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従業員承継の事例

株式会社晴耕舎

前社長の借入金の返済を目標とした守りの経営から、 県内一の解体工事会社を目指した革新的経営への転換

事業承継期間 事業承継を考えはじめてから社長交代までの期間・・・約6年
事業承継を考え始めてから株式の承継完了までの期間・・・現在、1年経って全体の15%
キーワード 自社及び経営者個人の現状把握 / 後継者の選定方法 / 組織の再編・経営体制の立て直し

事業承継に取り組んだきっかけ

~自身の高齢化と後継者候補と考えていた長男(当時、常務取締役)の市会議員当選~
前社長(創業者)は長年一緒に経営に携わってきた妻の病死と自身の年齢が60代半ばに差し掛かっていたことで真剣に事業承継を考えるようになっていた。当時、債務超過手前で8行からの借入金残高が5億円に上り、毎月、資金繰りに苦労していた。 長男の常務取締役と1歳年下の取締役営業部長の2人を後継者候補と考え、できれば長男に継いで欲しいという思いを抱きながら悩んでいた。経営者に必要な能力、リーダーシップ、人望そして向学心は取締役営業部長の方が一歩リードしていた。 そこで、誰にでも好かれる性格の長男には地元の市会議員に立候補することを勧め、計画通り当選したことにより長男は会社の役員から外れ、必然的に取締役営業部長への承継に取り組むことになった。



取り組み内容

7年前から既に取締役として経営に参加してもらっていた取締役営業部長に、後継者としての打診を行い、新たに工事部長も兼務してもらうことにした。同時に当社の最大の課題であった土木部と工事部という現業2部門間の壁を取り払い情報の共有化と効率的な業務運営を目指した。具体的には約2,500万円の費用をかけて物理的に離れていた事務所を一カ所に集約することにした。 同時に後継者である取締役営業部長を常務取締役に任命し、会社の最前線で指揮をとってもらうことにした。常務(後継者)が10年後の会社の目標を明確に示して、率先垂範して仕事と自己啓発に取り組んでいる背中を見てバラバラだった社内が一つにまとまるとともに取引先や金融機関等からの協力体制が出来上がってきた。



事業承継の流れ

STEP.1
社長交代の5年前・・・事業承継に向けた準備の必要性認識

60歳を過ぎて妻を亡くし会社の将来と自分の人生を考えるようになった。厳しい経営状況の中で長男である常務と取締役営業部長のどちらが後継者としてふさわしいか判断に悩み、M&Aでの会社の売却も選択肢の一つとして検討した。

STEP.2
社長交代の3年前・・・経営状況・課題の把握、後継者候補の選定

厳しい受注競争の中で売上が安定せず、資金繰りに苦しんでいる中で後継者に求める資質として、営業力とチャレンジ精神に富み、リーダーシップを発揮できることと考え、長男を市会議員に転出させ、取締役営業部長を後継者に決めた。

STEP.3
社長交代の2年前・・・事業承継に向けた経営改善

取締役営業部長が常務になり会社の最前線で経営に携わることで、これならいけるという感触を得たため、後継指名を受諾した。本社事務所の増設と赤字部門だった再生砕石プラントの設備増強を提案し、資金繰り改善のため3億円のシンジケートローン融資を受けた。

STEP.4
社長交代時・・・事業承継の実施

創立40周年を機に新たな代表取締役が誕生、創業社長は取締役から退任し、実質的に引退した。新社長は10年以内に県内の解体工事で1番になるという目標を宣言し、アスベスト除去工事や再生プラントの営業強化等の具体的な施策を明確にした。

STEP.5
社長交代の1年後・・・ポスト事業承継(成長・発展)

新社長は10年後の年商40億円の経営目標と具体的な経営計画を発表した。1年間で11人の新規採用を行い、従業員教育に力を入れていくこと、公務員並みの賃金を目指すことを宣言した。自身は銀行から借金をして自社株の15%を取得した。

今後の課題展望 - 解体業から不動産業とエネルギー開発業への拡大

創業者で前社長の人生哲学でもあり、晴耕舎という社名の由来にもなった「晴耕雨読」と「学び舎」の実現を目指して「凡事徹底」と「常在戦場」の精神を社内に育んでいく。そして、中期目標として老朽化した土地・建物を買い取り、それを解体して、より価値の高い不動産利用を企画、開発する事業に参入する。また、廃材の利活用の取組みとしてリサイクル品目を今のコンクリートから木屑、廃石膏ボード及び廃プラに拡大していく。



事例における事業承継のポイント

(1)前社長は早期に後継者候補の経営者としての資質、能力と実行力を公正に見極め長男には市会議員としての道を選択させた。
(2)前社長は後継者候補に仕事で実力と成果を発揮させることで、先輩社員をはじめ全社員の理解と協力体制を創り出した。
(3)前社長は後継者の能力と人間性を信頼し、代表取締役の交替と同時に経営から退き、会長という名称の一社員となった。
(4)後継者は明確なビジョンを持っており、常日頃から勉学や資格取得に努め、更に経営者塾や地域貢献活動を通じて人脈を築いてきた。
(5)後継者は既存の借入金の多さに恐れをなすよりも、既に保有している重機・車両や人員の有効活用と生産性向上に目を向けた。
(6)後継者は会社がどん底の状況だったので逆にこれ以上悪くなることはないと考え、皆で協力して頑張ろうという雰囲気を創り出せた。
(7)後継者は、逆境は経営革新に取り組むチャンスと考えた。



これから事業承継に取り組む方へのメッセージ - 現経営者 松本 克幸

大学卒業と同時に百貨店に入社、紳士服や外商で5年間勤務し、27歳の時に実家と同じ町内にある晴耕舎に転職した。後継者の打診を受けた頃、社内はバラバラで財務内容も最悪の状況だった。しかし、前社長が残してくれた重機・車両は古いが山ほどあり、人間も大勢いた。好業績企業だったら「今のままでいい」と、私がやろうとしたことはことごとく反対されたと思う。既存の借入金を返済するためにも将来の発展のためにもリスクをとって革新する必要があった。



企業プロフィール

企業名 株式会社晴耕舎
住所 新潟県長岡市宮本町1-831
代表者名 松本 克幸
資本金 30,000千円
売上高 15億300万円(令和元年9月期)
従業員数 59人
業種 土木建設業(土木工事業、解体工事業)
備考 長岡縄文の丘・米百俵マラソン主催
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