従業員承継の事例
F社
創業社長の高齢化と企業業績の急激な悪化によるメインバンクの要求による経営者の交代
事業承継期間 | 事業承継を考えはじめてから社長交代までの期間・・・2年 |
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事業承継を考え始めてから株式の承継完了までの期間・・・2年 |
キーワード | 自社及び経営者個人の現状把握 / 後継者の育成方法 / 承継時期・年齢 / 組織の再編・経営体制の立て直し / 個人保証・担保の負担の軽減 |
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事業承継に取り組んだきっかけ
~受注先を元請1社体制が裏目に出て受注量が半減し、急激な業績悪化~
創業者である当時の経営者は、受注先の大手ゼネコン1社への忠誠心が高く、営業担当は実質的に不在で、受身の受注体制で売上高10億程度まで40年間で業績を順調に拡大させてきていた。しかし、2年前に受注先の諸般の事情により、当社の受注高は半減した。外注はほとんど使わず、自社の職人と自社の機械で工事の大半をこなしていたことから、瞬く間に借入金が膨らみ、経営危機に陥った。一部リストラ等も実施したが、間に合わず、債務超過となり、メインバンク等より経営者責任として社長の交代を要求され、急遽事業承継を実施することになった。
取り組み内容
業績の急激な悪化からの脱却の為には、大幅な経営方針の転換が必要不可欠であった。その為には経営層の交代が不可欠であったが、創業経営者は、事業承継の準備をほとんどしてこなかった。 急遽、従業員の中から後継者を選定したが、「経営者教育」的なことは全くされていない人材であった。しかし、従業員のスキル、活力、及び特殊機械の所有では、競合他社に引けを取らない競争力があった。また、選ばれた後継者も1,2か月で「資金繰り表」を作成出来るようになる等、並々ならぬ努力と根性と能力の持ち主であった。 1年半で業績は急回復し、5行のバンクの中の2行から、借入金を纏めて面倒見たい旨の希望があり、その内の一行にお願いすることに決定し、新社長の銀行対応業務がだいぶ楽になり金利も下げられた。
事業承継の流れ
受注先1社の弊害が顕在化し、受注高が半減し、施工体制(労務、施工機械等を自前で確保して信頼を得ていた)の維持から急激に財務状況が悪化し、メインバンクより業績改善の為の事業計画書の作成⇒提出を求められた。
事業改善計画書の中で大きな課題として「早期の事業承継者の選定」が必要と判断され、3名の従業員(職長)から選定することになった。
多額の借入金の連帯保証も引き受けて「再建に挑戦したい!」との意欲を持った職長の中でも仲間に信頼感の高い後継者を選定で来た。
事業計画書の「実施スケジュール」に基づき、営業力の強化、管理会計システムの導入(実行予算作成を目玉とした)、全社の組織体制の再構築、等々を実行した。結果、業績は、急回復を実現できた。
債務超過の状況であったことから株式の価値はないことから「無償譲渡」が実現できた。また、借入金の一本化を提案した1行より、前経営者の連帯保証は解除するとの承諾を得た。
今後の課題展望 - 経営の安定を考えた事業の多角化と次期後継者の選定
現社長は、前社長の失敗から「経営者としてのリスク管理」を学び、それを受けて、以下のようなことを課題に上げている。
●受注先の分散化による受注量の平準化
●営業力の強化による赤字工事の受注の回避
●景気変動に伴う受注量の変動に対処するための外注先の育成確保
●事業の多角化への挑戦(M&A等)
また、現社長は、事業承継時の厳しい経験から、後継者育成は出来るだけ早く着手するべきであると認識している。そのため、50代半ばになり、次期経営者の選定に着手している状況にある。
事例における事業承継のポイント
(1)経営資源の内で人が一番大事である。(資金は、後でも有能な人材がいれば稼げる)
(2)後継者は「チャレンジ精神」を持っていることが最重要能力の一つである。(第2創業の精神)
(3)経営のリスク対応は、経営者の責任で最重要な課題であり続けるが他者は中々事前の助言はしてくれない。(社内・社外を問わず、助言してくれる良きアドバイザーを持つことは必要不可欠である)
これから事業承継に取り組む方へのメッセージ
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企業プロフィール
企業名 | F社 |
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住所 | - |
代表者名 | - |
資本金 | 1500万 |
売上高 | 11億 |
従業員数 | 60人 |
業種 | 土木関係専門工事業 |
備考 | - |