し、既存のやり方に慣れていた社員からは反発も大きかった。事業承継以前より業績が厳しかったこともあり、社員の新規採用を控え、組織の高齢化が進んでいたことも改革を難しくした。しかし、社長は根気強く社内に社長方針を浸透させ、数年かけて社員の意識改革を行い、組織としての変革を遂げた。



事業承継の流れ

STEP.1
平成13年12月・・・先代の年齢と病気を機に事業承継

先代の息子であった現社長は、いつかは自らが事業を承継することは考えていたが、その時期は未定だった。当時、業績が厳しく、有利子負債が膨らんだ状況での交代に、先代としても躊躇する思いがあっただろう。しかし、先代の病気を機に急きょ、社長交代の必要が生じた。

STEP.2
承継後約1年間・・・新社長の改革に対する従業員の抵抗

以前より方針転換の必要性を感じていた社長は、就任後、公共から民間シフトへ舵を切った。しかし、国や県の仕事をやってきた会社が、地元の企業や個人の邸宅に仕事をとりにいくことは、業務のやり方や意識を根本から変えていくことが求められ、社員の抵抗感は強かった。業績は一時期さらに低迷した。

STEP.3
承継2年目以降・・・経営企画部の創設と、社長方針の明文化

社長の想いの実行部隊として、中長期的な視点でこれからの会社の姿を社長とともに考え、社内での調整作業を通じて、社員に浸透していくための「経営企画部」を創設。購買の取決め等、足元の管理を行う「管理部」と経営企画部が議論することで、将来の方向性を見据えながら、現在行うべき行動を決めていく体制をとった。また、「社長方針」を明文化し、社長の言葉で繰り返し変革の必要性を社員に伝えた。

STEP.4
承継3年目以降~現在・・・改革の実行と次世代への引き継ぎ準備

数年かけて社長の想いを社員に浸透させると同時に、経営者と社員とが自由に本音で意見を言い合える雰囲気づくりにも注力した。それでも共感性のない古参社員の一部には辞めてもらうなど、実力主義での幹部登用を進めた結果、改革は成功、収益構造も改善した。現在は、現社長から次の世代への承継の準備を進めている。

今後の課題展望 - 次世代への承継に向け、家族や社員とオープンに検討

現在は、現社長の息子を後継候補に、事業承継を常に意識しながら、家族や社員とオープンな検討を行っている。息子とは定期的に話をしながら、承継までの道のりを話し合い、息子は大学で建築系の学部を卒業し、現在は、大手建設会社にて勤務している。 また、息子に引き継ぐ際に、同世代の社員がいないと困るなど、社長自らの経験をもとに、若手採用にも積極的である。



事例における事業承継のポイント

(1)新社長の危機感と将来を見据えた方針転換の意思決定
(2)「経営企画部」の創設等の組織の再構築と、時間をかけての社長方針の浸透
(3)業況が厳しい中でのバトンタッチの意思決定(一般的に「立て直してから交代」という先代の想いが、状況を悪化させてしまうことが多い)



これから事業承継に取り組む方へのメッセージ - 代表取締役 松浦一久

事業承継以前から、このままでは事業が立ち行かなくなるという危機感がありました。社長に就任し、方針転換を掲げたものの、社員には昔からの考え方が根強くあり、新しい取り組みを行う意識を持ってもらう、今まで意識していなかったところを意識してもらう、という社員の意識改革が一番大変でした。 時には外部の専門家を交えながら、自分の想いを繰り返し伝え、新しい組織を作っていきました。今では、常に変化への対応が迫られる中で、社員一人ひとりが自らどう行動しなければならないのかを意識できる会社になりました。その一環として、BCP計画を策定し、国の認定も受けています。そのようにして、社員とともに技術を守り、地域のインフラを守る建設会社として存続していきたいと思っています。



企業プロフィール

企業名 松浦建設株式会社
住所 茨城県稲敷郡阿見町大字阿見608-3
代表者名 代表取締役 松浦一久
資本金 70,000千円
売上高 約20億円
従業員数 30人
業種 総合建設業
備考 -
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