従業員承継の事例
E社
実力がある工事部長への事業承継により、急激な業績回復を実現
事業承継期間 | 事業承継を考えはじめてから社長交代までの期間・・・2年 |
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事業承継を考え始めてから株式の承継完了までの期間・・・1年 |
キーワード | 後継者の選定方法 / 後継者の選定方法 / 承継時期・年齢 / 組織の再編・経営体制の立て直し / 個人保証・担保の負担の軽減 |
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事業承継に取り組んだきっかけ
~創業経営者が高齢化し、体調を崩す中、子息への承継を断念~
創業経営者は子息への承継を望んでいたが、子息自身に後を継ぐ意思はなく、他業界に就職に勤務することとなった。創業経営者は、後継者不在のまま事業承継を先延ばしにしていたが、長年の営業活動により体調を崩し、会社への出勤も儘ならない状況に陥った。その結果、会社の業績は急激に悪化し、早急に事業承継を行うこととなった。なお、往々にして創業経営者の事業承継は遅れがちであるが、遅くとも60歳を過ぎたら候補者を選定すべきであったと思われる。
取り組み内容
会社には4人の工事部長が在籍しており、そのうちの2名は、連帯保証を引き受けてでも引き継ぐ意思があることが確認できた。後継者の選定においては、営業力が優れていた工事部長を選定し、株式は無償譲渡することとなった。次期経営者の選定に漏れた工事部長は、面倒見の良さを活かすために、若手教育業務を兼務することとなった。 業績悪化への対応策としては、「管理会計システム」を導入し、利益額等の見える化を図った。これまでは、個別工事別の利益管理ではなく、どんぶり勘定のような利益管理であった。それを、管理会計システムにより、「工事別」「担当別」等で管理することが可能になった。定例の「現況報告会」で見える化された利益額等を共有し続けることにより、売り上げは伸びなくとも営業利益が確保できる体制が確保された。更に、次期工事管理者の若手も3名採用することができた。
事業承継の流れ
創業経営者が、長年の営業活動により内臓を悪くし、週3回の人工透析を必要とする状況に陥っていた。会社への出勤も儘ならなくなり、社長が担っていた営業活動が滞り、その結果として、業績は急激に悪化した。
番頭経営スタイルで各工事部長が事業部(顧客別)の役割を果たし、数字目標も工事部長別に設定されていた。4名の工事部長のうち2人の工事部長が会社を引き継ぐ意思を表したため、この2名の中から選定することとなった。
業績悪化の解決を優先し、2名の後継者候補のうち、営業力のある工事部長を次期経営者に指名した。もう1名の工事部長は、面倒見は良かったものの、実績が物足りない面があったからである。
また、債務超過になっていたことから、株式の70%は無償で次期経営者に譲渡することとなった。営業力重視で実力のあった工事長を経営者として選定したことに加え、「管理会計システム」で工事別・担当別の利益等の見える化を図ったことにより、社員の業績が急回復した。 また、もう一方の候補者は、役員を退任して若手社員の教育的業務を兼務することとなった。
承継した現経営者も66歳となったため、娘婿である若手を他の業界から転職させて教育をし始めた。自分の承継が遅すぎたことと、自社のビジネスモデルが変わり目に来ている認識が強くあり、早めに決断して取り組んでいる。
今後の課題展望 - 他産業より後継候補として入社させた次期後継者の教育に着手
次期後継者に対しては、同僚の候補者であった工事部長に3年間預けて現場スキル教育を行ったが、経営者としての教育は自社内では難しい面があり、外部の教育機関へ10か月間の研修に派遣している。現社長は、自社(自分の範囲で)でできることをよく把握し、自社でできないことは外部を活用することを判断・選択できる経営者である。しかし、最終的には、次期後継者のチャレンジ精神がどこまであるかという点にも委ねられている。今のところ期待できる人材の可能性が高いと思われる。
事例における事業承継のポイント
(1)創業経営者は、子息への承継も含めて「経営のバトンタッチが遅れがち」である。
(2)業績悪化時の事業承継は「人柄」よりも「実力」で選定すべきである。
(3)早め早めの事業承継者の選定⇒教育は、企業の為にも後継者の為にも、「企業の生産性を高める投資である」と判断すべきである。
これから事業承継に取り組む方へのメッセージ
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企業プロフィール
企業名 | - |
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住所 | - |
代表者名 | - |
資本金 | 1000万 |
売上高 | 9億 |
従業員数 | 8名(職人は、全て一人親方を中心とする外注としている。) |
業種 | 建築関連専門工事業者 |
備考 | - |