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親族内承継の事例

株式会社藤原組

経営改善計画(事業戦略の再構築)及び事業承継計画(後継者の育成)の策定・実行

事業承継期間 事業承継を考えはじめてから社長交代までの期間・・・5年
事業承継を考え始めてから株式の承継完了までの期間・・・1年
キーワード 自社及び経営者個人の現状把握 / 後継者の育成方法 / 事業承継計画の作成 / 組織の再編・経営体制の立て直し / 個人保証・担保の負担の軽減 / その他(不動産など個人所有の財産の相続の問題も同時に解決する方向で取り組んだ)

事業承継に取り組んだきっかけ

~非常に厳しい財務状況に陥ったことがきっかけで、「経営改善計画」と「事業承継計画」を一体的に策定~
1)当社は土木工事と建築工事の両方を手掛ける総合建設業ではあるものの、主力事業は公共土木工事であった。平成20年代に入ってから公共工事の縮減と発注方式の改革によって受注・売上高の確保が難しくなり、非常に厳しい収益・財務状況に陥った。
2)そこで、中長期的視点から事業構造を見直すため、それまでの杜撰な経営管理体制を改善・整備することを目的とした「経営改善計画」を策定した。また、その計画を前社長の長男(当時の専務)が「担い手」「後継者」として担当・遂行することを明確化するために「事業承継計画」も併せて策定した。



取り組み内容

1)当社の事業継続のために収益・財務構造改善に向けて取り組むことを最優先の課題と位置付けて、公共工事中心から民間工事中心に転換するべく、営業面と管理面の両方を抜本的に改善・強化することとし、後継者(前社長の長男、当時の専務)が先頭に立って経営改革に取り組んだ。
2)併せて、会社の資産と負債の取り扱いはもちろんのこと、専務(当時)の祖父を含む3世代にわたる個人所有の不動産など相続問題を含む事業承継の方向性を検討し、計画を策定した。なお、相続のデリケートな問題は、中小企業診断士と税理士の両方の資格を保有する建設業経営戦略アドバイザーが専門家として助言しながら課題の解決を図った。



事業承継の流れ

STEP.1
平成22~23年(社長交代の5年前)・・・経営改善の取組み(事業再構築)

1)これまでの公共土木工事中心から民間工事分野に進出・転換して、事業を再構築するべく、営業面と施工面の体制整備への取組みに着手
2)原価管理などの経営管理システムと実行体制の整備・強化の方向性を検討

STEP.2
平成23~24年(社長交代の4年前)・・・「経営改善計画」と「事業承継計画」の検討

1)事業面の再構築と経営管理体制の整備を推進する視点から、親族を中心とした経営体制の方向性を検討
2)会社と個人の保有資産を整理して相続に関する課題を整理し、親族間の課題解決の方向性を検討

STEP.3
平成24~25年(社長交代の3年前)・・・経営改善と相続対策等の着手

1)H23年度及び24年度の「建設業のための経営戦略アドバイザリー事業」を活用して「経営改善」と「事業承継」の方向性を検討し、実行面に着手
2)事業内容と経営管理の両面の強化を目指した「経営改善計画」の策定・実行と「事業承継及び相続」の課題に着手

STEP.4
平成25~26年(社長交代の2年前)・・・相続等に関する親族間の調整等

1)事業承継に関連する会社の資産・負債及び保証等の取り扱いについて 金融機関との調整に着手
2)当時の専務(前社長の長男)の祖父、前社長夫妻、前社長の兄弟など相続に関連する人間関係の整理と相続対策に着手

STEP.5
平成27年(社長交代の当該年)・・・社長交代と新たな経営体制の構築

1)前社長の急逝に伴って急遽、代表者の交代を実行せざるを得なかったものの、事前に経営改善と事業承継に取組んでいたので大きな問題なく経営面の承継が出来た。
2)相続等の問題についても基本的な対応は問題なく進めている。

今後の課題展望 - 新社長をサポートする体制整備と人材育成

1)これまでは切迫した経営状況下であったため、現社長(前社長の長男)が施工現場を含めた会社の経営全般にわたる実務を担ってきた。
2)これからは、現社長は経営者としてもっと視野を広げるべく、経営管理面に専念する時間を確保する必要がある。従って、特に現場を完全に任せられるような人材の育成が急務である。また、測量や設計の業務についても人材育成を行い、現社長の負担を減らして経営面に専念できる環境整備を行う必要がある。



事例における事業承継のポイント

(1)後継者の早期の決定と人材育成
(2)社内及び社外における後継者の認知
(3)事業承継後の経営体制整備



これから事業承継に取り組む方へのメッセージ - 藤原 宏明

1)私は、大学卒業後、ゼネコンへ就職し約10年勤務していましたが、前社長(実父)から強く要請されてゼネコンを退職して当社へ入社しました。学生時代より当社にてアルバイトしていたこともあり、従業員や周辺関連業者への認知はスムーズで、仕事内容についても問題なくすぐに取り組むことができました。
2)ただし、経営面においては従前より不振が続いており、あまりの状況の悪さに入社を後悔した時期もありました。しかしながら、生まれ育った地元で長年に亘って営業を続けている会社を潰したくない気持ちが強く、奮起して根本的な経営改善に取り組もうと決意しましたが、出口の見えない不安な状況を暗中模索する日々が続いておりました。
3)その折に「建設業経営戦略アドバイザリー事業」の専門家派遣のチャンスをいただいた事により、相談やご指導をいただき、何より自信を持つことができました。そして経営面の様々な計画立案の指導をいただき、正しい方向へ導いて下さいました。当時、私は専務取締役の立場でしたが、前社長も状況を把握し、全権委任してくれた事も大きな要因であったと思います。
4)当社の場合は、最悪な経営状態であったが故、必然的に実質的に経営改善策の実行を強いられたことにより、逆に承継がスムーズに行えたのかもしれません。当時を振り返り、今となって思う事業承継とは、関係先への次期社長としての認知、そして確実な信頼を得ることと、取り組み開始早期から財務面の詳細把握を始めとする実質的な経営を行うことが大事だと考えます。現経営者がいなくても、滞りなく経営ができる状況を作り上げてしまう事が承継を容易にする手段だと思いました。



企業プロフィール

企業名 株式会社藤原組
住所 神戸市北区道場町日下部1780
代表者名 藤原宏明 
資本金 30,000千円
売上高 337,768千円
従業員数 15人
業種 土木工事、建築工事、管工事、舗装工事、造園工事、解体工事
備考 現社長:就任 H27年
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