うまく引き継げなかった事例
I社
現社長の健康面に対する過信と事業承継及び後継者育成の取り組みへの意欲が希薄
キーワード | 後継者への教育方法が分からない / 親族内や従業員、取引先の理解が得られていない / その他(現経営者の事業承継・後継者育成への意欲不足) |
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内容
1)当社は明治18年の創業以来、地下水源の調査・開発・保全の業務を行い、水源の鑿井(さくい)工事を行うと共に過去に施工した鑿井の改修工事や維持管理業務を行っている。近時は鑿井工事の需要が減少している中、社長が山間地域で良質な天然水が湧きでていて多くの人達が天然水を求めて入山者で賑わっている状況を知り、新規事業として「天然水販売事業」に取り組むこととして建設業経営戦略アドバイザリー事業の支援を受けることとした。
2)建設業アドバイザー(中小企業診断士)は、当社が財務面に不安がなく現在の事業内容と技術を活かした新規事業に着手することは事業の継続・発展の意味からも良い選択であると判断した。新規事業の候補地が本社所在地から遠隔地であることに加えて社長が高齢(69歳)故、事業承継と後継者育成の取り組みを同時並行して行うよう助言した。
3)幸い、専務取締役である社長の長男(40歳)が在籍していた。新規事業(「天然水販売事業」)は、後継者候補である専務を中心に、中期的視点から後継者育成も併せて行うこととなった。しかし、新規事業に対する社長の思い入れが強く、かつ社長自身の健康面での自信から新規事業を専務に任せなかったことから、新規事業と事業承継の何いずれもが未実現の状況である。
上記のようなことを招かないためには…
1)現社長のこれまでの成功体験と過剰な自信によって、社内では新規事業(「天然水販売事業」)は社長の専管事項との認識が強く、かつ事業承継や後継者育成について話題にすることが憚られる状況であった。
2)中小企業の社長には「ワンマン経営」になっていることが少なくない。しかし、社内に後継者候補が在籍している場合は、会社の継続・発展という視点から、事業面の戦略や経営体制の整備等について議論できる仕組みを整備して、日常業務を通じて後継者育成を図るべきである。
企業プロフィール
企業名 | I社 |
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資本金 | 4,500万円 |
売上高 | 2億3,420万円 |
従業員数 | 15名 |
業績 | 鑿井(さくい)工事業 |
備考 | 新事業展開を通じて高齢(H24年7月:69歳)な社長の交代 |