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M&Aの事例

株式会社まつもとコーポレーション

地域を代表する建設企業として有する創業100有余年の伝統と雇用を守るために、オーナー経営者がM&Aによる事業承継手法を選択

事業承継期間 事業承継を考えはじめてから社長交代までの期間・・・約1年
事業承継を考え始めてから株式の承継完了までの期間・・・約2年
キーワード 後継者の選定方法 / 組織の再編・経営体制の立て直し / 個人保証・担保の負担の軽減

事業承継に取り組んだきっかけ

~オーナー経営者の親族及び社内に適当な経営者が不在のため、事業承継が経営課題に~
当社は1915年に創業した岡山を代表する老舗の建設企業で、最盛期には売上250億円を達成したが、2002年に東京地裁に民事再生法を申請、2005年に民事再生手続きを終結した。2015年に創業100周年を迎え、当時5代目社長は60歳だったが、親族内に後継者が不在であり、社内にも後継者候補は育っておらず、経営者としての責務である事業承継は最大の経営課題であった。また、民事再生後の経営は、売上高は30億円台で推移し、営業利益が確保できない状態が続いた。そのような中、人材の採用や積極的な経営投資が出来ずに経営資源は限定され、企業成長戦略が描けない状態にあった。 オーナー経営者は、経営改革を実践し、活力ある企業に再生し、企業存続と雇用確保を確実に実行可能な信頼できる事業承継者を求めていた。



取り組み内容

当時、某税理士法人は、M&Aの仲介役として、中国四国の建設企業を中心に買い手を探索していたが、過去に民事再生をしていた経緯や、その後の業績も低迷が続き、従業員も高齢化していたことから、なかなか引き受け手は見つからなかった。そのため、自らが買い手となり、同社の全株式を買い取り、ハンズオン方式を採用して事業再建を目指すことが、雇用の維持・創出に繋がり、ひいては地域貢献の一助にもなると決断した。因って、PMI(M&A成立後の統合プロセス)が重要な再建のポイントになることから外部から、上場会社(建設業)での役員経験もある人物を代表取締役として派遣し、再建をスタートさせた。



事業承継の流れ

STEP.1
M&A実行の約1年前・・・M&Aにおける買い手の探索

当初は、同業他社へのM&Aを想定し、買い手を探索したが難航した。そのため、M&Aの仲介役として相談にあたっていた某税理士法人が同社の株式の引き受け手となることを決断したが、単なる会社の売買ではなく、オーナー経営者の意向を汲み企業再建を目指すことを主張した。

STEP.2
M&A実行の数ヶ月前・・・買い取り条件等のすり合わせ

株式の買取対価は、会社の時価純資産の額に営業権(のれん)を合わせて算定した。また、オーナー経営者の意向として、会社の歴史や伝統と、社員一人ひとりのモチベーションや愛社精神を守りたいという想いが強かった。それらの見えない(バランスシートに表れない)資産を重視し、育てていくことを共通目線としたうえで、売り手・買い手の想いのすり合わせを入念に行った。

STEP.3
M&A実行から約3年間・・・買い手企業による経営の立て直し、経営者の派遣による新たな経営体制の構築

現存する役職員と力を合わせて、従前のオーナー経営者に依存した経営から脱却すべく、ハンズオン方式での再建計画をスタートさせた。役職員には、会社を復活させることで成功体験を享受させ、徐々にスパイラルアップを図っていった。外部から上場建設会企の役員も経験した北川氏を代表取締役として招き、経営数値の可視化や組織的な提案営業など経営体制の再構築を図り、北川氏の派遣から3ヵ年で業績のV字回復を図った。

STEP.4
M&A実行後3年~現在・・・買い手企業による経営の立て直し、組織の活性化

黒字転換後には、組織としての底上げを行うために、若手の採用・育成にも特に力を入れている。若い人が入社したいと思うようなオフィスへの本社地移転などが功を奏し、毎年5~6名の新卒採用に成功し、組織の若返りを図っている。

今後の課題展望 - 将来的なEXITに向けて、さらなる企業価値の向上を目指す

某税理士法人は一時的な受け皿的な側面は否めないが、経営改革はまだ道半ばであり、更なる企業価値向上を図らなければ、建設企業としての生き残りや今後の成長は困難である。まずは事業規模拡大、競争優位性を確保し経営基盤の安定化を図ることが優先され、その先に様々な企業成長への選択肢が広がる。現在は、企業価値をさらに向上していくために、新たな予算管理システムの導入など、コスト競争力を高め、全社一丸となって地域に真に必要とされる企業を目指して足元を固め始めたところである。



事例における事業承継のポイント

(1)オーナー経営者の意向を汲み、見えざる資産のイノベーションを重視したことで、従業員のモチベーションや愛社精神が維持・向上でき、その後の事業の立て直しが図れたこと。
(2)外部から、優秀な経営者(建設業経営の経験者)を投入し、現場の効率化や提案営業、経営数値の可視化などに組織的に取り組んだこと。
(3)(1)とも関連するが、売り手側企業の従業員の離反リスクに慎重に対応したこと。具体的には、新しいやり方の導入に対して、既存の従業員に不満はあったと思われるが、利益体質になれば、従業員に還元していく方針を示し、協力体制を築くことができた。また、買収当時、従業員の平均年齢が高く、組織の若返り化が課題であったため、本社オフィスを移転するなど、若い人が入社したいと思うような会社づくりを進めた。



これから事業承継に取り組む方へのメッセージ -
株式会社まつもとコーポレーション 取締役(M税理士法人グループ代表)三好貴志男

本事例は、建設企業のM&AにおけるPMIの成功例になったと考えています。M&Aでは、相手会社と合意するプロセス、中でも買取対価の算定に関心が集中しがちです。しかし、その後の統合作業に失敗すれば、M&Aの期待効果が発揮できないだけでなく、我々が果たしたかった、地域のインフラを守り、地域の雇用を守るというそもそもの目的が達成できなくなります。 建設業は人のビジネスです。そのため、M&A実行後の体制変換の過程においても、優秀な社員の離反(その結果としての顧客の離反)リスクには慎重かつ丁寧に対応し、その結果、企業の成長力を最大限に引き出すことができたと考えています。



企業プロフィール

企業名 株式会社まつもとコーポレーション
住所 岡山市北区表町三丁目14番1号
代表者名 代表取締役 北川 克弘
資本金 8,000万円
売上高 約41億円
従業員数 67人
業種 総合建設業
備考 -
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